超高校級の才能の尖端で切り刻まれた小説の感想 | たったひとりの冴えない味方

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一次創作限定(主に小説)の同人サークルSometime Dropの書き手、しぐれ(あおいあきな)の不定期ブログ

「世界征服未遂常習犯ダンガンロンパ十神」を読了しましたので、若干ネタバレ混じりの感想文でも書こうと思います。

まず最初に、ダンガンロンパ十神を購入しようかどうか迷っている人に忠告しておきます。
売り文句として「ダンガンロンパを三島由紀夫賞作家がノベライズ」とかなんとか帯に書いてありますが、個人的にこの小説を読んだ読書好きの人間としては、
「ダンガンロンパが好きだから」
とか
「三島由紀夫賞作家ってなんか凄そうだから」
とか
「十神白夜が好きだから」
とかいう理由で購入して読むことはおすすめ出来ません。
これは断言できると思います。
この本を読む最低条件は
「佐藤友哉という作家がどういう作家なのか」
を知っておくべきだと思います。
佐藤友哉という人物がどういう小説を書いているのか。
それを弁えた上で、
その佐藤友哉が盛大に「やらかしてる」のを盛大に喜べたり、いつもどおり「クソッタレが!」と本を壁に叩きつけるだけの喜びを内包した憤怒を抱ける人じゃないとこの小説を楽しむことは出来ないと僕は思います。

僕はといえば、この小説を読了して第一に「やらかしたなー」って思いました。

それでは感想を書いていきます。
まだ「ダンガンロンパ十神」を読んでいない人や、些細なネタバレでも許せない人はここでブラウザバックをお願いします。







まず僕は「ダンガンロンパ」というメディアをあまり詳しく知りません。
詳しくいえば、アニメしか見てません。
それでも佐藤友哉が書いているということで、佐藤友哉がノベライズしたということで読んでみましたが、それが正解だったかもしれません。
この小説を構成する要素はダンガンロンパと鏡家サーガが4:6くらいの割合です。いや、ダンガンロンパの要素はもっと小さいかも知れません。
初瀬川研究所や祁答院財閥、挙句の果てには鏡家すら登場してしまいます。
佐藤友哉の鏡家サーガを読んでいる人ならば、この本の裏表紙に書かれているあらすじの「かわいそうな牛」というワードで察しがつくと思いますが、その通りです。
この本はダンガンロンパというメディアの世界観をいいとこ取りして好き勝手やらかした末に出来上がった完全なる「佐藤友哉の小説」だと思います。
超高校級の才能の持ち主であるダンガンロンパの魅力ある登場人物を佐藤友哉が取り込んで自身の持ち駒として支配した小説です。
結局彼は鏡家サーガを書きたいんだな。
そう思わざるを得ない内容でした。
読み応えとしては、彼の著作の中だと「鏡姉妹の飛ぶ教室」あたりが近いんじゃないでしょうか。

内容の詳細を少し語るなら、佐藤友哉おなじみの変な頭痛を覚える文章、文学にデコピンを食らわす感じのメタ発言、有名な作家やマイナーな作品からのパロディ台詞あたりが印象的でした。
化物語は知っていてもER3は知らない人はいっぱいいるでしょうし、九十九十九という名前くらいは知っていても日本探偵倶楽部は知らない人だっているかもしれません。
そんな感じの読書好きでもその趣向が偏った人しかわからないネタが散りばめられてます。
まあでも白夜行はメジャーだよね。

しかし、まあ、この作品。まだ上巻なんだよね。
まだ中下が残っているんだよね。
感想文ってのは基本的には物語を最後まで読んでから書くものだと勝手に思っている僕としては、正直なところこれ以上あまりこの作品に言及するとまた後でしっぺ返しくらいそうなので申し訳ないですけどあまりちゃんとした感想は書けません。申し訳ないです。

簡単にいえば、この小説は
佐藤友哉がダンガンロンパを武器の一つとして身につけた結果と言えるのかもしれません。

最後に言うことがあるとすれば、この作品。僕個人としては結構好きです。