デコと金魚とベースボール

デコと金魚とベースボール

日常生活(主に愛するオリックスバファローズ)などなどを、ユルくつづるブログです。めったに熱くなりませんが、シーズン中は高温注意報発令です!

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(これは…何か始まるのか?)

無表情な川端と、常ににこやかな東明。何も知らなければ、ただ愛想の悪い司書と愛想の良い学生が向かい合っているだけなのだが…

「川端さん。この本、すごく参考になりました!ありがとうございました~。
やはり、学校図書館の事は川端さんにお聴きするのがベストですね」

変わらず無表情のまま本を受け取ると、川端はバーコードをピッと通した。

「僕が知りたかった事がピンポイントで載ってるページを教えていただいて、時間の節約にもなるから助かります。
今月中に報告書の原稿仕上げないといけないんで、またこちらに入り浸りますね!
あと、先日の…」
東明が言い終わる前に、川端はA4の用紙をカウンターに置いた。

「ありがとうございます!さすが川端さん。短時間で全部調べていただいたんですね~」

見ると、そこには本のタイトルと棚番号、おそらく東明が読みたいであろう内容の記されたページと行が書き込まれている。全て考古学関係の書籍だ。受け取った東明は、また砂を撒き散らしながら書架の列へと消えて行った。

「東明くんは川端さんを検索パソコン代わりにしてるんですよ。
そもそもは、東明くんに尋ねられた書籍をまだチェックし切れてなくて、何気なく『知らないんですか~』と言われたのが始まりなんですよ…」

かなり悔しかったのだろう。川端はそれ以降、考古学関係の書籍に関しては念入りに内容をチェックするようになった。すると、東明はそれを感謝し、以来川端を全面的に信頼して図書館にやって来る様になったという。

「川端さんは更に本に詳しくなり、東明くんもさらに研究に励める。
それって、お互いにとってプラスじゃ…」
比嘉の質問に、原は黙って首を振った。

「戦争の被害を被るのは我々なんです!ほら…」

見ると、カウンターからは川端の姿が消えている。原が事務所を指差すので、そっと近づくと、何やらコツ、コツっという音がする。恐る恐る覗くと…

「…何やってるんですか、川端さん?」

川端は、無心にけん玉をしていた。

「川端さん、昔小学校でけん玉チャンピオンになるくらいすごかったんですよ。
今も、イライラするとけん玉で落ち着かせてるんです。あれがあと1時間は続きますから…
その間は、何があっても一切仕事しないんです。
本当は東明くんと仲良くしたいのに、川端さんの中の何かがそれを認めないんでしょうね。館内汚すし煩いけど、研究者の卵としては非常に優秀な彼を認めたい。けど、自分の理想とするものからはかけ離れてるから認めたくない。でも彼は自分を慕って来る…
そのジレンマでどうしようもなくなったら、ああやって気分転換するんですよ」

邪魔したら怖いから、と原に促され、比嘉はカウンターに戻った。東明は席に座り、川端が探してくれたであろう本をめくり、何やら熱心にノートに書き留めている。にこやかな表情は変わらないが、真剣な眼差しだ。

「この状況を全て上手く仕切ってくれてたのが土谷さんなんですよ。
比嘉さんにいきなりとは言いませんけど、まぁ、慣れて下さい…」

「はぁ…」

とりあえず、しばらく川端に声をかけてはいけない、ということだけ理解はできた。

それからしばらく、比嘉も原も日常業務に戻り、川端の事も東明の事も忘れていた。突然、着メロらしきものがけたたましく鳴った。

「?」

東明がカバンの中を探っているが、中がくちゃくちゃなのだろう。なかなか出てこない。
しかも音楽はかなり賑やかなリズムなので、館内に響き渡っている。
どうしたものかと比嘉が立とうとすると、奥からサッと川端が現れ、東明の横に立った。
ちょうどスマホが見つかり、ホッとした表情で東明はボタンを押した。

「…音」
川端がポツリとつぶやいた。

「あ~すいません。千代崎市の文化財課の海田さんからのメールで…」

東明はニコニコしながら画面をスクロールしていたが、すぐに指が止まると表情もそのまま固まり、しばらく静止した後、

「しまった…」

と叫び、そのまま机に突っ伏した。

続く