初期の段階においては、カウンセラーの養成機関もなく、研修の場もないままに手探り状態でのカウンセリングであったに違いない。耳なれないカウンセリングという言葉に対する周囲の無理解のなかで進まなければならなかったのである。このような時に、C.ロージァズの1942年の著書(Counseling and psychotherapy・カウンセリングと精神療法)が「臨床心理学」という書名で翻訳、刊行された。この後、日本においてC.ロージァズの非指示的カウンセリングが土台となっていく。しかし、カウンセリングという言葉もまだ、一部の専門用語であった。当時は、カウンセリングの本来の意味は、神経症や精神病の予防を早期発見に寄与する社会心理学などの知見に基づいて行われていて、アメリカ経営学と管理手法のひとつとして精神医学の延長線上にあると思われていたようである。悩める人たちの相談に応じ、その悩みの解決に向けて援助するといった考え方は希薄であった。

現在、カウンセラーという言葉は、以前と違って耳慣れた言葉となっている。養成機関や学習の場は増え、大学においても心理系の学部は増加している。カウンセリングの分野は、発祥から様々な変化をして、今日の相談者自身が自分自身の問題を自分で解決できるように援助する姿勢を重視するようになってきている。