将棋士にとっての駒 | マイブログ

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こころのカラー。いつもレインボー(虹色)ならOK、でもモノトーンのときも。いずれ、じかんに刷り込まれては、無常で透明に・・・。折々のそんなこころを集めていくさきに、きっとなにかあるのかも。

コンピューター将棋ソフト「あから 2010 」が、プロ棋士に勝った。 今日のことだ。


棋士は勝負士だと云われる。対戦相手との心理的、技術的な駆け引きの勝負だとも云われる。ちょっとでも気を抜くと、格下相手に負かされることはよくあるという。


高名な棋士の方々は、各地に出向いて一度に数人を相手に将棋を指すこともある。完全勝利で済むこともあるが、負けることもあるという。


名人戦ともなると棋士と棋士との白刃の一騎打ちだ。相手の隙や、癖を突くなど、相手の身体を痛めつけない格闘技だ。



今日登場した「あから2010」は、複数の将棋ソフトを組み合わせたものらしく、考えられる(プログラムされた?)膨大なパターンを網羅しているという。


なるほどそうか、「あから2010」が勝って当たり前という気がするのだが・・・・・。


何百人ものプロ棋士相手に、たった一人の棋士が挑むようなものではないか。


明らかにたった一人の棋士に分は悪い。


コンピューターの方が優れていたとは、にわかに云い難い。


将棋は勝負である。棋士どうしの精神や感情の勝負でもある。


当然、そこには人間臭さがつきまとう。


1952年冬、枡田八段と木村名人との王将戦が神奈川県鶴巻温泉の陣屋旅館で行われた。この王将戦の真相は明らかになっていないが、陣屋事件 として将棋界の伝説となっているらしい。


5年ほど前に、この陣屋に宿泊したことがある。


そのとき、女将さんから別なエピソードを聞いた。


名人戦が陣屋で行われた。一人の騎士は大変な集中力で対戦することでもその名を馳せていた。まずもって、対戦中の駒には絶対に勝手に触れるなと云われたほど。


対戦の休憩に入っているとき、スタッフの一人が別に動かすわけじゃないから、と駒の一つに指を触れた途端、周りが大慌てになったとのこと。当のスタッフは、何もそこまで―と思ったらしいのだが・・・・。


休憩が終わり、対局が開始されたとたん、「誰だ、触ったのは」と張りつめた中に厳しい声音が響いたそうだ。


このクラスの棋士ともなると、駒一つが自分の分身になっているのだろう。普通の感覚や常識では測れないものが確かにあるのだ。