駐妻だからなのか、とにかく時間が有り余る。
日本よりも広い家。でも、掃除なんて限界がある。2時間もすれば、家じゅうピカピカだ。ピカピカすぎて落ち着かないほどにピカピカだ。
散歩に出る。心の健康にいいそうだ。毎日1時間半、街をぐるっと一周してみる。膝が痛くなる。膝が痛いんだ。散歩は1日30分がちょうどいいのだそうだ。たった30分しか使えない。
料理?買い物は週に一度、パートナーと出かけるのみ。毎回決まったものを買うので精一杯。頑張って作ったって、水が違うから、調味料が違うから、日本で作っていた味にはたどり着けない。どうせ一人で食べるだけ。一瞬で終わる。おなかがいっぱいになればいいのだ。
そんな時、とあることがきっかけで、ミシンで縫い物を始めた。ミシンなんて殆ど使ったことはなかったけれど、マスクを作るために買ったものを持ってきていた。まっすぐしか縫えないけれど、縫いまくった。あきれるほど縫った。同じものが何10個も出来上がった。幸運にも、「この国」特有の布がある。日本に帰った時に気心知れた人たちにお土産として配ればいい。何も考えずにまっすぐ縫い続けた。
こうなってくると、新しい布も糸も欲しくなってくる。欲しいものがあるなんて、久しぶりの感情だ。パートナーの休みの日を待ちきれない。待っていたって、土日に休めるかはその時になってみないと分からない。あてにならない。
もう仕方ない。自分で運転して、買い物に行ってみる。一人で運転なんて、心配しかないが、欲が勝つ。
一人で運転して買い物に行けただけで、充実感を感じる。そして、縫い続ける。
縫物をしていたら、端切れがたくさん出た。命がけで買ってきた布の端切れ。捨てるわけにはいかない。クリスマスオーナメントを作ってみる。これもまた、何10個もできる。これはクリスマスツリーが引き受けてくれる。大きな家に合わせて買っておいた大きなクリスマスツリーが味方になってくれた。
手を動かしている間は、何の恐れも感じない。感じたとしても、糸がつれた時ぐらい。大したことではない。そして、永遠に時間が使える。最高じゃないか。