知人と話している際に、「今までに一番大変だったのは、どこの式場のどんな婚礼?」と聞かれまして。

記憶をたどりながら、「う~ん、やっぱり、あそこかなあ」と思い出した、昔の話をご紹介します。

 

そこは、まだ、レストランウェディングが流行っていた頃の「隠れ家的レストラン」というところでして。

 

まず、そのレストランに行くまでが大変でした。

 

「隠れ家的」というのをコンセプトにしたところだったため、お店のHPにはちゃんとした地図もなく、当時はスマホの地図アプリなんていう便利な機械はありませんし、おまけに、その地域は、道が複雑で・・・・・

 

「初めて行く人は絶対に迷う」という、本当に「隠れ家」でした。「徒歩8分」と聞いてましたが、道に迷って、25分ほどかかりました。

まあ、そこまではよくある話ですが。

 

大変だったのは、「集合写真の撮影」


ホテルや結婚式場では、そのためだけのスタジオスペースがあり、列を作るための段もあります。それ用の照明設備もあります。そのような大掛かりな設備があり、2~3人のスタッフが協力してこそ、きれいな集合写真が撮れるのです。

そういったスタジオ設備のない、本当の神社とか、レストランウェディングで集合写真を撮る場合、きちんと並べて、きっちり撮るには、ヒナ段を持って行かないといけません。これは、車を使って、大きな道具を持っていきます。当然、助手も必要ですから、「ちゃんとした集合写真を撮影する」場合は、「スナップ撮影」の範囲から外れます。集合写真をワンカット撮るだけでも、別料金で3万円とかいただかないと撮影できません。

 

なので、専用スタジオがない、「レストランウェディング」などでは、「大きな階段を利用する」とか「高いところに上って、上から下を見下ろして撮影できる場所がある」といったことであれば、集合写真を撮れますが、やはり、スタジオでカッチリ撮ったものとは違って、「ラフなものになる」「顔が隠れている人がいる」といった欠点もあります。完璧は無理です。

そういうわけで、当事務所では、「きっちりした集合写真は撮れません」「イスなどを使って撮影する場合は、お客様にイスを並べるのを手伝っていただくこともあります」としており、いわば、「無料サービスで撮りますが、完璧は無理です。セッティングや片付けのお手伝いもお願いします」という姿勢です。カメラマン1名で激安料金でやっているため、こうするしかないのです。

 

さて、そのレストランウェディングでのこと。「集合写真撮影」が予定に組まれていたので、レストランの入り口の階段を使うとか、レストラン内にイスを並べて撮るのだろうと、事前に予想していたのですが・・・・・

 

当日、現地に行って、レストランの人と打ち合わせしたら、あ~らまあ、超ビックリ。

「レストランの前の公道にイスとヒナ段を並べて、一時的に道路を封鎖して撮ります」

(普通、道路上で撮影するには警察への届出が必要です。まして、道路を封鎖してしまうなんて、絶対に無理です。)

 

「イスとヒナ段は当店で所有しているものを使用してください」

(「自分のところで所有しているなんてすごいなあ」と感心したのですが、保管している場所が、お店と離れた場所にある”倉庫”の中なんです。)

 

「イスやひな壇を倉庫から持ってくるのは、カメラマンさん一人でやってください。撮影後の後片付けも一人でお願いします。うちでは手伝いません」

(手伝ってくれないところなんて、初めてです。普通は、レストラン側のスタッフがセットして、カメラマンは人の並べ方を指示して、撮影するだけなんですが。)

というわけで大変なことになりました。

正直言って、「そんなことならうちでは無理です。助手はいないんですから、私一人ではできません。集合写真は無しにしましょう」と言いたかったんですが、今回のお客様はとてもいい人で、お客様のことを考えると、むげに断れません。

離れた倉庫から重いイスとひな壇を一人で持ってきました。当然、1回でもてる量ではありませんから、何度も何度も往復して運びます。

大変でした。

資材を持ってきましたが、それをすぐに並べることはできません。なんたって、「公道」ですから、公道上に置くことはできないのです。しばらくは道路の端に仮置きしておきます。

 

そのうえ、撮影場所となる道路には、そばに大きな木や建物があり、その影が路上にできてしまいます。集合写真のように、横に広がる大きなものを撮るのに、「一部は太陽があたっているが、一部は影になってしまう」という「光のムラ」は困ります。
均等になる場所を探して、「よし、ここで行こう」と決めたのですが、なにしろ「隠れ家的レストラン」のため、招待客もみなさん道に迷い、時間通りに到着できず、集合写真の撮影時間が変更になってしまいました。

