1時間の格闘の末、

虫かごには8匹の甲虫が捕獲されていた。

帰途に向かう。

自宅近くの農道にさしかかった。

少し開いた車窓から蛙の輪唱が聞こえる。

誘われるようにクルマを止めた。

暗闇の寂寥感を打ち消す響きが耳にやさしい。

空を見上げると、天の川が流れていた。

星空は時間の海とも言えます。

君が今、見ている星はそこにもうないかもしれない。

と、10歳の頃に聞いた担任の話を思い出した。

不意に、天の川を点滅しながらまたぐ星を見つけた。

よく見ると、星ではなく蛍だった。

あの夜、ここで50匹近く捕獲したことがある。

今、確認できる点滅は2つ。

星空を時間の海と呼ぶならば、野道は時間の川に等しい。

蛍の姿は、40年前と何ひとつ変わっていない。




PS.
エルニーニョ現象の重なる梅雨の影響か、こちらも天気が不安定で蝉も蛍も、羽化が遅れているのではないかと錯覚する。自宅から国道421号線を5キロほど遡ると、榎原という里があり、その縦にのびる集落の真ん中を縫うように、川が流れている。川幅が5m前後の小さな川。山に近くなると沢、と呼ぶ方が正確な水の汚染度の低いその場所に、今の季節の20時以降に、数えきれない蛍の点滅が覆う。地元の人々が互い違いに訪れては、10分ほど蛍のイルミネーションを堪能する。が、今年に入ってから、まだ蛍にはお目にかかれていない。昨日も、家族で行けばよかったが、中1になった息子のスケジュール(日曜であってもソフトクラブの昼練習、それに押されてのピアノ、宿題、復習、予習を几帳面にこなすため)が空かないので、また来週ということになった。蛍の沢には、1年に1度決められた季節に決められた場所に訪れるという、ただそれだけのことなのに、来るたびに1年前がつい1ケ月前のような時の早すぎる流れを思う。加齢もせいもあろう。息子が2歳の頃から来ているから、今度で10度目になる。なんて月日は残酷なのだろう。







●ちょうど5年前の晩秋から初冬にかけ、書いていながらアップし忘れていた散文が数十本、古い控えフォルダから先ほど発見。時節に沿って、その時折の心象を成り行きに任せて綴ったショートストーリーのよう(こんなの書いていた事も先ほどまで忘れていた)。デフォルメを一切していないので、お見苦しくご不明な点があろうかと存じますが、どうかご海容ください。 ではまた後日、別の散文をアップします。





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