☆BTE 2021-12-07記
Just A Closer Walk With Thee :
これはゴスペルソング、日本で言えば、讃美歌になりそうな曲です。明治の頃には、まだ、これに目を付けて翻訳する人はいなかったらしく、讃美歌としては見つけられませんでした。
作詞、作曲の原作者については、インターネットを見て下さい、という事です。そういう訳で、歌詞も、以下に訳出したもの以外にもあるようですが、あまり、手を広げずに、この歌を見つけて訳した、という事で、止めたいです。
以下の訳詩では、繰り返し、リフレインのところも、そのまま、行を作りました。この歌を聴くと、繰り返しの歌詞部分も、そのままベタにそこにあるべきで、歌の勢いが、そのまま、積み上がり、聴かせてくれます。
マヘリアジャクソンの歌唱が凄いですが、他の歌手も、この歌は、その人なりにすごくなります。この曲の重みですね。
Just A Closer Walk With Thee (traditional)
「Just A Closer Walk With Thee」英語詩:
曲名:いっしょにあるきたい
美艇香津 訳詩
Just a closer walk with Thee
いっしょにあるきたい
Grant it, Lord if you please
おねがい、よければ
Daily walking close with Thee
いつもあなたとあるく
Let it be, dear Lord; Lord, let it be
それでいいですか、それで、
Just a closer walk with Thee
いっしょにあるきたい
Grant it, Lord if you please
おねがい、よかったら
Daily walking close with Thee
いつもあなたとあるく
Let it be, dear Lord; Lord, let it be
それでいいですか、それで、
I am weak, but Thou are strong
よわいわたし、あなたはつよい
Jesus, keep me from all wrong
だからあくから、わたしをまもって、
I'll be satisfied as long
わたしは、それだけでいい、あるくだけ
As I can walk, dear Lord, close with Thee
あなたといっしょに
Just a closer walk with Thee
いっしょにあるきたい
Grant it, Lord if you please
おねがい、よければ
Daily walking close with Thee
いつもあなたとあるく
Let it be, dear Lord; Lord, let it be
それでいいですか、それで、
When my feeble life is o'er
よわいわたしのいのちはおわる
Time for me will be no more
じかんはもうない
Guide me gently, safely o'er
やさしくおしえて、たしかなみち、
To Thy kingdom's shore, to Thy shore
そのくにのはまべ、そのはまへ
Just a closer walk with Thee
いっしょにあるきたい
Grant it, Lord if you please
おねがい、よければ
Daily walking close with Thee
いつもあなたとあるく
Let it be, dear Lord; Lord, let it be
それでいいですか、いいですか、
----------------------
さっそく、1行目、
Just a closer walk with Thee
いっしょにあるきたい
Just ただ、ひたすら
closer (比較級).. より近い
Thee 「You」の意味の古英語
さっそく、パソコンの自動翻訳で見ると、
⇒あなたとの距離を歩む
など、ちょっと、意味の分からないものが出ました。
文が、文章にはなっていなくて、名詞句です。取りあえず、訳すと、「ただただ、あなと、より近い所での歩み」、ですね。その気持ちは分かりますが、日本語で、その意味を伝えようとすると、その、分かったような気持ちを、言葉にするしかありません。だから、
いっしょにあるきたい
です。「より近く」を言うだけの、音符の長さはありません。この後も、日本語で、「より近く」を明示的に言う事はありません。この歌の中で、その気持ちはくみ取って欲しいですし、たぶん、そんな気分だとは分かってくれると思います。
そして、次の行です。
Grant it, Lord if you please
おねがい、よければ
Grant 許す
it 「a closer walk with Thee」を指して言う
Lord 主(神)
「Grant it」を、パソコンの自動翻訳で見ると、「それを与えなさい」と出ました。
「it」は、「a closer walk with Thee」を指しているので、「一緒に歩く事」です。
