昨年11月初めのこと、彼女と東京ミッドタウン六本木で待ち合わせ。
まだ時間は夕方なのに、もうすっかり薄暗くなっている。
ミッドタウン六本木に向かう人も少し寒そう。
最近はミッドタウンでも日比谷を利用することが多いので、六本木に来るのは久し振り。
ガレリアの一番奥では、河合ピアノのクリスタル・グランドの自動演奏が行われている。
彼女との待ち合わせまでには時間があるので、芝生広場に出てみる。
パーク・パックという催しが行われていた。
振り向くと、ミッドタウン・タワーが天空に聳えている。
手前にあるのはレストランが入っているガーデン・テラス。
今夜の彼女との待ち合わせ場所は、ガーデン・テラスの最上階にある『フィリップ・ミル東京』。
張りだした部分は、オリーブが植わった広いテラスとなっている。
陸橋を渡り、ガーデンテラスに向かう。
紅葉がだいぶ進んでいる。
待ち合わせ時間が近付いたので、『フィリップ・ミル東京』に向かう。
ここは、シャンパーニュ地方でミシュラン二つ星に輝く『ドメーヌ・レ・クレイエール』の総料理長、フィリップ・ミルが日本に初めて出店したレストラン。
フィリップ・ミルは38歳で国家最優秀職人賞を受賞し、『レ・クレイエール』のレストラン、『ル・パルク』のシェフ就任からわずか二年で二つ星を獲得している。
エントランスでスタッフに迎えられると、店内の通路をどんどん歩き、奥のテーブルに案内される。
一番奥の窓際、照明を当てられたオリーブの樹が目の前に見えるテーブル。
前回もここだった。
私達が一番好きなテーブルなのだ。
今夜はどんな料理に出会えるか楽しみだ。
彼女が到着し、席を立って迎える。
最初はシャンパーニュ。
エグゼクティブ・シェフ・ソムリエの椨さんが選んでくれたのは、ジョノー・ロバン、ル・タリュ・ドゥ・サンプリ、エキストラ・ブリュット。
ジョノー・ロバンは、エペルネから南西35kmにある人口85人の集落、タリュ・サンプリにある家族経営のメゾン。
メゾンを訪れる個人客への販売が中心なので、市場に出回ることがほとんど無いという珍しいRM物なのだ。
素晴らしい泡立ち。
彼女と目と目を合わせ、乾杯。
抜栓したばかりのシャンパーニュは美味い。
レモンや青リンゴの爽やかな香り。
口に含むと、完熟果実の凝縮感、ブリオッシュのニュアンス。
ぶどう栽培はビオディナミで、セパージュはピノ・ムニエ60%、ピノ・ノワール30%、シャルドネ10%。
シャンパーニュに合わせたプティサレ。
牛テールのタルトと、鯛をのせたライスペーパー。
ミネラルウォーターはサンペレグリノを選択。
彼女はコンガスが好きなのだ。
テーブルに置かれているのは、ミュズレで作られた置物。
いかにもシャンパーニュのお店だ。
そしてE.V.オリーブオイルも置かれている。
パンのお供はオリーブオイルだけでなく、バターも。
アミューズは、サツマイモのムース。
エスプーマで柔らかくされ、オレンジピールとクルトンが添えられている。
白ワインはグラスで。
三本お薦めを出してもらい、その中から選んだのは、ボルドー、グラーヴのシャトー・サン・ロベール、キュヴェ・ポンセ・ドゥヴィル、2012年。
何度か飲んでいるが、グラーヴらしいワインで二人の好み。
アルコール度数はボルドーの白としては強く、14%。
爽やかなシトラスの香り。
開いてくると、甘いオレンジや青リンゴの香りが立ってくる。
強い果実味を持ちながら、酸があるのでバランスが良い。
複雑なストラクチャーを持つ、力強いボディだ。
熟成は新樽100%。
セパージュは、ソーヴィニヨン・ブラン80%、セミヨン20%。
前菜は、軽く炙ったタスマニア産サーモンの自家製燻製とポロ葱のバヴァロア。
薫香が素晴らしい。
身はねっとりと甘みがあり、とても濃厚。
ミッドタウン六本木のフレンチ、『フィリップ・ミル東京』で彼女と過ごす素敵な夜は続きます。