スピネッタ:モスカート ブリッコ クアリア 1987 その2 | 古きイタリアワインの魅力を読み解く

古きイタリアワインの魅力を読み解く

イタリアンワインガイド ガンベロ・ロッソ 1988-1989
イタリアワイン界に多大な影響を与えるガンベロ・ロッソ Gambero Rossoですが、この初期(1988や1989当時)のレアなイタリアワインと古酒の数々を、掘り下げて解説します。

Vini d'Italia 1989 Gambero Rosso Vol.05

Az.Agr.Rivetti(La Spinetta)-Moscato d’Asti Bricco Quaglia 1987 その2

 

Rivetti-La Spinettaの年表です。

1977:Giuseppe&Lidia Rivetti夫妻がLa SpinettaをCastagnole Lanzeに設立

1978:Moscatoを生産。なお、イタリアで初めてとなるクリュMoscatoを販売する。

1985:創業して初めての赤ワインBarbera Cà di Pianを造る。

1989:Pinを造る。

1995:Barbaresco Gallinaを造る。

1996:Barbaresco Starderi、Barbera d'Alba Gallinaを造る。

1997:Barbaresco Valeiranoを造る。

1998:Barbera d'Asti Superioreを造る。

2000:Barolo地区に8hの畑を購入し、一族念願のBarolo Campéを造る。

2001:Toscanaに65hの畑を購入し、SangioveseでSezzanaを造る。

2003:Barolo地区に醸造所Campéを造る。

2007:Toscanaに醸造所Casanovaを造る。La Spinetta設立30周年記念。

2008:Castagnole Lanzeの倉庫を拡張、新オフィスとテイスティングルームを造る。

2009:クリュ耕作用の馬二頭を購入する。One Liter Clubを創立する。

2010:ToscanaでVermentino の2009年を生産。BIO認証を得る為の作業を開始する。

2011:Cantine Contrattoを購入、metodo classicoスパークリングワインの生産を開始する。

 

個人的な意見ですが、La Spinettaに関しては、未だにBarolo,BarbarescoよりもMoscatoを高く評価しています。ワイン界の中でLa Spinettaならではの存在感を示しているのは、赤ワインよりもMoscatoの2クリュのほうだと感じるのです。

無論、彼らの赤ワイン生産に対する真面目な努力が報われていないなどと申しているのではありません。未だにMoscato界ではこの2クリュは圧倒的な存在であり続け、比類ない出来の高みにいる、という事です。皆さんご存知の通りLa SpinettaのMoscatoは熟成しても美味い。なかなかそんなMoscato d’Astiは無いよね、という事です。やはり経験の積み重ねに由来する安定感は抜群ですね。Barberaは安定したがBarbaresco&Baroloはあと少し、というところでしょう。

 

但し、彼らRivetti一族の念願はPiemonteで優良ワイン生産者として名を挙げる事、更にBarbarescoを経てBaroloを生産する事でした。会社を興した当時、資金源とする為に栽培を開始したのが、生産・販売が短期で可能だったMoscatoだったのであり、資金を得た後に赤ワインの生産・販売を行い、更に1867年創業のContrattoを購入するまでに成長します。しかもContrattoの地下セラー(地下32m、5,000平方メートル)はLe Cattedrali Sotterranee di Canelli(カネッリの地下大聖堂)としてピエモンテのワイン造りの歴史と併せて、ユネスコの世界遺産に登録されました。

 

先祖代々の土地を持たず、それに縛られない彼らの考え方は昨今のベンチャー企業にも似ています。母体となるMoscatoとBarberaを中心に売れ筋且つ高品質ワインを生産、収入を投資。形になった他畑や他生産者を購入・買収しつつ事業拡大。自由で新しい考え方と『畑仕事一番大事』で古い考え方が上手く融和されましたね。

赤ワインの生産・他の買収も大いに結構。但し、今後も美味いMoscatoの生産も是非よろしくお願いします。

 

この項 了。