ストレスケアカウンセラーの働き
ストレスケアカウンセラーが行うカウンセリングというのは、
思考や生活習慣を望ましいものに改善する、
あるいは社会適応性を促進することにあります。
そのために必要なことは対話という働きかけだけではなく、
身体(脳)のリラクセーション状態を作り出すことにあります。
ではなぜ、リラクセーションが必要かという詳しい問題は、後にして、
簡単に要約すれば、「身体(脳)は心の製造所」だからです。
身体にストレス反応が発生すれば、心は身体に行動の主導権
を移していきます。これは、生物としての本能的な反応です。
つまり、「体主心従」ですね。
(※ ストレスとは身体の内部環境のアンバランス)
これまでの科学や哲学(西洋の思想)は、あくまで「心主体従」なのです。
つまり、人間の知性や理性を頼りにしているわけです。
だから、カウンセリングといえば、誰かに話を聴いてもらう(傾聴)こと、
あるいは、自分の話を誰かにする(アサーション)ことになっているのです。
もし、心を心でコントロールできるなら、誰もが心の問題で
悩みはしません。
心とは身体全体を含む統一的な連続性の働きの中にあるのです。
心と身体を分離した方法では、本能的な反応であるストレスの
対策にはなりません。
心は体であり、体は心であるという本来一つであるはずの
連続性や相互関係を知ることが必要です。
大震災後の心理的外傷後ストレス(PTSD)が懸念されています。
このような状況の中、ストレス障害や惨事ストレスの緩和に現在の
メンタルヘルスは果たして効果的なのでしょうか?
ストレスは、心の問題ではなく身体に起きた興奮状態を意味しているのです。
いわゆる対話中心の面談法で、血圧や末梢皮膚温などの体内環境を
コントロールするすることは極めて困難です。
心で念じても身体の内部環境を変化されることは難しいですね。
たとえ可能だとしても、一般的に、相当な訓練が必要であり、
かなりの時間もかかります。
人間の脳には、元の健康な状態に戻そうとする働きがあります。
つまり、「復元力」のことです。
強い力で圧迫されても、それに負けないで押し返す力を内在しています。
しかし、あまりに強い力で圧迫されたり、その刺激が長期間続くと
しだいに、押し返す力が減退していきます。(疲弊期)
では、この減退した復元力を回復させるには、どうすればよいでしょうか?
回復のカギを握るのは、脳中枢である「脳幹部」にあります。
人間にとって「生きる」という原動力は、脳幹部の力に
かかっているといえるのです。
※脳幹部はホメオスタシスの中枢
大震災からまだ1ヵ月未満です。最初は、「生きていて良かった」という
気持ちにありますが、時間の経過とともに、「なんで、こんな目に合うのか」
「これからどうしたらよいのか」といった怒りや不安、悲しみの
感情が昂ぶってきます。
さらに、「なんとかしなければ」という焦りが現れ、周りの人に対して否定や
八つ当たりをするようになります。実際に、過去のデータを見ても、
災害後は家庭内暴力が激増しています。
やがて、疲労が蓄積して無気力や抑うつ状態の疲弊期に移行していきます。
これらの原因の背景にはホメオスタシスの減退があります。
ホメオスタシスを再活性させ、復元力を強化することがストレスケアの
重要な課題であります。
震災からもうすぐ1ヵ月になります。
そろそろ、ショック相や反ショック相から「抵抗期(適応の範囲が狭くなる)」
へ移る時期を迎えます。
個人差があるので、すでに疲弊期(病気)の段階の人々もいるでしょう。
ストレスへの対応は、まず、初期段階で身体的な緊張や興奮を除くことです。
中枢神経や末梢神経の興奮を除かずして、メンタルヘルス(認知への働きかけ)
はあり得ません。
このことを大震災をきっかけに、多くの人が本当のストレスの実体に
気付いていくことになります。
そして、早期に、震災ストレスの緩和を実行しなければなりません。
4月24日から福岡校を手始めに、「緊急・大震災後のストレス対策」を
開始します。
一人でも多くのご参加をお願いしたいと思います。
そして、そのような訓練は被災者の新たな負担になります。