☆BTE 2021-12-04記
Let me call you Sweetheart:
ウィキペディアによると、この歌は、1910年に発表され、1911年に大ヒットになったのだそうです。今から、もう、100年以上前です。その演奏スタイルは、発表当時と、21世紀の現在とでは、やはり、少し違っては来ているようです。YouTubeで、今、この歌を聴くと、100年前の感じはしませんが、昔のは、歌うのも男で、やたらロマンチックです。この翻訳ノートの最後に参照する歌は、女性歌手のになりました。それは、いろいろ考えさせられます。
さらに、ここで蛇足ながら、付記すべきは、この歌のバースとコーラスがあって、バースは、昔の演奏のYouTubeでは、バースとして、説明のセリフっぽく提示され、コーラスのメロディで、ではなく歌われます。さらに、コーラスの、本来の歌の部分には、歌詞の1番と2番がありました。本翻訳者が訳した原詩Webサイトでは、コーラスの1番とバースの部分だけの構成になっていましたので、それを訳しました。今、改めて考えると、コーラスの2番は、それほど訳したくなる詩でもないし、また、バースは、コーラスのメロディに從って、歌ってしまいたくなりました。何が言いたいかというと、この蛇足は、ある意味で、以下、訳詩と、それを歌う事との関係で出て来た事柄についての、一つの言い訳という事ではあります。
Let me call you Sweetheart (1911)
Words by Beth Slater Whitson. Music by Leo Friedman
「Let me call you Sweetheart」英語詩:
曲名:すきといわせて
美艇香津 訳詩
[chorus]
Let me call you Sweetheart
すきといわせて
I'm in love with you.
あいしてるの
Let me hear you whisper that you love me too.
きかせてあなたのあいのささやき
Keep the lovelight glowing in your eyes so true
みさせてめにもえるあいのひ
Let me call you Sweetheart
すきだといわせて
I'm in love with you!
あいしてるの!
[verse]
I am dreaming, dear, of you
あなたのゆめをみる
Day by day
きょうもあしたも
Dreaming when the skies are blue,
はれているひも
When they're gray;
くもるひも
When the silv'ry moonlight gleams,
つきはぎんいろ、
Still I wander on in dreams
ゆめにさまよう
In a land of love, it seems
そこはあいのくにで、
Just with you....
あなたといるの .....
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さっそく、1行目、この歌の出だしを見ます。
Let me call you Sweetheart
パソコンの自動翻訳は、
⇒私にあなたを恋人と呼ばせなさい
この英文は、正に、中学生にぴったりの、よいテスト問題と言えます。
Let me call ..私に、...呼ばせる(そう呼ばせるのを許す)
Sweetheart 恋人
訳も、間違える事もなさそうです。しかし、それを歌うとき、それでよいのかどうか、考え始めます。そして、いろいろな言い方を思い付くでしょう。
というわけで、次のようになりました。
すきといわせて
「私に、あなたを、恋人と呼ばせて」という言い方は、分からないではないですが、少し、持って回った言い方でもあります。こういう言い方では、「私は、あなたの恋人ではない」と反論が来そうです。それに対して、「すきといわせて」ならば、最悪、「勝手に言えば」ですみそうです。まだ、希望の火は消えませんね。
そして、次の行、
I'm in love with you.
あいしてるの
訳はこれしかありません。最後に、「の」を置くのは、ちょっとした気配り、位でしょうか。あまり強く、自分を主張するのが、押しつけがましく取られるのを避けたい、ためらいですね。
Let me hear you whisper that you love me too.
Let me hear 私に..聞かせて
whisper 囁き
この歌は、「let」を繰り返して、「..させて」、「..を許可して」みたいに、お願いの連続です。もう、自分は、「あなたを愛してる」と告白は済みなので、その、よい答えが欲しいわけです。
それは、出来れば、あなたにも、「あなたを愛してる」と囁き返して欲しいという訳です。囁きが聞きたい、それは、きっと、耳もと近くで言われる、二人は、それだけ近くに、身を寄せ合っているという状況でしょうか。告白する側の、何回も頭に浮かぶ、空想が、もどかしく、切なく、夢のような世界が広がる事が感じられます。
きかせてあなたのあいのささやき
念のため、パソコンの自動翻訳を見ると、
⇒ あなたも私を愛しているとささやくのを聞かせてください
その通りですね。でも、歌の言葉になるには長すぎるし、それは、何か余計な部分が多いっていう事でしょうか。ちなみに、当方の翻訳の文を、文節で見ると、4音、4音、3音、4音、となっていて、いわゆる、調子がいいですね。自動翻訳も、いずれは、この程度の気の利かせ方は可能になるかも知れませんが。
次の行も、今度は、目で見える事を、畳みかけアピールします。
Keep the lovelight glowing in your eyes so true
Keep ..を、その状態を続ける
lovelight 愛の灯、火、光
glowing 燃え上がる
in your eyes 目の中に
true 真実の
「lovelight」は、そういう言葉があるとは、言われてみれば、分かる事は分かりますね。しかも、それが、「目の中に」ですから、そのまま受け取る事が出来ます。
この英文は、その、「愛の灯」を、ずっと持ち続けて、と訴えるものですが、訳としては、言葉は、「..し続けて」ですが、それは、前の行の、耳で聞く事に対して、目で見る事を言っているので、
みさせて
としました。聞くと見るの、言葉の並びの取り合わせで、歌を印象付け、言葉のリズム感を醸し出します。たぶん、これは、詩で「韻を踏む」と同じような、作詩のテクニックでもあります。
というわけで、次のようになりました。
みさせてめにもえるあいのひ
次の行は、1行目と同じフレーズです。ただし、ちょっとだけ、「すきだ」の「だ」を加えて、歌が進んだ、この行での主張を補強します。「どうして、まったく同じ分ではいけないの?」という疑問もあり得ますが、この行のメロディが、音符が、1行目と変わっていますよね。だから、そのニュアンスを、取り込みました。英語では必要なかったのかも知れませんが、日本語としては、あってもいいし、ちょっと欲しい所です。日本語ネイティブの歌なので。
Let me call you Sweetheart
すきだといわせて
そして、この歌、メロディの最終局面は、そのまま訳せます。ただし、ここでも、日本語の「の」の1音が付加されて、強い思いを表す表現にまで、手を加えられています。「の」は、あってもなくてもと思うかも知れませんが、それは英語のテストの時のことで、歌なので、それを置いただけの違いはある、と言って置きます。
I'm in love with you!
