株式会社マクロミル。
個人消費者にアンケートに答えてもらい、その情報を集計・分析して顧客企業に提供するビジネスモデル。アンケートに答えることへのインセンティブや分析を一部自動化するシステムなどにより、他に類を見ない地位を確立しています。
新聞各種記事の裏付けとなるデータ提供なども。


http://www.macromill.com/ir/data/pdf/release_20130808d.pdf

科目     前期     当期  単位:円
売上高    142億  171億
粗利益     70億   83億
営業利益    30億   38億
経常利益    29億   39億
当期純利益   15億   25億



<損益計算書=PL>

売上は前期比20%増、翌期も11%増収見込み。短信に記載の経営方針において、事業リスクを平成22年6月以降、変えていないことから、経営環境は変わらず成長市場であることが分かります。
粗利率が1.2%ポイント減少していますが、粗利率は48%台と高く、28億9,000万円の増収の半分近くの粗利益増益。販売費及び一般管理費(以下SGA)が4億8,000万円増加していますので、差引7億5,000万円の営業利益増益となりました。SGA増加要因は業務委託費、販売促進費の増加とあります。連結ベースで詳細は記載ありませんが、単体ベースでは広告宣伝費が5,000万円増加しています。
逆に、ポイント引当金の計算方法の変更により2億5,000万円の増益要因となっています。新システムによる見積もりの精度が向上したとのこと。今期は億単位でソフトウェア投資が行われていますが、その影響でしょう。なお、ソフトウェア投資額とBS上のソフトウェア金額との差が
2億ほどあるため、ソフトウェアの減価償却費が大きく、SGAの増加要因なっているでしょう。

営業外損益を見ると、受取配当金増加が増加しています。連結や持分法適用会社からの配当はPLに載らないため、それ以外の会社からの配当、つまり余剰資金を投資へ回していると推測されます。キャッシュは増加しているのに受取利息は減っていることから、今まで定期などの短期投資していたものを投資へ振り替えたものと考えられます。

今期は増益にも関わらず税金費用が前期よりも減っています。税効果会計の内訳をみると、繰越欠損金の存在がズレの主要因です。将来の回収可能性、つまり繰越欠損金を使う=利益が出ることが予想されれば、その資産性は認められますのでズレは生じません。逆に言うと、ズレがあるということは、マクロミルグループの中で繰越欠損金を持っている企業については、将来の収益性に疑問があるということを表します。ただこれは見積もりの域を超えませんので、マクロミルの考え方に依ります。これについては不自然さ・問題視はないと見てとれます。


直接損益計算書には表れませんが、自己株式5億1,000万円を売却したことで、売却益が出ています。この場合、「資本剰余金」項目が増加します。売却益は通常の営業過程ではなく、資本取引とみなされますので、直接BSに反映されるのです。これは「資本取引・損益取引区分の原則」と言います。
株価上昇に伴い、自己株からもうまく資金調達をしていることが分かります。


<貸借対照表=BS>
IT技術を通じて情報を商材とするソフトビジネスである企業の特徴で、固定資産が少なく、総資産に占める現預金の割合は43~45%と高くなっています。
次に売掛債権、買収や運用により投資有価証券やのれんが多くなっています。

負債は社債を株式へ転換していることで45%圧縮されています。なお、これにより資本金・資本剰余金が増加しています。また、モニターがアンケートに答えると溜まり、現金と交換できるポイントに対するモニタポイント引当金は今後出金が予想される貨幣性負債であり、相対的に金額が多いものの、現預金の11~13%に過ぎず、債務が重い水準とは言えません。

ほか、長期借入金を全て返済していますが、50億円のコミットメントライン契約を予定しており、資金需要に応じて柔軟に資金調達できる体制を整えています。現在は手許資金は潤沢であるため、今後借入が増えることがあるとすれば、大きな投資案件や体制変化の予兆かもしれません。

短信には50億円を上限とした自己株式の買い取り枠決議を予定しているとあり、株主への還元姿勢を見せています。
転換社債を株式化していることや、配当の増加を鑑みると、金融費用は下がり、資本コストが上がっていくことが予想されますので、資本コストの減少を見据えていると考えられるでしょう。


<CF=キャッシュフロー計算書>
キャッシュフローは営業CFプラス、投資CFマイナス、財務CFマイナスでフリーキャッシュフロー(営業CF引く投資CF)プラス、という理想型。営業過程でキャッシュを生み、ソフトウェアやグループ内再編に投資をし、債務の返済や配当での還元を行う文句のない流れです。

