第8章 成 長
うつ病、離婚、同僚を亡くし 、胸にぽっかりと穴が開いた 達也で有ったが、諦めずに、 また必死で勉強する事により 、いつしか悲しみや寂しさを 少しずつ乗り越え、不幸から 幸運への道が開かれて行った 。 達也自身は、気づいていない が、達也の成長ぶりには、目 を見張るものが有った。 所長、教習所の先輩達はもち ろん、特に石井課長は、達也 の努力と成長ぶりを感心し、 喜んで居た。 口に出しては言わなかったが 、達也なら一回で合格するか どうかは分からないが、必ず 合格し、良い指導員に育って 行くだろうと思っていた。 所長の目にくるいは無かった 。 教習指導員養成講習当日、達 也は朝5時に起きた。 達也の自宅は、埼玉県でも田 舎の方で講習会場の新宿迄は 、電車で約2時間掛かる。 講習は、9時からで有るが、 達也は遅れないよう6時5分 の電車に乗った。 達也の鞄には、講習に必要な 本などが入っていて、ずっし りと重く、7時前後になると 通勤ラッシュに巻き込まれ、 講習会場に行くだけで疲れて しまいそうで有った。 講習会場である東京都指定自 動車教習所協会に着いた達也 は、職員の人に挨拶をし、教 室へと向かった。 達也は、教室のドアに貼り出 されている、名簿、席順を見 て自分の席を確認し名簿を眺 めながら講習を受講する人数 を数えてみた。 東京都の各自動車教習所から 教習指導員試験の受験資格を 得るために集まった受講生が 54人居た。 教習指導員養成講習は、教習 指導員になる為の通過点で有 って、講習を修了したからと 言って、試験が有利になった り、試験の範囲が分かる訳で は無い。 あくまでも通過点に過ぎない 。 受講生は、若い人も多かった が、30代から40代の人も 結構居て、達也は内心ほっと したと同時に、真剣に本を読 んでいる人、文章を書いてい る人を見て「皆、志は一緒な んだ」と思い、ますますやる 気が出て来た。 講習は、午前9時から始まり 、午後4時か5時に終了する 。 14日間の講習は、警察や自 動車教習所、その他各方面か ら招かれた講師の講義を受け るのと、講習が始まる以前に 決まっていた教習所へ行き、 各教習所から招かれた、教習 指導員、検定員の方達から学 ぶ実技講習が1日ある。 達也は、この講習を通じて、 数名の人と親しくなり、携帯 番号、メルアドを交換しあい 、試験に関する事や疑問点な どを話すようになり、達也に とっては、とても励みになっ た。 14日間の講習は、土日が休 みだったので、約3週間受講 し、講習期間中も帰宅後、夜 中迄勉強し、土日も会社から は、休んで良いと言われてい たので、ゆっくり勉強できた お陰で達也は、7割位文章を 覚える事が出来た。 無事14日間の講習が修了し 、達也は修了証を貰い教習所 に戻った。 10月1日から始まる教習指 導員試験は、通常3日間で行 われるが、今回は、4日間に 分けて実施される事を講習修 了時に説明を受けた。 一発で合格した人は、前回の 試験では、63人中、25人 で、合格率は約40%で有る と言う。 教習指導員試験は、一般の人 でも受験可能では有るが、合 格者は未だ一人も出ていない 。 それだけ難しい試験である。 達也は、試験まで残されたわ ずかな時間を全力でラストス パートした。
第8章 完
第9章へ つづく