いわし雲が私を誘う日。
というタイトルでブログを書こうと思った。
母の病床に長い間向かっていた後だったので、
空は透明な草原を思わせた。
学生の頃、雲について研究したことがあった。
研究といっても夏休みの自由研究で、
単位時間内に移り変わる雲の形状変化の
定点観測するという稚拙なものだった。
まだデジカメはなく、
36枚フィルムに1日6点づつ押さえ
30日分を取りためた。
金魚、猿、豚、猛禽類を思わせる
鳥、きのこ、自動車、仏像。
それぞれを見たままに名称と観測日をつけ、
タイトルを雲絵30日にした。
2学期の発表の後、校内で表彰された。
成層圏に浮かぶ巻積雲は
うろこ雲、いわし雲、さば雲の愛称で知られる。
空に彼女たちを見つけると、
スティル撮影に向かう日と決めている。
PS.
光の操り方、フレームの切り方、ファインダーの向こうにある被写体に対する意識の伝播が、いいショット、カットに繋がる。それによって、その一枚に空気がちゃんと映っているかどうか、それが肝心な事だと思う…ずっと昔、大手ショッピングセンターSのパッケージ商品の撮影で、レギュラーでお願いしていたカメラマンのT田さんが、9月の初めの青空を見上げながらおもむろに言った。パッケージ商品は主にクライアントSのオリジナルブランドを冠した食品で、生活背景の中でその食品の位置づけをどう演出していくか、ということをテーマにした写真だったので、T田さんのスタジオでああでもない、こうでもない、と何枚も何枚もポラロイド撮影を繰り返し、ブローニを使った本チャン撮影を終えると、3時間ほどが経過していた。水菜の漬物という商品の演出でどうしようか…とやり取りしているうちに、屋外で食べる弁当、特におにぎりの付け合わせ、特に農家では稲刈りの昼食時がリアリティがあって、身近でいい。畦で自家製のおにぎりのおかずとして、手軽な漬物です、というシチュエーションで行きましょう。撮影場所になった綾部市栗町の田んぼに到着した処で、T田さんの第一声がそのセリフだった。もう22年近く前になる。カメラはまだデジタルではなく、シャッターを押すたびにポラロイドを引き、確認する作業は、その回数に比例して時間が経過していく。こちらは、2度目のポラでOKを出してもT田さんは納得しなかった。空気が映っているかどうか、それが問題。空気が映っていなければダメ、よしもう1回撮り直そう。その後、彼は通算で4回ポラを引きなおした。B5版1Pの小冊子の広告のメインビジュアルを占めたその1枚は、美しい漬物、食べるのが惜しい位の漬物として、クライアントSのお客様相談窓口に大好評の声が寄せられた。そこに僕が書いたキャッチフレーズは「お父さん、そろそろお昼にしよう…はい、水菜のお漬物。」だったと思う。水菜のお漬物、という商品名はくどいのであえて省いていたが、クライアントの要請で「はい」というモノを差し出す時に使う接頭語を追加した。T田さんとは、その後1年ほどセッションをし、僕の退職を機に音信は途絶えた。面白くてきれいな仕事に恵まれていた数年だった。T田さんのスティル映像について教わった言葉を、この散文に忍び込ませた。未だ現役でご活躍のことだろう彼も恐らくは60代の後半。隣りの綾部市在住なので、いつかまた、機会をみてご挨拶にあがろうと思う。
●ちょうど5年前の晩秋から初冬にかけ、書いていながらアップし忘れていた散文が数十本、古い控えフォルダから先ほど発見。時節に沿って、その時折の心象を成り行きに任せて綴ったショートストーリーのよう(こんなの書いていた事も先ほどまで忘れていた)。デフォルメを一切していないので、お見苦しくご不明な点があろうかと存じますが、どうかご海容ください。 ではまた後日、別の散文をアップします。
