5章 いつかきっと
達也は、ハローワークの職員 の人が後押ししてくれたお陰 で、教習指導員見習いの面接 を受ける事が7月28日の1 0時に決まった。 当日達也は、久しぶりの面接 で緊張していた。その緊張を 吹き飛ばすかのように、「よ し、行くぞ!」と、気合を入 れて会社へと向かった。 達也の自宅は埼玉県入間市で 、面接を受ける自動車教習所 は東京の八王子市に有る。 達也の自宅から車で1時間位 掛かる為、約束の時間に遅れ ないよう、少し早めに自宅を 出た。 達也は、車を運転しながら「 面接を受けるのは、タクシー 会社の面接以来、14年ぶり だな、今迄、色々な事が有っ たけど、ここで夢を叶えて心 機一転出来れば」と考えてい た。 会社へ向かう道路は空いてい て、達也の予想より早く、9 時に会社に着いた。 「八王子ドライビングスクー ル」達也は、会社に入る前に 教習所を見学しようと思い、 ぐるりと教習所を見て回った 。 立派な建物で、教習所のコー スも広く生徒も沢山居て、生 徒同士で和気あいあいと話を していて、とても良い空気が 流れていた。 なおかつ隅々まで整理整頓さ れていて、とても綺麗な自動 車教習所で有った。 達也は、「この会社に入社し たい」と思いながら会社の門 を叩いた。 達也は、職員の人の案内で直 応接室に通された。 達也はそこで、現実を身に染 みて感じる事になる。 広い応接室には、もう既に十 数人の応募者が居た。 年齢は20代の人が殆どで有 る。 達也は一瞬「これじゃ難しい かもしれない」と思ったが、 「これが教習指導員になれる 最後のチャンスかもしれない! 」と思い直し席に座った。 10時になり職員の人が応接 室に入って来て「面接は、こ の部屋を出て直ぐ正面の所長 室で面接を行います。一人ず つ名前を呼びますので、呼ば れた方は、所長室に入って下 さい。面接が終わりましたら 帰宅して下さい」と説明を受 けた。 一人、また一人と名前が呼ば れ、ついに達也の名前が呼ば れた。 所長室に入った達也は、「こ れが最後なチャンス!」と自分 に言い聞かせ、大きな声で自 分の名前を言い面接に挑んだ 。 面接は、所長と達也の1対1 の面接で有った。 所長は、履歴書を一通り見て 達也に、「なぜ教習指導員に なりたいんですか?」と質問 してきた。達也は「教習指導 員か、それに携わる仕事をす るのが私の夢でした。その理 由は、親切丁寧で分かりやす い説明をしてくれた教習指導 員の方が忘れられず、私も何 時かは、あの方の様な指導員 になりたいと思っていたから です」と答えた。次に趣味は 、と聞かれ「囲碁です」と答 えたら、所長の顔が微笑み「 棋力はどのくらい」と聞かれ 「一応参段です」と答えた。 達也の心境とは裏腹に、所長 は囲碁が大好きだったので、 いつしか所長と達也は囲碁の 話で盛り上がり、そのお陰で 達也は、今迄抱えていた不安 や緊張がなくなり冷静に話す 事が出来た。 そして面接は順調に進んで行 き、良い感じで終了する事が 出来た。 採用の合否は、一週間後にな るとの事。 無事面接が終わった達也は、 自分の持てる限りの力を全部 出し切った感じで、ホットし て自宅に向かった。 達也は自宅に着き、ホットし ていると電話が鳴った。電話 に出てみると、相手は今日面 接を受けた所長からで有った 。 所長は「今日はお疲れ様でし た。採用する事が決まりまし たが、急な話ですが8月1日 から入社出来ますか?」と言 われた。 所長は、囲碁の話をしながら 達也の人間性や性格、態度な どを見ていたのである。 所長は、面接終了時点で、採 用と判断していた。 達也は一瞬「え、もう」と一 瞬戸惑ったが、直ぐ冷静さを 取り戻し「はい、大丈夫です 。有難うございます、宜しく お願い致します!」と答え、所 長から入社の詳細を聞き電話 を切った。 今日面接して、今日結果が来 るなんて信じられなかったが 、達也は嬉しくて嬉しくてた まらなかった。 「なせばなる!」と実感した 。 「最後まで諦めないで本当に 良かった!」と達也は思った。 その夜、達也は久しく連絡を 取っていなかった元妻に電話 をした。 達也は、会社を退職した経緯 から自動車教習所の採用まで の事を事細かく話した。 元妻は「良かったじゃない」 「昔からの夢だったもんね、 応援しているから頑張ってね 」と喜んでくれた。 達也は「ありがとう頑張るよ 」と言い、心の中で「必ず迎 えに行くから!」と思いながら 電話を切った。 達也の人生が大きく変わる一 日で有った。
第5章 完
第6章へ つづく