暖炉。ペチカ。あるいは薪ストーブ。
夕暮れが、西の山の頂に訪れるころ
中空は紺碧からチャコールに代わる。
冬の空の寒々しいグラデーションには、
どこの家の煙突だろう、そこから湧き出る
煙が郷愁をそそる。
家を確認すると、鹿鳴館時代の
大正モダンを意識した屋敷のようだ。
レンガ貼りの外壁。
多分、レンガ模様のタイル外壁だろうが
それは十分すぎるほど、
煙突を持つ屋敷にふさわしい威勢だった。
中で炊いているのは、暖炉だろうか。
薪ストーブだろうか。
煙の香りはほのかに、炭のいこりを感じさせる。
木炭では、一酸化炭素中毒になるし、
そんな危険は冒すまい。
恐らく、木。
多分、クヌギかサクラの潅木だろう。
懐かしい、という風情より。
子どもの頃、幻想していた
晩秋や冬の童謡の中の世界を
リアルに感じる喜びが深かった。
山田耕作:詞、北原白秋:曲の
赤とんぼ、それにペチカ。
フランツ・ペーター・シューベルト:曲の野ばら。
ジョージ・ウィンストン:曲のウッズ。
あるいは、
イエスのフロム·ザ·バルコニー。
煙突から聴こえる、聴こえてくる、晩秋の音が。
