☆BTE 2021-12-10記
All Of Me:

 

この歌をインターネットで見ていたら、普段は歌われる事のない、なかった、バースが載せてありました。この歌は、短い曲で、多くの場合、同じ歌詞を、2回歌います。それで、歌の演奏時間が、それなりになるんですね。

 

それは、ともかく、見つけたバースの部分も、訳してみました。この歌の背景が描かれます。これは、ここ、「翻訳ノート」だけでの訳にしておきます。YouTubeで、この部分の歌唱演奏例が見付からない事もあり、訳詩本文には入れません。(※参照したWebサイトでは、「Verse」とはしていなくて、「Lyrics」とありました。)

 

[Lyrics]

You took my kisses and you took my love あなたは私のキス、私の愛を、取って行った
You taught me how to care あなたは私に、好きになるという事を教えた
Am I to be just the remnant of a one-sided love affair? 

 私は、一方通行の愛のただの残りかすなの
All you took, I gladly gave すべてをあなたは取って行き、私は喜んで、あなたにあげた
There’s nothing left for me to save 私のための、残っているものは何もない

 

1931年、米国の経済大恐慌の後です。株券を買って、それがすべて紙くずになった人の気持ちと、ずいぶんぴったりするのではないでしょうか。

 

今、「all of me」を検索すると、新しい、他の人の、同名の曲が多くリストアップされました。言葉は同じ、「all of me」ですが、今は、別の事を考えているようです。それは、「smile」でも、そうでした。昔の事は忘れ去られているようです。その分だけ、昔の方のこの歌を聴くと、しみじみする、という事になります。

 

 

All Of Me  (1931)

 

 Composer:Gerald Marks
 Lyrics:Seymour Simons


「All Of Me」英語詩:

曲名:わたしのすべて

美艇香津 訳詩

 

All of me, Why not take all of me
  わたしのすべてを、あなたに
Can't you see, I'm no good without you
  そうなの、あなたなしではだめ
Take my lips, I want to loose them
   くちびるもいいわよ
Take my arms, I'll never use them
   そう、うでもとられるまま

 

Your goodbye left me with eyes that cry
   もういないあなたに、のこるなみだ
How can I go on dear without you
   どうすればいいのわたし
You took the part that once was my heart
   あなたにとられたこころのありか
So why not take all of me
   わたしのぜんぶじゃなくて

 

----------------------

さっそく、1行目、

 

All of me, Why not take all of me
  わたしのすべてを、あなたに

 

「わたしのすべて」と言ってから、「なぜ、私のすべてを取らないの?」と、「わたしのすべて」の意味を明示し、提示します。「わたしのすべて」という言葉は、訳からは外せませんし、この部分の音符に合わせるのも難しくありません。問題は、「Why not take 」、「なぜ、取らない」を、歌の言葉に乗せるかどうかです。音符が足りません。それから、その日本語の意味が、まずは、ピンと来ませんね。分かるのは、この歌が進んだ、後からです。

 

「You」の言葉もありません。その意味では、上記に揚げた、「lyrics」が、説明してくれてはいます。でも、それは、歌唱演奏では省略されてしまうのです。省略しても、どうせ分かるからという事でしょうか。

 

ですから、ここでは、訳を突き詰めずに、そのテーマだけを提示する事にしました。それが、

 

 わたしのすべてを、あなたに

 

聴く方は、「それで?」と、いろいろと考えるのは後にして、話しを聴いてくれそうです。英語の方では、もう、「何があったの?」になりますが、何も状況を分かっていないのは同じなので、同じ歌を聴き始めただけなのです。
 

Can't you see, I'm no good without you
  そうなの、あなたなしではだめ

 

Can't you see 分かる?(※口語的、会話的な)

no good  だめ

 

「no good 」に当たる言葉は、人様々でしょうが、「だめ」という語を選びました。

また、「Can't you see」は、「分かる?」とか、「分かるの?」とかしても、それこそ、聴いている人には何の事を言っているのか分かりませんから、口語表現として、「そうなの」で、ここの所は分かってもらいたいものです。

 

次の行、それと、その次の行は、歌う人の気持ちを、畳みかけて言っているので、まとめて、聴き、まとめて、訳します。

 

念のため、パソコンの自動翻訳で見ると、2つのサイトで見たら、次のようでした。

 

[次の行]