<まとめ>
高い粗利率、低い固定費、貨幣性資産の多い資産構成と、前に見たウェザーニューズに似ています。大きな設備を必要としないソフトビジネスの典型と言えるのかもしれません。
海外進出やグループ再編に意欲的で、アドバイザリー費用含めて投資が増えるでしょうが、現在の資金は潤沢で、裏付けとなる資金調達体制もあるため、さし当りは強気の姿勢が続くと見込まれます。
借入・転換社債、自己株式売却など資金調達に多様性があります。この有効性を保つには株価上昇が条件になるでしょうから、株価不振や将来性に陰りが見えたときにはリスクがあるでしょう。




曰はく、
「数字は過去の結晶、未来は行動の結晶。」

株式会社フジ・メディア・ホールディングス。
フジテレビ系列局9社と、音楽や映像コンテンツ、通販事業などを手掛ける、テレビメディアとしては日本最大手の企業です。


http://contents.xj-storage.jp/contents/46760/T/PDF-GENERAL/140120130510036962.pdf

科目     前期     当期  単位:円
売上高   5936億  6320億
粗利益   2101億  4153億
営業利益   332億   376億
経常利益   523億   472億
当期純利益  612億   313億



<損益計算書=PL>

増収減益となっています。
売上については、サンケイビルの連結子会社化による都市開発事業の売上増し分が主要因です。既存事業においては制作収入と、売上に占める割合が7%程度の広告収入を除き、減収となりました。とはいえ、売上の67~81%を占めるフジテレビ系列の放送事業は減収率1%にとどまり、大きな落ち込みは見えません。
放送事業はスポーツ大会などのイベントの有無と、スポンサーとなる企業の懐具合が収益に直結します。イベントの放送権取得と、以下の業界に注視。好調な業界は自動車・小売・医療・通信については減速傾向なし。不調と記載のあるアルコール、化粧品、外食は、アルコール・外食は上向きでしょうか。

利益については、連結子会社範囲及び持分法適用会社の増減による「のれん」の変動を除くと同水準と推測できます。
PLに載せる対象が変動する場合に売上や利益が変わったり、株式取得に伴う損益項目によって比較可能性が薄れる典型パターンですね。
いわゆる「連結対象の変更」と「のれん」です。そのうち、フジメディアホールディングスを教材に、「のれん」について学んでみましょう。

「のれん」とは企業買収など他社への資本投下時に発生し、被資本投下企業の本来持つ価値より高い金額を払った際に発生するものです。たとえば時価10億円の企業を15億円で買収すれば、5億円がのれんとなります。時価10億円の企業に15億円払うということは、現在表面化してはいない「今後の収益力」へのプレミアム(=上乗せ分)と考えられます。誰も、100円で買えるジュースと知りながら150円で買ったりはしません。将来的に150円の価値が生まれることを知っているからこそ高値を払います。
この「超過収益力」については、20年以内の合理的な期間で按分し費用化することで、超過収益力により獲得した収益と対応させます。

「負ののれん」はその逆で、時価を下回る金額で買収など資本投下した場合に計上されます。10億円の企業を8億円で買うと、2億円の「負ののれん」が発生します。時価は10億円だけれども、撤退費用や土地浄化費用など、今後表面化していないコストを見込んで時価を下回ることがあります。
負ののれんについては、期間按分はせず、一括して利益として認識します(平成21年4月開始事業年度より適用、それまではのれんと同等処理)。これが「負ののれん発生益」です。なお、持分法適用会社については投資損益として「営業外収益」に、子会社化については「特別利益」に分類します。

この時、「時価」とは何か?という議論が発生しますが、明確にコレ!というものがないのが事実。時価算定にはある程度の「見積もり」が入っているため、のれんにも恣意性はまぬがれないといえます。その点、価値に投下した資産をいずれかの形でPLに反映させなければならない一方、ルールに則って作られたPLが本当に正しいのか、という視点を忘れてはいけません。
蛇足ですが、国際会計基準ではのれんを均等償却しないため、のれん償却費部分だけ日本企業の利益が少なるなるということが日本企業にとって不利だ、という議論がありますね。

前期には当期純利益の半分を特別利益「負ののれん発生益」が計上されており、それがなくなった反動で減益となっていますが、営業利益ベースでは増益です。また特別損益を除いた当期純利益から、のれん発生益とのれん償却費を加減算すると8億円程度の減益となります。さらに「持分法適用会社に係る負ののれん発生益」が持分法投資損益に含まれているため、それも調整する必要があります。明細はないので細かく確認はできませんが、のれん系調整により49%の減益が実質的には虚像だと分かります。
つまり、のれんが絡む場合は調整して見てあげないと、実態を見誤ることがあるということですね。


