第3章 理想と現実
両親と3人だけの生活が始ま った達也だが、大場さんの死 、そして妻との別居と相次ぐ 出来事で、心の中は複雑で有 った。 改めて大場さんと、妻と3人 の子供たちの存在の大きさと 大切さを身にしみて実感する 事になる。達也は寂しく又孤 独な日々を送って居た。 妻とも連絡を取り合い今後の 事を話し合っていたが、「同 居はもう出来ない」と言う妻 の意思は固く、達也は打開策 を考えていたが、この複雑な 状況では達也を苦しめるはか りで打開策など、そう易々と 見つける事は出来なかった。 達也の家は、父と達也との親 子ローンで購入したが、両親 は既に年金生活を送っていて 、住宅ローンの支払いは達也 の収入でまかなわれていた。 離婚だけは避けたいと達也は 考え電卓をたたいていたが、 両親と別居する金銭的余裕な ど無いのが現状で有った。 一ヵ月が経ち妻から「今度の 日曜日に、会って話がしたい 」と言われたので、達也は「 分かった、子供達は元気か?」 と聞くと、妻は「元気よ」と 答えてくれた。妻の声が疲れ ているように感じた達也は、 会話もそこそこにして電話を 切った。 そして日曜日早朝、妻から電 話があり、妻は「子供達を両 親に預かってもらうから、達 也の家近くの市役所の駐車場 で10時頃はどう?」と聞かれ、 達也は「分かった」と答え電 話を切った。 達也は少し早めに家を出て市 役所の駐車場へ向かった。 市役所の駐車場は、達也の家 から歩いて5分程の所に有り、 先に着いた達也は、あたりを 見渡すと日曜日なので車は一 台も止まっていなかった。 5分位遅れて妻は車を運転し て市役所の駐車場に着いた。 妻は「ごめん待った」と言わ れ、達也は「そうでもないよ 」答え妻の車に乗った。 達也は「どっか行く?」と言っ たが、妻は「ここで話しまし ょう」と言われ、二人は市役 所の駐車場で話す事になった 。 少しの間二人の間に沈黙があ り、先に話し始めたのは妻の 方だった。 妻の口からは「私と離婚して 下さい」という言葉が出た。 達也は少し間をおいて妻に「 また一緒に生活しないか?」、 「同居してもこれからは今迄 以上、精一杯お前と子供達を 守るし、両親にも話すから戻 って来てくれないか」、再度 「俺が精一杯守るから帰って 来てくれないか?」達也の言葉 を聞いた妻は、涙で頬を濡ら していた。 少しの間、妻と達也との間に 沈黙が続き、やがて妻の方か ら話しかけて来た「ごめんな さい、私も色々考えて出した 結論なの、もう同居する事は 嫌だし、仮に同居したとして も両親の性格は変わらないと 思うの、それよりも達也が苦 しんでいる姿を見ているのが 一番辛いの、だからこれしか ないのよ」妻は泣きながら震 えるような声で達也に言った 。 達也は自分の無力さを実感し 情けない気持ちでいっぱいだ った。 突然妻は達也の手を握り泣き ながら「私と結婚してくれて 有難う」と言った。 その言葉を聞いた達也は妻の 手を握りしめ、感極まり涙が 溢れ出て、しゃべりたくても 声が出せず頷くのがやっとだ った。 この日達也は離婚に同意した 。 第3章 完
第4章 決意へ つづく