最初に「ここならなんとかなる」と思った場所は、時間の経過のために太陽の位置も動き、影が発生してしまい、本番時に、あわてて、場所を変更しました。

さて、いざ本番となると、ひな壇をセットしたり、椅子を並べたりするわけですが、ここでも、レストランのスタッフは、そこに何人も立ち会っているのに、誰も手伝ってくれません。私一人で全部セットします。スタッフはぼーっと見てるだけ。

 

さて、椅子やひな壇のセットが終わったら、お客様たちをそこに誘導して並んでもらうわけですが、ここで、ここ特有の問題が。

 

「道路を完全に封鎖した状態」になっていますが、レストランスタッフが「封鎖係」になってくれるわけでもないため、その道路を車が通ろうとしたりするわけです。

「ブブブー」とクラクションが鳴り、私がその車のところに行って、ドライバーさんに頭を下げて、「すいません、迂回してもらえませんか?」と説得します。これが何台もあるのです。

 

 

これじゃ、お客様を並べることもできません。

幸い、レストランのスタッフではない、「メイクのスタッフさん」が私の窮状を見かねて、イスの座り方とか並びかたをお客様に指導してくれたので、助かりましたが、とにかく、一人ではしんどいです。

 

こういう大変な集合写真撮影を「2回」行ないました。

①「親族だけの集合写真」

②「友人知人との集合写真」

この2種類です。

ホテルなんかであれば、大きなスタジオがありますから、「全員を一度に撮影」ということも可能なんですが、ここでは「2回に分ける」しかないのです。

 

なんとかかんとか撮影を終えたあと、普通は、あとかたづけは会場のスタッフがやってくれるため、カメラマンがすぐ、スナップ写真撮影にとりかかれます。しかし、今回は、あとかたづけも私一人です。

 

「終わったらすぐに片付けてください」と言われてましたし、なにしろ公道上にイスやひな壇を置きっぱなしにするわけにはいかず、急いでかたづけようとしました。

 

しかし、もともと「お客様の到着が遅くなった」こともあり、そのうえ、「カメラマン一人で全部やらされる」という方式のために、この集合写真の撮影には時間がかかり、タイムスケジュールが押してしまいました。

集合写真撮影後、間髪いれずに、すぐに、披露宴が始まってしまったのです。


さらに悪いことに、椅子やひな壇を収納していた倉庫(お店からは離れています)に、戻そうとしたら、その倉庫の前には自動車が駐車していて、倉庫に入れません。
「うわ~、参ったなあ」と頭をかかえました。
イスを運びながら、「これでは、全部片付けていたら、間に合わない」と、判断し、片づけを中断し、道路の端っこに移動するだけにして、披露宴会場に戻りました。

そうしたら、カメラマンのことなどお構いなしに、すでに、披露宴が開始されており、新郎新婦はもう「メインテーブル」に座ってました。

つまり、「新郎新婦入場!」の場面は撮れなかったということです。(申し訳ないです)

 

その後、乾杯が終わって「歓談」となり、少し時間ができたときに、残りを片付けました。何度も往復して。

真冬でしたが、私だけ、汗だくだくでした。

 

とにかく、そのレストランのスタッフさん、手が空いている人はいっぱいいたんですが、誰一人、まったく手伝ってくれませんでした。

 

あまりの疲労困憊に、会場の隅っこでしゃがみこんで休んでいたら、そこの女性支配人に「みっともないです。ちゃんと立っていなさい!」と怒られました。

「あんたらが手伝わないからだろ!」とは言いませんでした。

 

出張での集合写真のセッティングは、学校写真の現場で慣れているので、そんなに苦ではないんですが、今回みたいに「完全に一人でやる」「場所が離れている」「時間をせかされる」というのは困ります。
誰かひとりだけでも手伝ってくれれば、楽だったんですが・・・

 

レストランとしては、なかなか良いお店で、写真もいいものが撮れましたが、とにかく、疲れました。

 

なので、このような非常識なお店に関しては、私のほうで自主的に「出入り禁止」とさせていただき、2度と行っておりません。

 

(婚礼撮影は2000組くらい経験がありますが、「公道を封鎖して集合写真」というのは、ここだけです。本当は「織田裕二さん」の「レイボーブリッジ」同様、封鎖できませんよ)