<貸借対照表=BS>
流動資産は売掛金回収・有価証券減少により250億円減少した一方、その他流動負債が300億円減少するなど負債が400億円以上減少し、流動比率の改善がみられます。
キャッシュは有利子負債を下回るものの、キャッシュの約3倍の売掛金があり全て1年以内回収見込みに分類。売掛金回収期間が69日-77日となっています。

テレビ局を中心としたビジネスモデルにおいては、固定資産が多い資産形態となっています。スタジオは事業運営の安定性を考えると自前もしくはグループ内で保持することが前提となるためと思われます。
また、余剰資金の運用や、イベントや映像コンテンツ等のサービス提携を目的とした資本提携のための有価証券保有も多くなっています。自由売買とまではいかないまでも、貨幣性資産として換金性のあるものだと言えるでしょう。その原資は自己資本でほとんど賄えていますので安定性は高いと言えます。


<CF=キャッシュフロー計算書>
有価証券の売買で500億円前後の動きがあります。
当期は社債300億円償還があるものの、非現金収支調整後利益が100億円増加したことと、長期借入金増加でカバー。フリーキャッシュフローは2年連続でプラス、キャッシュ面での悪影響はなしと判断。


<まとめ>
のれんによって本業以外で変動は出ているものの、利益は同水準のまま推移しています。放送事業がマイナスとなるも、連結対象企業を増やすことで業績を保っています。テレビ離れ、スマホなどによる広告の多様化などにより本業のテレビ事業へのマイナス要因は引き続きありそう。
資本提携や固定資産取得に大規模な金銭が必要ですが、社債・借入に加えて流動性のある有価証券も手許にあるため資金調達可能性は高いと思われます。
どの企業にも言えますが、さしあたりの危険性はないものの、ビジネス環境は安泰とは言えません。ピンポイントで広告出すモデルが流行していますが、逆に一気に広い潜在顧客にリーチできる力はテレビならでは。広く人口にリーチできること、人が集まる好立地にある事業設備などの経営資源を鑑みると、新規事業というよりは、既存事業と他社自社問わずどのサービスに資本を投下していくかに注視ですね。



曰はく、
「数字は過去の、一定のルールにより出された表面にすぎない。
未来、環境、感情を見よ。」
株式会社パソナグループ。
人材派遣業・人材紹介業を始め、
「人生のあらゆる場面をプロデュースする」ことを使命とし、
「人に関わるあらゆるインフラ」の構築を目指す企業です。
5月決算の会社を探していたら、元・同業の会社があったので
分析してみました。



http://www.pasonagroup.co.jp/news/public/20130712kessan_2.pdf


科目     前期     当期  単位:円
売上高   1815億  2077億
粗利益    338億   401億
営業利益    20億    32億
経常利益    21億    32億
当期純利益    0億     6億



<損益計算書=PL>

主に4つの業態グループによる開示を行っています。
すなわち、人材派遣や人材紹介、業務請負のエキスパート・インソーシンググループ、再就職支援のアウトプレースメントグループ、主に福利厚生アウトソーシングを請けるアウトソシンググループです。
ほか、保育関連事業や地方活性化などの事業を手掛けるライフソリューショングループがあります。
ライフソリューショングループを除き、増収増益となりました。そのグループも増収ではあり、赤字の原因は地域活性化事業への初期投資等によるものです。
ただしグループ売上高は全社売上高の2%に満たず、現状の重要性は乏しいと言えます。

短信に「派遣法の改正に伴い、人材派遣に関する企業からの発注は一部の大手事業者に集約される傾向にあります」とあります。どのような業界でも、法改正には左右されるもの。2012年12月の派遣法改正の影響も当然に受けるでしょう。
事業者が集約される理由の詳細は書かれていないものの、派遣法の複雑化による企業側の管理煩雑化や、派遣社員の雇用義務リスク増などを鑑みると、法に則ったスタッフや派遣ポジションの管理を一元化することによる業務簡素化・リスク低減が背景でしょうか。
当社は売上高のシェアが2~5位に入っていて(各調査の業界定義により異なる)、この「一部の大手事業者」に含まれると考えられるため、良い影響が出てくるとの読みに基づき、来期の増収を見込んでいるものと思います。

