ある晴れた日のことでございます。

仏様が泉の底から下界を眺めていると

一人の男が苦しんでいるのが見えました。

男は地獄にいたのです。

仏様は男が一度だけですが

いいことをしたのを思い出しました。

鳥を助けたのです。

金の鳥でした。

仏様は金鳥の糸を地獄へ垂らしていきました。


男は苦しんでいました。

が、目の前に金色の糸がスルスルと

おりてくるではありませんか。

男は夢中でその金鳥の糸を登り出しました。

しばらくすると、地獄が遠くに見えます。

天国が見えてきました。

あともう少しです。


すると、下から大勢の人々が

金鳥の糸にすがって登ってくるではありませんか。

男はニヤリと笑いました。

もう、二度と失敗はしませんよ。


男は何も言わず、金鳥の糸を登っていきましたとさ。