心理学は心の問題を扱うのだから、
身体は関係ないと思われるかもしれません。
それは、西洋の合理主義に私たちが染まっているからです。
西洋では、哲学者のデカルトが提唱した心と
身体は別のものと考える「心身二元論」が
伝統的に信じられているのです。
「こころ」は言葉として使っているぶんにはさして問題はありません。
しかし、その実態を把握しようとしても、
なにかしっかりした「かたまり」として存在しているわけではありません。
存在するのは「心の働き」である機能です。
そして、心の動きはそれぞれの身体をとおして、
外から見える形で現れてきます。
このような心の働きを応用すれば、
心から遠ざかり、身体に表現されるものに近づくにつれて、
そこに関与している適応の過程(ストレス)をよりよく理解できます。
私たちの身体には、予想もしないほどの「心」が存在していています。
心の場所は、身体全体、あるいはその動きであるということはそう極論ではないのです。
例えば、やさしく触れられるという行動は、
相手から肯定的に受け止められていることの現れです。
それを感じられることが、脳の発達はもちろん、
人間の生存にとって、食欲や睡眠より遥かに重要です。
つまり、触れ合うことは心の原点でもあるのです。
だからこそ、安心と保護感は幸福感とイコールで結ばれるのでしょう。
本能的な欲求である集団欲(関係欲)は生命の命綱なのです。