第11章 ありがとう
試験の結果が出るのは一週間後だった。
その間達也は、送迎バスを担当する事になった。
以前タクシードライバーだった達也は、送迎バスの仕事は全然苦にならなかったし、今迄勉強詰めの毎日から解放され、のんびりした生活を過ごせるようになった。
周りの先輩指導員からは、「一発合格は、どうせ無理なんだから気楽にやれば良いんだよ」と言われて、その言葉に少しムッとしていた。
実際に八王子ドライビングスクールでは、一発合格者は今迄一人も出て居ないのが事実で有ったし、達也も不安な科目が2科目有った。
もし不合格でも、合格した科目は、次回の試験からは免除されるので、不合格になった科目だけ受験すれば良い事になる。
達也は、やるべき事は、全てやったので悔いは無かった。
私を採用してくれた会社に感謝しているし、ここまで私を育ててくれた石井課長にも、そして勇気をくれた元妻、勉強の邪魔にならないよう、配慮してくれた両親達への感謝の気持ちでいっぱいだった。
そして、一週間が経ち達也は、送迎バスの休憩所で休んでいると、突然石井課長が飛び込んで来た、目にはうっすらと涙がにじみ出ていた。
「達也君合格だよ合格、一発合格だよ!」と達也に言った。
達也は耳を疑ったが、石井課長から教習指導員試験結果の通知を見せてもらうと、そこには、全ての科目に合格の二文字が有った。
それを見た達也は、次第に実感が湧いて来ると同時に涙が出て来た。
達也は、試験中に頭が真っ白になり何を書いたか覚えていなかったが、毎日必死で勉強して書いた文章は、頭と手が覚えていて、問題の解答を正確に書いていたのである。
「諦めなくて良かった!」「自分を信じていて良かった!」本当に良かった。
初めて出た一発合格者の達也に、教習所職員全員から暖かい拍手が巻き起こった。
