西麻布の『キャーヴ・ド・ひらまつ』で彼女と過ごす素敵な夜の続き。
シャンパーニュ、アルザスの白を飲んだ後は、ローヌの赤。
ファミーユ・ペランが造る、ジゴンダス、ラ・ジル、2010年。
ファミーユ・ペランは南ローヌの主要アペラシオンに300ha以上の畑を保有する大手の造り手。
古くからオーガニック栽培を実践していることでも有名。
圧倒的な果実味を持つフル・ボディだが、それでいてエレガントさをも併せ持つ。
アルコール度数は14.5%あるが、果実味が強いのでアルコール・アタックは感じない。
セパージュは、グルナッシュ70%、シラー25%、ムールヴェードル5%。
話しは余談になるが、ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリー夫妻が保有しているプロヴァンスのワイナリー、ミラヴァルの運営を請け負っているのはこのファミーユ・ペラン。
二人が離婚すればミラヴァルを手放すだろうが、運営がしっかりしているので今後とも美味いミラヴァルを飲むことが出来るのだろうと思っている。
肉料理は、骨付き仔羊のロースト、シェーブル香る男爵のピューレ、タイム風味のジューソース、ジゴンダスのアクセント。
仔羊は、ニュージーランド産。
焼き加減が素晴らしい。
口の中でとろける美味しさ。
「フレンチのお店でも、ラムはニュージーランド産を使うのね」と、ニュージーのラムが大好きな彼女は嬉しそう。
まだ赤ワインを飲みたいので、フロマージュのワゴンを出してもらう。
食べごろのフロマージュを揃えておくことは、結構コストが掛かる。
それを出来ることはフロマ-ジュを嗜む客を多く持っていることを示し、良いフレンチ・レストランの証しなのだ。
でも、「あら、今夜は種類が少ないわね」と彼女はちょっと不満顔。
ジゴンダスを飲み過ぎたようで、ボトルが空になってしまった。
佐々木ソムリエが、別のワインを急いで出してくれる。
ドメーヌ・ジョルジュ・ヴェルネが造る、シラー・ド・ミルボーディー、ヴァン・ド・ペイ・デ・コート・ロダニエンヌ。
ドメーヌは1940年の創立で、二代目のジョルジュはコンドリューの父と呼ばれている人物。
現在はジョルジュの娘のクリスティーヌが三代目として赤ワインの生産にも力を入れている。
このシラーはとても繊細で、ぶどうの自然な果実味が生き生きとしている。
酸とタンニンとのバランスも良く、先に飲んだジゴンダスが男性的なのに対し、柔らかな女性的な美味しさを持っている。
エポワースもフルムダンベールも熟成が進んでいて美味しい。
それにしても、今夜は良く飲んでいる。
彼女も酔いが回ったようで、頬に可愛く赤みがさしている。
ディジェスティフは、ルモルトンが造るポモー・ド・ノルマンディー。
カルヴァドスにリンゴジュースを加えて熟成させたリキュール。
ルモルトンは香り高いカルヴァドスの造り手としてフランスで人気が高く、有名レストランでしか飲むことができない希少品と言われている。
飴色の綺麗な色合い。
リンゴの甘い香りを持ち、カルヴァドスよりも甘口の熟成されたボディが素晴らしい。
デセールは、紅玉のタルトタタン、カルヴァドスのグラス、シナモン風味のチュイル。
ポモー・ド・ノルマンディーとシンクロしたデセール。
ハートの形をしたリンゴが可愛い。
「今夜は飲み過ぎたみたい。でも、美味しかった」と彼女。
「内木場シェフの料理も素晴らしかったね。それにワインも美味しかったし、君は今夜も素敵だし、最高の夜だね」と私。
「貴方も酔ったようね。でも、嬉しい」
西麻布の『キャーヴ・ド・ひらまつ』で過ごす夜は、素敵に更けていきました。