一緒に歩みを進める事を認めて下さい、ということですが、それを、このまま、訳という事にしては、たぶん、面白くないです。例えば、「それを許して、主よ、どうぞ」とか、その気持ちは分かりますが、それを歌う気持ちにはなれません。だから、考えて、こうなりました。
おねがい、よければ
これで、英語の気持ちとぴったりでないでしょうか。
次の行は、
Daily walking close with Thee
いつもあなたとあるく
Daily walking 毎日の歩み
close with Thee あなと近い
この行を、パソコンの自動翻訳で見ると、
⇒毎日あなたと近くを歩く
当方の訳では、「毎日」を「いつも」とし、「近く」の語を省きました。でも、それでよいようです。
歌う時、「まいにち」と4音を歌うか、それを、「いつも」の3音で済ませるかは、大きな違いです。また、「まいにち」という言葉は、「毎日」という漢字経由で理解されます。それも、大きな違いの一つです。
そして、この連の最終行です。
Let it be, dear Lord; Lord, let it be
それでいいですか、それで、
Let it be なるがままに、それにそうであらせなさい
it 「Daily walking close with Thee」を指して言う
「Let it be」です。ビートルズの歌にあります。これをどう訳すかは、単に、この歌だけの問題ではなく、ビートルズの歌にも、何らかの照り返しというか、影を落とします。
この行の意味は、「いつもあなたとあるく」事を、「Let it be」させて下さい、という事でしょうか。
「そうありますように」とか、「それを願う気持ちです」とか、です。この歌の、訳の山場が、いきなり、来ました。これを訳せなければ、もう、先はありません。断念せざるを得ないことになります。歌ではなく、翻訳ということで終わります。
そこで、この「Let it be」の気持ちを考えてみます。それは、誰に行っているかと言うと、「主に」です。それは、目上に対する、あるいは、へりくだった気持ちの、お願いであるはずです。
そうすると、「そうさせて下さい」、「それをお願いします」というような事です。
もう、答は見えて来ました、次の通りです。
それでいいですか、それで、
「Let it be」の繰り返しは、「それで」で済ませました。そして、もしかして、重要なのは、「Lord」を訳さなかった事です。訳したら、「主よ」とかですが、それを表に出した時、この歌は、普通の日本人には理解できないものとなります。というか、理解はできますが、ピンと来ません。「主」の概念が、宗教的な背景を持ち、我々には、ない、からです。むしろ、戦国時代や江戸期、殿様を主人とする武士道のあった時代には、「主よ」でも理解されたかも知れません。
「Let it be」が、「それでいいですか」の訳になるとは、我ながら、びっくりです。でも、それでよいと思います。
次の連は、前の連と同じです。リフレイン、繰り返しの分です。これは、1回だけ、訳して、あとは、「繰り返し」の指定でよいわけですが、この歌に限っては、そのまま、この繰り返しの部分も、ベタで行表示をして、見て行きます。この歌は、この繰り返しの度に、歌の雰囲気が盛り上がって行って、歌詞としても、そのまま見て行きたいからです。...というのも、よく意味が分かりませんが、また、歌う人ごとに、実際の歌唱の進行は異なりますから、ここでは、こんな風に、その歌詞を見て行くだけです。
この連では、繰り返しですが、「おねがい、よければ」の行は、「おねがい、よかったら」などとしています。訳というのは、ある言語の絶対的な意味での他言語への変換ではないので、この程度の、訳語のぶれ、揺れは、大目に見てほしいものです。
Just a closer walk with Thee
いっしょにあるきたい
Grant it, Lord if you please
おねがい、よかったら
Daily walking close with Thee
いつもあなたとあるく
Let it be, dear Lord; Lord, let it be
それでいいですか、それで、
次の連です。
I am weak, but Thou are strong
よわいわたし、あなたはつよい
これは、何も考える事はありません。ただ、「but」の、「しかし」は、訳に出しませんでした。対比的叙述の二つの分なので、言われなくても、「しかし」は、分かっている事ですね。
Jesus, keep me from all wrong
だからあくから、わたしをまもって、
Jesus イエス・キリスト
keep me from (人)に~させない(ようにする)
wrong 間違い
「私に、間違いをさせないようにして」という事ですが、「まちがいをさせないで」と言うと、何か、思考回路が遠回りになります。もっと、端的な言い方で、訴えたいものです。
それを、あれこれ考えて、こうなりました。「悪から、私を護る」、つまり、私に、悪い事、間違いをさせないし、しません。それよりも、重要なポイントは、ここで、「Jesus」を訳出しなかったことです。もしも、訳出するとしたら、「主よ」とか、もう、どうしようもなくて、「ジーザス」になるかも知れません。でも、どちらにせよ、それを聞いたときに、日本の聴衆は、この歌が分からなくなります。全然、文化的に違う情緒要因だからです。なので、、「Jesus」を訳出せず、その代わり、「だから」と、言葉を置きました。それは、そこに、何かの力がある事を示唆するものです、と言っておきましょう。
