真説ミリアムの魔術書・武術家たちの誇り (THE REAL FIGHTERS)  -20ページ目

ターシルVSサムソン・2 記憶の封印


篝火がいつの間に・・・・。




しばらく意識がぼんやりしたと思ったら・・・・そんなことを思うサムソンだったが。



「どうした。何か考えてるのか」


ターシルの声は腹に当て身のような拳を喰らったと思わせる、「力」のようなものがある。


不可思議な力・・・「気」。そうか、それもある。しかし、「気」、それを使うのは誰だったか。


ぼんやりとした空気。


緊迫するはずのこの闘技場で、サムソンはターシルという驚くほどの(それはサムソンすら脅威を感じる)威圧感と存在感を発する男との一戦において、まったく集中ができないのだ。


危険などと生易しいことは言えない。油断のあとにくるのは敗北であり死を意味する。


サムソンはしどろもどろに喋りだす。途中からは矢継ぎ早に単語を連ねただけの、それは誰にとはいわない問いかけとなる。


「わからん・・・俺にはあいつが誰だったのか。ここで闘った、俺たちは。いいや、俺たちって? あいつはたぶんきっと女だそのはずだ。だが、だが、思い出せない。わからない」


背筋に冷たい感触。


いつの間にか全身から汗が出ている。


雫となった汗は額を伝い、首筋も背中も、筋肉の見事な隆起を伝わって、落ちる。



地面に落ちた一滴が石畳を色濃く滲ませた瞬間、ターシルの姿がサムソンの視界から消え、鋭い痛みと共に再び目の前に現れた。

至近距離でサムソンの腹部を捕らえるターシルの拳。


巨体からは想像もできない素早さ。


・・・・・・あの少女は誰だ。きっと俺は愛していた。なのに思い出せない・・・・。


痛みよりもっと深刻なこと。


自分を支える記憶。


・・・・・記憶。

なぜ思い出せない。



「サムソン、お前は最初からいなかったんだ。そうだ。記憶なんかないんだよ、最初から。それにお前は思ったより移り気なんだな。女たちはそんな奴を許さんだろう」


「・・・女?」


「とにかくお前に、過去を慈しむことは許されない。何もわからない、自分は誰だかわからないまま消えるんだ。死ぬんじゃない、消える。元の”無”に戻る。繰り返す。最初からいないんだよ、お前は



・・・・どういうことなんだ・・・・。


篝火が焦がす空をかつても見たんだ、俺は。


でも・・・・思い出せない。誰のことも。








あら また独り言ですか?

“いざというとき自分を裏切るのは自分だが、

それは自分の知らなかったほんとの自分”



暴れたがってるのは誰かしら?



閑話休題:改造中

ご主人は肉体改造中です。


いたって元気です。


ただただ体を鍛えております・・・・・・。


ターシルが怒りますよ。




こんなところで修行してるイメージ。


実際のところご主人は本ばっかり読む反面、筋肉をいかにして増やすか、プロテインを飲みながら考え、ジムのフリーウェイトのスペースでトレーニングしながらいろんなこと考えている女で、いまお世話になっているお仕事の場所でも、


「あなた何者?」(←格闘技経験が多すぎて)


と言われています。現在はそれが吉とでているので安心していますが??


どこかで改造後の画像でも出しなさい、もっと体を絞る気になれるから。



語り:ゴルド


「ちょっと待っててね!」


て、ええ??





ターシルVSサムソン 消される存在

 しばらくは自分の身に何が起こったのかわからなかった。


 いつかサナと闘った場所にいる。


 サムソンは突然、リリスやかつては愛していたであろう少女のことが、頭の中をぐるぐると回ることに気づいた。


 いま愛しているのはリリスだが、その前にいた少女のことは名前も思い出せないそれにしても今更どうしてそんなことを思い、そして闘技場にいるのか? サナがいるのか。


 

 闘技場は半分が損壊した状態であのときのまま残っている。


 

 あの勝負のあと言った。まさしく朝がきて太陽が眩しかった。

 「朝だよ」


 そう言った。サナが結果として自分に勝たせてくれたとき、泣きながら駆け寄ってきたあの少女。


 誰なのか? リリスではないのか? それなら・・・・・



 「死んだんだろう。モンスターに出会ってそのまま岩に打ちつけられたらしい。可哀想だよな」


 声は背後からした。太くて力のある、そんな声はターシルそのものを見事に現していた。


 サムソンはこのリースロットで初めて自分よりも大きな人間を見た。


 

 浅黒い肌に筋肉の束のような腕。目はわざと充血させているのだろう真っ赤だ。それなのに顔立ちそのものは優しい男だった。


 そこが怖い。見た目というのはその人間の八割を教えてくれる。

 

 体はその人間が少なくともここ数ヶ月、どんな生活をしてきたかを示すものだ。だらだらと生きていい加減に食事をしてきたのなら、だらしない体つきになる。目にもまったく説得力を感じられない。


 ターシルはこれまで生きてきて、気を抜くとかそんなことがなかったのではないかと思わせる空気を全身から出している男だった。


 間違いなく強い。



 しかし。


 サムソンにはわからない。


 いまここでこれから自分はまた闘わなくてはならないのか。

 なぜ?


 サナとの勝負を終わったではないか・・・・あの少女は?


 ・・・・・・。


 みんなどこへ? 自分はどこへ?



 軽く混乱を覚えたときにサムソンはターシルの声をもう一度聞いた。



 「今日はちゃんと朝陽を見たか? もう永遠に見られなくなるぞ」


 サナとの勝負のときのようだ。闘技場に夜がきて、篝火が、今夜も月夜を照らすのだ。


 




やることはやってみるもの

動いてくれるのね、ターシル。


むかつく(??)サムソンを消してね。



サナはわたしが消す。






最強とかそんなことは最初からどうでもいいんです。


戦って勝った奴がたまたまそのとき最強なんて呼ばれるだけ。



自分なんてのも人の意識にあって存在するもので。


何しても考えても、自分ひとりじゃ、心は世界にたったひとりと変わらない。

それは結局どこまで走って行って誰かを呼んでも、こだまもかえってこない怖さです。


千を超える人がそこにいても、心はひとり。本当に怖いのは集団の中で感じる孤独。


そんなところで勝って楽しいか。


いやだね。



お釈迦様の手のひらで驕るのはサムソンとサナ。


わたしの代わりに怒ってやるといったサナ。

 

いいかげん、わたしの中から消えて。