テヌータ サン グイド:サッシカイア 1984 vol.2 | 古きイタリアワインの魅力を読み解く

古きイタリアワインの魅力を読み解く

イタリアンワインガイド ガンベロ・ロッソ 1988-1989
イタリアワイン界に多大な影響を与えるガンベロ・ロッソ Gambero Rossoですが、この初期(1988や1989当時)のレアなイタリアワインと古酒の数々を、掘り下げて解説します。

Vini d'Italia 1989 Gambero Rosso Vol.27

Tenuta San Guido-Sassicaia1984 その2

 

Sassicaiaの魅力とは何か?

ワインとしての構成力の強さはGambero Rosso1988 でご紹介した通りです。適応力の高いCSとCFのみでの構成。完熟が難しいSVや、昨今の異常気象に適応できなくなったMeは使用せず。CS&CFの高い取れ高=値段の安定。これらは魅力の一部です。

他にも様々なご意見を伺いました。星のマーク。ラベルデザイン。キャップシールの紫加減。格好良い。名前が発音しやすく覚えやすい。オフヴィンテージの外れ感が無い。長い経年変化に耐える。赤ワインしか生産しないという職人らしい矜持。出自は自家消費用=Vino da Tavolaというアウトロー=インディ出身。何もない土地で始まり天下を取ったという下克上感。などなど。これらが全部ひっくるめられて『イタリアらしい』という魅力を構成しているのでしょうか。

しかし、Sassicaiaは内省的で優雅で、決して爆発的で濃密ではありません。昔も今も変わらず謎めいていて、あまり自分から語らない性格は変わっていませんね、時間が立たないとなかなか話してくれない。その時間とは経年変化の時間と抜栓からの時間の両方共に。

GuidalbertoやLe Difeseの話を書いていませんが、『イタリアらしさ』に溢れているのは、むしろこの2種の方でしょう。現在はこの3種、更にはグラッパやオリーブオイル、(相変わらず)競走馬、カンティーナ近辺のイメージと共に『イタリアらしい』という事なのでしょうね。

 

内省的なSassicaiaを象徴する様な話を最後に一つだけ。

謎に包まれ、公式発表の無いSassicaia販売初年度1968とその前年・自家消費用1967について。

Sebastiano RosaがGiacomo Tachisから聞いた話だと前置きしながら、とあるインタビューで答えています。

・1968は65、66、67のバレルセレクションと68の収穫ワイン全部を加えたマルチヴィンテージだった。

・1967は1968用のバレルセレクションを行った後、残りのワインを瓶詰したもの。

・1967はToscanaの良年で質の良いワインが沢山生産された。それを基に来年リリース予定の1968と今年の1967の内容を三者(先代侯爵、Antinori、Tachis)で協議して決めた。

1968とヴィンテージ表記されているボトルが存在しますが、私は初年度の販売当時からそのラベルデザインだったとは思えず、不思議に思っていました(英語表記バージョンまで有り)。当時はもっと簡素なラベルだったと思え、時代背景、更に販売初年度となる初物にここまで贅沢な金色使用のラベルとは、ちょっと不釣り合いと考えていましたが、後年にラベル印刷し、その時に現行デザインのラベルを使った、と考えればまずまず納得できます。ま、所詮、法規制の無いVino da Tavola、本来ならヴィンテージ表記するだけも違反対象、更に当事者は全てご逝去された、そんな状態での伝説の一つです。

こんな話が合っても、それが真実でも真実で無くても、良いではないですか。

 

ここまで有名になりながらも、なかなか身元が分からないSassicaia。特に皆が語らない黎明期に関しては、まだまだ裏話がありますよ。怪しいなあ、でもこの感じが『イタリアらしい』ですね。

続きはまたいつか。私がブログを続けていれば、Vini d’Italia1990、TreBicchieri受賞の『Sassicaia1985』紹介時にお書きします。

 

この項 了。