第2章 かけがえのない人

 

うつ病もすっかり治り、退院 して自宅に戻った達也が部屋 に入ってみると、妻と子供達 の引っ越しは殆んど終わって いて最後の荷物のダンボール 箱が数箱有るだけで部屋は綺 麗に片付いていた。一緒に住 んで居た頃の狭く感じた部屋 が、タンス、子供の机が無く なり広くなった部屋で、達也 は、いつしか孤独と寂しい気 持ちが込み上げて来た。その 気持ちを断ち切るかのように 達也は、残りの荷物を車に積 み、挨拶がてら妻の実家に行 く事にした。 妻の実家に着き義理の両親に 会うと、達也に対する義理の 両親の態度は冷たく、白い目 で見られている事を感じた達 也は、挨拶もそこそこにして 、荷物を下ろし帰宅した。き っと時間が解決してくれるだ ろうと思い義理の両親の事は 考えないようにした。 帰宅して直ぐ一本の電話が入 った。達也が電話に出ると会 社からの電話で、同僚の大場 さんのお通夜と葬式の連絡で 有った。達也は、耳を疑い、 事の詳細を聞きなおした。 実は、達也が入院してまもな く大場さんは風邪をこじらせ 肺炎になり緊急入院する事態 になっていた。 大場さんは意識はしっかりし ていたらしく、入院中も達也 の事を思いメールを送り続け ていた。 12月にメールが途絶えたの は、肺炎が悪化し呼吸困難に なり意識不明の重体になって いたからで有る。 達也が退院する前日、大場さ んは、余りに短すぎる30歳 で生涯の幕を閉じた。 生前、大場さんは会社に、自 分が入院している事を達也に は伏せておく様に頼んでいた 為、入院中の達也の耳には入 らなかったので有る。 突然の大場さんの死に、達也 は動揺を抑える事が出来ず泣 き叫んだ。 同僚の大場さんは、自分が重 傷で有るにもかかわらずメー ルを送り続けてくれた優しさ に心を打たれ達也は、「世の 中にこんなに優しい人が世の 中に居るのであろうか?」と 思い涙が止まらなかった。 達也は、「大切で有り心を許 せる、かけがえのない同僚を 亡くしてしまった」、「俺は 、大場さんが苦しんでいる事 も知らず、見舞いに行く事も 出来なかった」 達也は、自分が情けなかった と共に、義理の両親が見舞い に来ない事位で複雑な気持ち になっていた自分が、いかに 心の狭い人間で有るか痛感し た。 翌日の16日、達也は大場さ んのお通夜に出席し、翌17 日の葬儀に出席し大場さんと 最後の別れをした。 帰宅しても達也の涙が止まる 事は無かった。

第2章完

 

第3章へつづく