また、人材派遣・人材紹介・研修等は企業の業績や景況にダイレクトに左右されます。遅行性・先行性はありません。リーマンショックの時が顕著でした。景気が良い時はヒトへの投資が活発になりますのですぐにでもプラスに働いてくる可能性は大きいでしょう。

ここと補完関係にあるのが再就職支援事業。
企業の雇用調整に伴うサービス提供は、景気の回復による雇用調整の減少に伴い需要が低下する可能性があります。二つのサービスでどのような景気においても企業へのサービス提供及び収益確保のポートフォリオを組んでいるのが強みと言えます。
なお再就職支援は景気回復に伴い、翌期は減収見込みです。

また、「派遣からインソーシング(委託)への切り替えも増加」しているとのこと。
派遣社員の派遣期間制限や雇用の義務化、日雇派遣の禁止など派遣という形態が制限されてきていることから、業務委託を選択している企業が増加しているのでしょう。
既存の販路パイプが多く請負受注につながっていると見るのが自然。
請負は範囲の経済(=資源やノウハウなどを広く共有し、効率的になること)が働くのもプラス。

これらを踏まえると、派遣・請負・再就職支援の収益獲得フローが構築できていることが非常に良くわかります。法律に影響を請けますが、いずれも増収・増益と好調。
原価率・営業利益率も改善。
マイクロソフトやセールスフォースドットコムと提携して次世代人材教育への投資をしている点も評価対象。

大きくみると派遣・再就職支援・アウトソーシング3グループを「HRソリューション」事業としています。
リスク管理の一つとして、その他事業であるライフソリューション事業グループも伸ばしていくと考えるのが妥当ですが、当期は前期比約5%の成長にとどまりました。
翌期は37%の成長見込みですので、ここの達成度合が長期視野での注目点です。


<貸借対照表=BS>

大阪拠点への投資や借入返済などに伴いキャッシュが20億減少したものの、流動比率(=流動資産と流動負債の比率)140~150%、当座比率90~100%(=現金預金、売上債権、有価証券の合計が流動負債に占める割合)は安全水準。
加えて、固定資産に計上されている投資有価証券についても、投資有価証券のうちグループ内株式は約8億円なので、残りから持ち合い株を除いても数億円は流動的なものだと推測されます。
土地や建物が増加していますが、これは大阪に新しく拠点を開設したもの。

少し気にあるのは利益剰余金。配当が3年連続で1000円/株となっていて、来期も同額の予定です(一株あたり10円となっていますが、株式分割で1株を100株にするため実質同じ)。
配当性向(=当期純利益に対する配当の割合)が平成22年5月期から88%、90%、1269%、61%と非常に高く、来期も78%見込み。3年前から8000万円程度しか利益が留保されていません。
意味もなく留保するものではありませんが、自己資本比率30%未満であること、借入などの金策を採っていること、社長と近親者が50%弱の株式を保有していることは留意されたいところ。


<CF=キャッシュフロー計算書>
営業キャッシュフローで前期34億円、当期58億円のプラスとなり安泰。
投資CFにおいて前期は連結子会社化のための株式取得37億円があり、それに伴って長期借入を起こしています。当期は25億円の有形固定資産投資があり、キャッシュ減少。これも見越した前期の借入だったとも考えられ、問題はありません。

ただし一つ、「セール・アンド・リースバックによる収入」として約10億円の収入があります。これはPLやBSだけでは分からず、CFまでしっかり見ないと財政状態が分からない事例です。
この取引は、自社の資産を売却し、それをリースして今まで同様使い続けるというものです。売却に伴いまとまった収入が得られ、リース料として分割返済していく一種の資金調達。
会計上、昔はBSから資産を減らせ、ROA(総資産に対する利益の割合で、経営効率を測る指標の一つ)が良くなるメリットがありましたが、リース会計の変更によりそのメリットはなくなりました。となると、何故セールアンドリースバックを選択したのかが気になります。
リース会社からの条件が良かったか、資金調達パイプを増やしておく意図でしょうか。コミットメントライン(≒借入可能枠)があるため銀行から借りる余地もあったはず。メインバンクからの印象はどうか。


<まとめ>
業績・見通しともに追い風も、今後も法改正による影響リスクは免れない。
長期で見るともう一つの花形事業が求められるところ。
設備・M&Aへの投資と、それを種々の資金調達で賄えていることは評価も、
利益が内部留保を通じて再投資に回っていないのは課題かと。



曰はく、
「数字は過去の、一定のルールにより出された表面にすぎない。
未来、環境、感情を見よ。」