4月のこと、銀座の何時ものフレンチ、『ブラッスリー ポール・ボキューズ 銀座』で彼女と過ごす楽しい夜の続き。
泡、白のあとは、竹内支配人イチオシの赤ワイン。
ボジョレーのジョルジュ・デコンブが造る、ブルイィ、ヴィエイユ・ヴィーニュ、2019年。
ブルイィはボジョレー地区の中で最高級のワインを産する10のアペラシオン、クリュ・デュ・ボジョレーの中の一つ。
ジョルジュ・デコンブはマルセル・ラピエールの元で学んだ自然派の造り手。
そう聞くだけでこのワインへの期待が膨らむ。
マルセル・ラピエールは大好きな造り手。
彼の早逝が惜しまれる。
グラスから立ち上がるフレッシュな赤果実の香り。
口当たりは柔らかで、舌の上で転がしていると次々と複雑なニュアンスとストラクチャーが現れ、長い余韻へと続く。
タンニンは円やかで、綺麗な酸がボディを引き締めている。
竹内支配人が選ぶだけあり、とても上質のガメイだ。
ヴィアンドは、高知県よさこい尾鶏もも肉のコンフィ、温かいヴィネグレットソース。
肉のヴォリューム感が素晴らしい。
トマトとタマネギのヴィネグレットソースに加え、ジュのソースが使われている。
手前は、春菊のジュレ。
柔らかく旨みが凝縮されたよさこい尾鶏が美味い。
旨みが強いので、上質のガメイとの相性も良い。
薄切りの大根が、白、赤、黄と三色使われている。
最後は濃い赤を飲みたくなり、このボトルを抜栓。
シャトー・カノン・シェニョー、ラランド・ド・ポムロール、2009年。
畑はシャトー・ペトリュスの畑と1.2kmしか離れておらず、土壌も近似している。
醸造責任者は、サンテミリオンのシュヴァルブランの醸造責任者を務めていた、ティエリー・ガルノー。
カシス、ブラックベリーなど、黒果実の香り。
柔らかな果実味の口当たり、そのあとに続く強い熟成感、しなやかなタンニン、長い余韻。
2009年は当たり年、完成度の高い熟成ワインだ。
ぶどうの平均樹齢は35年、樽熟成期間は12~14ヶ月、新樽比率は1/3。
セパージュは、メルロー92%、カベルネ・フラン5%、マルベック3%。
デセールは、アールグレイ風味の紅茶ティラミス、温州みかんのソルベ。
アールグレイのロイヤルミルクティー、ホワイトチョコとマスカルポーネのクリームが使われている。
これは美味しくないはずがない。
皿に散らされたグリーンの物の香りがとても良い。
星野シェフに聞くと、ライムの皮なのだそうだ。
食後は熱いコーヒーで今夜を締めくくる。
星野シェフがテーブルに挨拶に来てくれた。
今夜の料理について色々お話しするのが楽しい。
シェフとの別れ際に、「TVに出られましたね」と私。
「はい、ジャニーズの番組に出ちゃいました」と照れるシェフ。
(4月の話です。)
「また来ますね」、「お待ちしています」と挨拶を交わし、席を立つ。
店のエントランスでは竹内支配人が見送りに待っていてくれた。
「今日はあまり席に伺えず済みませんでした。個室にラドゥセットの当主が来られているものですから」とのこと。
ドゥ・ラドゥセットのバロン・ド・エルは大好きなワイン。
一目で良いからあの有名なラドゥセットの当主を見たかった。
外堀通りに出て「マロニエゲート銀座1」を見上げると、私達が居た10階の角の窓が見える。
外堀通りを数寄屋橋に向かって散策。
二日前に見た八重洲のさくら通りの桜はほとんど葉桜になっていたが、ここの桜はまだ花がいっぱい残っている。
少し緑の新芽が出ているが、充分に花を楽しむことができる。
桜を背景に立つ、関東大震災10周年記念塔。
銘板には、「不意の地震に不断の用意」と書かれている。
この像は北村西望作の”燈臺”。
凛々しい青年が兜を纏い獅子を従えて松明を掲げる像には、困難に負けない力強さと将来への希望を見ることができる。
彼女と過ごす、銀座の楽しい夜でした。