この歌の宗教性を、そのように消すのでは、この歌の訳にならない、と言われるかもしれません。しかし、ゴスペルだから、その歌の宗教性を、どこまでも、限りなく求めるのは、この歌の意味する、分かりやすい情緒性を、却って、ないがしろにする事にもなるような気がする、とは言っておきましょう。この歌に、「Jesus」という語があった事を知れば、この歌の訳の全体の中に、その姿は認められるのではないかと思います。それは、言い過ぎかもしれませんが。
という事で、次の行に進みます。
I'll be satisfied as long
わたしは、それだけでいい、あるくだけ
ここは、次の行と合わせて訳します。
As I can walk, dear Lord, close with Thee
あなたといっしょに
satisfied 満足した
as long As ..の限り
close with Thee あなたと近く
私は、「満足」、「まんぞく」と言うよりは、私は、「それだけでいい」の方が、直感的に、その情緒の理解が、早く進むと思います。
「..歩く事ができるかぎり」と言うよりは、「あるくだけ」でいいのでは。そして、「close」は、「いっしょ」がいいですね。
「I'll be ..」の未来形は、訳としては、「満足するでしょう」ではなくて、「それだけでいい」という表現で押え込みました。「...、どういう事?」となりそうですが、訳した結果を見て、納得して頂ければよいのです。
次の連は、繰り返しの分です。
Just a closer walk with Thee
いっしょにあるきたい
Grant it, Lord if you please
おねがい、よければ
Daily walking close with Thee
いつもあなたとあるく
Let it be, dear Lord; Lord, let it be
それでいいですか、それで、
次の連です。
When my feeble life is o'er
よわいわたしのいのちはおわる
feeble 弱い
o'er over
「命が終わる時」ですが、「..時」は、言葉に訳さずに、文を終えました。この文を言い終わって、「そのとき」の積りです。
Time for me will be no more
じかんはもうない
時間は、それ以上はないのです。
Guide me gently, safely o'er
やさしくおしえて、たしかなみち、
gently やさしく
safely 安全に
「Guide」は、「導いて」でしょうが、「おしえて」と、簡単に言い切ります。「導いて」だと、その言葉の理解の回路が、少し長くなり、遅れますね。
ここも、次の行と、2行合わせて、訳す事になります。
To Thy kingdom's shore, to Thy shore
そのくにのはまべ、そのはまへ
kingdom 王国
shore 浜辺
「みち」という語はありませんが、目的地があり、ガイドするのですから、「道」がありますね。「kingdom」というのは、「Lord」、「Jesus」の国、という事です。「浜辺」というのは、その国に行くのに、海を越えて行く、遠い所、知らない国、そういうイメージですね。
そして、ここでも、「Thy」、「あなたの」、つまり、「主の」という事ですが、それは、単に、「その..」で済ませました。「あなたの居る浜辺」、「あなたの所に」とか、「あなた」と言ってしまうと、これも、その宗教的背景のない我々には、一辺に、分からない事になってしまいます。
この歌は、ある信頼できる人と、いっしょに歩いていたい、そして、最後まで、確かに、安らげる地まで、歩いて行きたいという歌です。それなら、我々も分かりますね。異なる文化背景を持つ英語国民は、その中で、「主よ」とか、「イエス様」とか言うかも知れませんが。
最後に、また、繰り返しの連で終わります。
Just a closer walk with Thee
いっしょにあるきたい
Grant it, Lord if you please
おねがい、よければ
Daily walking close with Thee
いつもあなたとあるく
Let it be, dear Lord; Lord, let it be
それでいいですか、いいですか、
-完-
(余白残興)
2021.12.8記:
この歌を、明治の人たちが見付けなかったのはどうしてだったのか知りたいものです。宗教的な部分は、ごく少なくて、あまりに、普通の気持ち、思いだったので、却って、宗教的な意味を探って、訳すという事が難しかったのでしょうか。
演奏のせいもあるかも知れませんが、リズムよく、元気に、人を歩かせてくれる、そんな曲です。
-------------------------------
YouTubeを拾っておきます。
-------------------------------