あいしてるの!
次に、もともとは、この歌のバースで、歌というよりは、説明にメロディ的な節を付けた部分とも言える、この歌の、言わば、当方としては、2番に当たる歌詞、を訳します。
もともと、この歌は、多くは、これまで訳した部分、1番の歌詞のみで、同じそれを2回繰り返したりして、歌い収めるのが普通のようです。
でも、この詩を見ると、悪くないし、1番と同じメロディで歌いたくなるので、その積りで、訳しました。
その1行目です。
I am dreaming, dear, of you
あなたのゆめをみる
「私は..」と言う必要はありませんね。自分が、「私」が歌っているのですから。
次の行も、言葉の意味はすぐ分かるのですが、それを何と言うか、歌うか、です。「毎日」という事ですが、「まいにち」という音、言葉で歌ったら、分かりますが、何か、歌が勿体ないですね。
Day by day
きょうもあしたも
次の行とその次の行は、空が晴れても、曇っても、という事です。毎日の事なので、天候も、当然、晴れたり、曇ったりしますよね。
Dreaming when the skies are blue,
はれているひも
When they're gray;
くもるひも
「Dreaming」は、日本語の訳からは、ここは省きました。どうしても、言葉の数を、曲に合わせて絞り込まないといけないので、もう分かっている「夢を見る」、「夢」は、ここでは、繰り返しません。
それよりも、次の行に出て来る風景、状況が、日本から見たら外国の人たちの生活意識が感じられて、訳すのが楽しいとも言える事になります。
When the silv'ry moonlight gleams,
moonlight 月の光
silv'ry 銀色の
gleams 輝く
月の光です、それを、この歌の状況で、どう感じ取っているのか知りたくなります。パソコンの自動翻訳を見ると、Whenに続くの文は次の通りです。
⇒銀白の月光はきらめく
その通りですね。でも、その文法構造、「主語+動詞」は捨てて、日本語では、「名詞」使いで、訳文としました。ここで、誰かさんに、「文法構造を変えたら、正しい訳ではない」などとは言われたくないものです。
つきはぎんいろ、
次の行です。
Still I wander on in dreams
Still なおも、やっぱり
wander さまよう
「Still」の訳は、そこまで追いかける事はしません。普通に訳せば、そのニュアンスは、自ずから、ありそうです。
ゆめにさまよう
外国の人も、月の光の下で、当てもなく、ふらつく、そういう気持ちがある事に、安心し、親しみを覚えるのです。
もう、この歌の締めくくりです。
In a land of love, it seems
そこはあいのくにで、
a land of love 愛の国
it seems そう思われる
「it seems」も、日本語の訳からは外します。「..そんな風にも思われる」と、わざわざ言わなくても、それは、聴いてる人は、もう分かっているんです。むしろ、英語詩の方が、「it seems」、「..そう思えるけど」まで言ってくれているのは、ずいぶん丁寧に、公平に、言ってくれていると、ちょっと感心します。
そして、最後、
Just with you....
あなたといるの .....
日本語の動詞、「いる」にしました。「あなたと一緒」という訳もありますが、あえて言えば、「いっしょ」という音よりは、「いる」の方が、状況にダイレクトに結びついている、と言いたいのです。というのは、翻訳という場合の基本的な問題ですが、ある音に対する漢字言葉が、常に、割って入ってくるので、いつも、それに注意していないといけないのです。「いっしょ」と聞いて、それを「一緒」という漢字に変換する作業が、もしかしたら、じゃまになるのです。
-完-
(余白残興)
2021.12.4記:
改めて、100年前の歌を、今も、歌えて、聴き入る事ができることには驚きです。もともとの、この歌の英語国民は、今は、この歌をどんな風に聴くのかと、考えさせられます。この歌を、今、YouTubeで、以前の演奏スタイルで歌うのを見ると、少し退屈なのですが。
私見では、この歌のスタイルを変えたのは、パティペイジ、あの「テネシーワルツ」の、かなと思います。考えてみると、「Let me call you Sweetheart」を、今風に、女の立場を強くして、聴かせているのです。彼女が「テネシーワルツ」で、他の競作歌手たちを抜いて、レコードの発売枚数を売り上げたのも、そういう、歌の解釈の伝え方の優れていた点にあるようにも思います。
話をこの歌に戻すと、この歌、「Let me call you Sweetheart」は、日本語では、少し前からの言い方ですが、「コクる(告る)」という言葉に近いものがあるように思います。ちなみに、「コクる」は、1996年頃からの、日本語俗語という事のようです。
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YouTubeを拾っておきます。
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