息子と料理と犬とゲームと時々酔っ払い -385ページ目

永眠

入院して、3ヵ月。

その日は、なぜだか、姉は妹を連れ病室に入ってきた。久しぶりの家族団欒…。
って言っても、母は寝ているだけなのだが…。



静かに時が過ぎ、20時をまわったところで、母は逝ってしまった。


家族団欒の中で、苦しむ事なく、眠るように…。


享年48歳。


あれから、十数年。
私達は強く逞しく生きてる。

癌と闘うことすらもできない。

婦長さんの言葉がずっと、頭の中でグルグル回っていた。


かなり、精神的に参っていた。けれども、残された時間はあと僅かしかない。


親孝行していない自分、動けなくなっていく母。

無力な自分が情けなく、悔しさが押し寄せる。



何度、眠っている母の頬に触れ涙を流しただろうか…。


もう、治療というよりは痛み止めだけで、ただその時が来るのを待つしかなかった。

癌と闘うこと。

母は個室に移ってから、まるで話が通じなくなった。


痛み止めのモルヒネ…。

幻覚が見えるのか、自分の横に、三女がいると言う。


妹はまだ、小学生でその日は学校に行っている。


年が離れた末っ子だったからか、母は一番気がかりだったようだ。

私自身がまだまだ幼く、話を合わせれば良かったのか…。

しかし、現実逃避したいが為なのか必死に母のその言葉を否定した。


そんな日々を繰り返していた時、婦長さんに呼ばれた。


姉はまだ仕事で私1人で、話を聞きに行った。



「よくよく検査したら、骨全体に転移が広がっているの。もう何ヶ月っていう余命じゃない。その日1日1日が山ですね…。」


呆然とした。レントゲン写真を見たら、素人目でもわかるくらい、黒い斑点が骨全体に広がっていたのだ。


そんなある日、姉と付き添いを交代して家に帰った時、妹が言った。目に涙をいっぱいためて、「お母さん、退院出来るよね、お姉ちゃん」


まだ、小学生なのに、この子は父に続き母も失うことになるのかと思ったら、ただ抱きしめて、泣いてしまった。

妹には悟られまいと声を殺して、泣いた。