僕は20年フォークリフトのバッテリー修理の仕事をしています。

皆さんは電動式フォークリフトの動力であるバッテリーは、パワーが落ちてきたら修理して回復できるということを知っていますか。

バッテリーは、消耗品だから劣化していくのは仕方がない。
数年も使えばパワーが落ちてくるもの。
物理的な劣化は、避けようがない。
修理できるなんて聞いたことないよ。

多くの人はバッテリーは消耗品であって、経年劣化していくものだ、その劣化をくい止めたり、回復させることはできないと思い込んでいるみたいですが、フォークリフトのバッテリーは修理で回復できるのです。

なぜそう言い切ることができるかといいますと、僕は20年フォークリフト修理にたずさわってきて、いろんな状況に陥ってパワーがダウンしているバッテリーをすべて回復させてきたからです。
人は僕のことをバッテリー修理のプロフェッショナルとよびます。

こんなプロフェッショナルな僕でも、会社に入って新人で、「仕事、何もわからない」時がもちろんありました。
仕事がまったくわからないんだから、普通の会社なら、仕事の説明から入るもんですよね。
ところが僕が入った会社は、いきなり
「比重測ってきて」
からはじまるんですね。

比重ってなんや?
測るって、何を測るんや?
測る道具ってどこにあるんや?

から始まって、頭の中が真っ白になるんですね。
ほんで上司に「なんにもわからないんですけど〜」と言うと、
「工場に行ったらわかる」
と言われるんですね。

 

とにかく工場の中に入ると、隅っこの方で何かやってる人がいるんです。
「すいません、比重測れと言われてきたんですけど〜」
といって、モジモジしていると、そのおっさんが、まさしくそこで比重を測っていたんですね。
そこで初めて比重とは何の比重のことなのか、比重を測る道具、その使い方、メモリの読み方、用紙の記入の仕方などを教えてもらったんです。
親切丁寧に仕事の説明をして、仕事を覚えさすというのではなくて、何にも説明無しで現場に参加させて、やらすというところから始まるのです。
そして現場のやり方を実践させながら覚えさすやり方なんですね。

しかし教えてくれるのは、ただそれだけで、毎日比重ばかり測っていたことがあります。
そんな日々が続いていた頃、
「出張修理についていってこい」
と突然言われるんですね。
そもそもバッテリーのことも理解していないのに、先輩の出張修理に同行して、なにやるねんみたいな感じですわ。
仕事を覚える教科書みたいなもんもなければ、現場体験させる順序もめちゃくちゃですわ。

「自分で考えろ」「見て盗め」

つまりそういうことですわ。
江戸時代の職人の気質ですわ。
令和の今になっても、ここの会社では続いている感じですわ。
でも僕が今、バッテリー修理のプロフェッショナル、バッテリー修理の頂点に立っていられるのは、この江戸時代から続いているような古臭い職人気質がこの会社にあったからこそのことなんです。
そのことを今日は語ろうと思います。

もちろん仕事を始めたばかりの頃は、上司から言われたことを守って、完全コピー機のごとく動いたりするのが当たり前ですが、この状態をづっと続けていくばかりだと自己成長しないんですね。
 

どこかで自己流を作り上げていかないと。
僕は早い段階からそれに気づき、自己流をはじめたから、急成長してバッテリー修理の頂点に達したのです。

まずバッテリー修理を行うにおいて知らなければならないのは、バッテリーの仕組みです。
どういうしくみで放電と蓄電をおこなっているのか。
これを明確に理解しているメンテナンスマンは、案外少ないものです。
これを明確に理解してこそ、バッテリー修理の理解力は高まっていくのです。
僕はこれを自ら書物を読んで頭の中に叩き込んだのです。
それによって僕の知識はバク上がり、トラブルを起こしているバッテリーの状況や原因が手にとるようにわかってきたんです。
そうなってくると修理方法なんかも自然と見えてくるのです。
僕はこの会社のやり方にめちゃくちゃ感謝しています。
上司の指導や、マニュアル丸暗記しなくて良かったと思っています。

もちろん会社の従業員も2パターンに分かれます。
完全コピー機タイプと自己流開発タイプとに。
完全コピー機タイプだと上司からのイメージだと「まじめなやっちゃ」と思われるんですが、それではいつまで経っても上司の下でこき使われる人間なんですよ。
授業中、教室の前列でうなづいているばかりで、ぜんぜん頭に入ってない奴ってとこですね。
思考停止してしまうんです。
上司の営業スタイルやメンテナンスの仕方を完全コピーしたから僕もできるはずだと勘違いしてしまうんです。

それに対して自己流開発タイプの人は、いろんな人のやりかたをマネををして、さらに自分でも考えて、いろんなやり方を試そうとするんですね。
自分で自分の考えとスタイルを作り上げようとする人は、誰からも、どんな出来事からでもアンテナを高くしているんで、自己流開発パターンの方が学びが多いんです。
だから成長が早いのです。

 

完全コピー機タイプの従業員の場合、上司から自分がどのくらい完コピできているかをいつも気にして、それを自己評価の基準にしているんです。

それにたいして、自己流開発タイプの従業員は、シンプルにお客様は何を望んでいるのか、どうすればお客様の希望を叶えられるのか。
現場でお客様と話をしていても感受性が高くなって、ますます信頼関係が高まってくるんですね。
ひとつの商談でも得るものが多くなるのです。

だから仕事において最初は完全コピー機でもかまいませんが、そのままでいてはいけないのです。
僕の会社では従業員は、メンテナンスマンでもあり、営業マンでもあります。
仕事をさばくだけではなく、自己流を作り上げることこそ仕事をやる快感になっていかなけれぱならないと思うのです。