相談者は、どのような人でも、その人、自らの成長への可能性や潜在力をもっている。このことは、人に対する人の働きかけが、根本的に成立する根拠になる。どのような特性をもった人であり、どのような要求や欲求をもっているのか、これからどのようにしたいのか、どのようになりたいのか。また、カウンセラーは、どのように援助したいのか、そのためには、どのように役に立つことができると考えているのか。このようなことを、その個人に対する提言という意見や理念の水準だけでなく、カウンセラーは、「暗に・・・してしまう自分」という利己主義の水準にまで掘り下げて、自己一致の理解や認識を持っていることが必要である。すべての優れたカウンセラーは、この点に関してはっきりとした自己理解や認識をしている人であると言える。
その人自らの成長への可能性や潜在力を持っているという視点は、例えば、禅の実践において、すべての人が仏であるという理念が類似している。禅の実践によって、自分の苦から解放された経験のある者は、この基本線で、自信を持って、力強く相手を導くことができる。また、「無意識に・・・してしまう自分」というような、利己主義や心の弱さにも敏感である。そういった、普段は自覚されにくい心も「中庸」の実践で探求するからである。自己一致は、様々な矛盾や不合理を自分に持っていても、他者にやさしく接することができるカウンセラーの重要な資質である(中庸は自然性であり自己実現、自己統合、自己受容に通じる)。