⇒私のくちびるを取りなさい。私はそれらを放したい

⇒私の唇を取りなさい、私はそれらを緩めたい

 

英語は、その通りですね。英語のテストなら、どちらも90点は取れると思います。

 

「くちびるを取って」となると、取ったものをどうするかという事ですから、それを放り出す、がよくて、上記の例では、2つ目の方が95点でしょうか。「取った」ものを「緩めたい」というのは、なかなか理解しづらい状況です。でも、2つ目が捨てがたいのは、物が「くちびる」なので、それを「緩める」は理解できるのです。

 

やはり、理解できる、「緩める」にしたくなります。そうすると、「取って」というのは、英語の「take」を、「唇を取る」という、その心は、「唇を奪う」であろうと思われます。そして、その状況で、人が言うのは、「取って」とか「奪って」という即物的な事柄の有り様ではなく、その時のきもちなのだろうと思います。そういうわけで、

 

Take my lips, I want to loose them
   くちびるもいいわよ

 

loose ゆるい、緩める

 

[次の次の行]

 

⇒私の腕を取りなさい。私は決してそれらを使わない

⇒私の腕を取りなさい、私はそれらを決して使用しません

 

これも、英語のテストでは90点は取れますね。

 

これを、「腕を取ってよ、絶対使わないから」などと言っては、そう言われた方は、「俺は、腕を取って、何にするんだっけ」と途方にくれます。

 

これも、この状況で、人が言いたいのは、自分の手や腕で何をするとかはなくて、されるがままでいい、という事でしょう。手や腕を使うのは、時には、引き寄せる外にも、抵抗し、撥ねつけるためにも使いますね。というわけで、


Take my arms, I'll never use them
   そう、うでもとられるまま

 

never use  決して使わない

 

そして、次の4行、次の連に入ります。

 

Your goodbye left me with eyes that cry
   もういないあなたに、のこるなみだ

 

これも、パソコンの自動翻訳で見ると、

 

⇒あなたのさようならは泣く目で私を残しました

 

これでも、何となく分かります。もう少しAIを入れて、文を練ればと期待させますが、そこまで行くには、まだまだのようです。

 

あなたが「さよなら」して、私には、泣き顔が残っている、そんな所です。それを、音符の数にも合わせて考えたら、こうなりました。

 

 もういないあなたに、のこるなみだ

 

次の行は、だから、

 

How can I go on dear without you
   どうすればいいのわたし

 

あなたなしで、私はどうすれば、どう過ごして行けばいいのか、という事です。

 

歌では、文法的に、主語+述語を完結させることを目指さずに、ある面、俳句的に、言葉を投げます。

 

そして、次です。

 

You took the part that once was my heart
   あなたにとられたこころのありか

 

part 部分

once  かつて、以前

 

「part」は「部分」、「部品」、語としては普通に簡単な語です。それを、「あなたは私の一部分を取った」などと訳しては、それが、ロボットだったとしても、失礼な話でしょう。その「一部分」とは、この行に説明されています、「私の心臓だった」ものです。もう、取られてしまっているので、「かつて、以前」となります。そして、病院の手術の話ではないので、「心臓」と言うよりは、「心」ですね。

 

「ぶぶん」などと言っていては、「それは何?」と聴く人には、分からず、理解しようと努めなければなりません。「心だった部分」ではなくて、「心のありか」、それでわかります。

 

そして、この歌の最後も、この歌のテーマで、歌い切ります。

 

So why not take all of me
   わたしのぜんぶじゃなくて

 

why not take  なぜ、取らない?

 

 

-完-

 

(余白残興)

 2021.12.10記:

 

意外にも、この曲は、YouTubeで探しても、それほど多くはありません。最初に書いた、同名の別の曲が、新しくて、そちらの方が多く出て来ます。ビリーホリディもフランクシナトラも、何を思うか、という所です。そして、今の歌手がこれを歌う時、今の時代、世相を考えると、この歌の、単純さ、古きよき時代(特に男にとっては)の気持ちが、懐かしい様な、また、敢えて言えば、こんな気持ちって少し恥ずかしい、みたいな所がありそうです。下に拾った、ダイアナロス(生1944-)も、少し、何か照れくさそうにしている所があるように思うのは、考え過ぎでしょうか。

-------------------------------

YouTubeを拾っておきます。