Vini d'Italia 1989 Gambero Rosso Vol. 34
Distillati&Liquori di Gualtiero Marchesi
Francis Darroze-Bas Armagnac 1956 Selection des freres Troisgros
今回はマルケージのワゴンからハードリカー系のご紹介。Bas Armagnacです。
私の年齢ぐらいのレストラン業界従事者では、古典的な料理を出すロックフォールの店として有名なDarroze。今は一族がパリとロンドンに進出し、現代的な料理を展開しているレストランとして有名です。
彼らが事業拡充前のロックフォールで営んでいたもう一つの業態が、実は今回ご紹介するBas Armagnacの製造・販売でした。彼の地のレストランで使う食後酒を吟味している最中、この液体に魅せられ、Bas Armagnacを取り扱う会社を設立した事が最初です。
当時から老舗レストランとしての顔も利用し、当地方を含む数多くの有名レストランのハウスBas Armagnacを製造・販売しつつ、小さいBas Armagnacドメーヌに足を運んでは彼らの作品を商品化する事に成功しました。その中の一本が、今回ご紹介するBas Armagnac『Troisgros』です。現在は移転していますが、当時はロアンヌを代表する名店として有名だった『Troisgoros』。マルケージは1970年代にここで働きます。予てからフランスの食文化に心惹かれていたマルケージは、ミラノで彼の名前を付けた一件目の店舗をオープンし、イタリア初のミシュラン3つ星店となった後に、食品輸入会社も設け、様々な品物をフランスから輸入する事も可能とします。その一つがこのトロワグロのハウスBas Armagnacだったという訳です。
今回ご紹介の1956年となると、私がエルブスコのマルケージで取り扱っていた頃で既に40年熟成。マルケージはこれらをミラノ時代に輸入し、1992~1993年のミラノからFranciacortaへの引越し時に共に移送しました。これらをいつ何百本購入したのかは定かでありませんが、私の知る限りでは1999年にもマルケージ地下セラーで複数本眠っている状態でした。
原酒は何か、何年間の樽熟成なのか、Darroze取り扱いのどのBas Armagnacドメーヌの物なのかは全く分かりませんが、とにかく綺麗に角が取れていて、飲み易さはこの上無かった。他にも多数のCognacやBas Armagnacを取り扱いしましたが、滑らかさではこれがダントツでした。特にシガーと合わせるとこれが綺麗に甘い液体に変化し、シガーと液体の薫りが口内で合致し、しばし陶然となります。特に合わせやすかったのがCohibaのSigloV。柔らかくも味わい深いSigloVとその喫煙時間の長さがBas Armagnacの円熟味と、得も言われぬ相乗効果を発揮して最高でした。つくづくCohibaとは美味いシガーだと思わせ、熟成したBas Armagnacの底力を知ったという事です。Grappaとは異なるこの液体文化を羨ましく思い、日本では絶対に市販されていないであろうこのボトルは、私がマルケージを退社し日本へ帰る時に、記念の品としてマルケージから頂戴した一本であるという事を記します。
もうすっかり飲んでしまいました。というか、お客様に振る舞ってしまいました。トロワグロは三國シェフの働いていた場所だと、私が帰国後に働いたミクニナゴヤでもこのBas Armagnacを持ち込んでお客様に振る舞っていたので、当時のミクニナゴヤのゲストの中には私からご紹介されてお召し上がりになった方もいらっしゃるかな?
そうそうミクニナゴヤ。帰国後も何年間かはシガーをばかばかと吸っていた私。今ほど喫煙に関しての縛りも無く、ミクニナゴヤが位置する名古屋マリオットホテルの52階のバックヤード廊下で、休憩時間にシガーを吸いまくり。もうもうとしたその煙で、しょっちゅう業務用エレベーター緊急停止させ、警備員に大目玉を食らっていましたっけ。
この項 了。