これまで述べてきたように、人間は生まれてから今日まで、さまざまの環境条件のもとで、成長や発達を遂げていく。しかし、心理的に重荷を背負わされ、生きることに挫折したり、絶望したりすることもある。カウンセラーは、このような状態や状況に遭遇した相談者人に、人は限りなく成長するということに、全幅の信頼を寄せて接することができる資質や特性を持っていると言える。このような人には、近づいても安全である、安心できる、人生は生きるに値するといった感じを受けることができる。暖かさ、柔らかさといった雰囲気を感じさせる人は、このようなカウンセラーとしての資質を備えている。このような感じを与えられるカウンセラーは、その人の原体験のなかに必ず、他人によって自分が成長を援助され、成長させられたという貴重な体験を持ち、自己と他人への信頼に裏づけられたものを備えている。このような信頼は、生まれながらに備わっていると言うよりは、その人の生涯のなかで、絶えず啓発させられ、培われてゆくものである

カウンセリングの実践に入る人は、自ら挫折し、苦しみ、悩み、自己成長によって克服した経験があるケースが多くある。そのため、他者を苦しめるエゴイズムにも敏感であり、自分や他者を否定することはせず、他者の信頼に答えたいという気持ちが出てくる。

 

実践者としてのストレスケアカウンセリング

カウンセラーの資質ということを考えた場合、苦しみに陥った心、そこから、克服していった体験があって、カウンセラーになれる資質を育成されるプロセスが含まれていることになる。知識だけでは、まだ、カウンセリング能力が習得されていない。自分の苦の解決と、他者へのカウンセリング能力は全く別ものである。だが、その訓練の中で、他者の苦悩を幅広く探求し、さらにカウンセラーとなるための研鑽をすれば、よきカウンセラーになれる資質が備わる可能性が強い。つまり、ストレスケアカウンセラーは日々、バランスセラピー学の実践者であることが要請される。カウンセリングの要素や実践を軽視し、理論の解読、知性を重視する傾向は、そのままでは、よきカウンセラーの資質を持つことはできない。ストレスケアカウンセラーの働きはバランスセラピー学の「いま、ここ、自己」の実践にある。