例えば、研究者は自分で研究している時、それはカウンセリングではありえない。研究者が、研究成果を書物にして出版するのもカウンセリングではない。カウンセリングの局面は、社会人を中心とした人を相手にしている時である。カウンセラーは、研究能力や情報収集とは、異なる能力が求められる。したがって、カウンセリングの理論を研究しているからといって、カウンセラーの資質があるとは言えない。カウンセラーは、日々、心理的問題を持つ人と対話して、助言・援助を与えるので、自分も絶えず自己成長を積み重ねつつある人が要請されているのである。
1. 心の動きに敏感であること
2. よく聴くこと
カウンセラーは、心の動きに敏感であることが大切である。言葉の表現、あるいは言葉以外(表情、態度、しぐさ、筋肉の動き、目の動き、服装・髪型など)に表わされたその個人の心の動きに、全体的に敏感に反応してゆくことができる。カウンセリングは、相手との互作用なので、相手だけの心の動きに敏感であるだけでなく、自分自身の動きが敏感に反映した相手の心の動きやこちらの心の動きそのものにも、敏感であることを含む。人間関係に敏感であることは、カウンセラーの重要な資質であり、特性である。
自分に関わる重要な問題に悩んでいる相談者にとって、よく聴いてもらえるということは、どれほど信頼がおけ、生きる力が増してくることに支えになるか計り知れないものがある。よく聴くことは、相手の心情の理解しようとする共感である。相談者の言葉、感情を全体として受け取った感じを伝達してゆくことが、「よく聴くこと」に通じ、その人の心情に沿って聴いてゆく態度のことを言う。これは、訓練を有する特別の資質でもある。気をつけなければならないことは、自分自身の人生で、挫折経験もなく、あるいは、激しい性格、強い性格のものは、良き聴き手になりにくいところがある。