『パリ・テイスティング事件』とは、カリフォルニア・ワインを一流ワインとして世界に認識させた、大事件のことです。
1976年、フランス・ワイン界の大御所が審査委員となって、ブラインド・テイスティングがパリで行われました。当時は二流と思われていたカリフォルニア・ワインが、フランスの名だたる銘醸ワインと共に出品されましたが、当然のことながらフランス・ワインの優勝を誰もが確信していました。
ところが結果は、シャルドネ部門、カベルネ・ソーヴィニヨン部門ともカリフォルニア・ワインが優勝してしまったのです。この事件は、『ボトル・ショック』という映画に、詳しく描かれています。
これは、フランス・ワイン界を驚愕させる大事件でした。多くの醸造家がショックを受ける中、五大銘醸の一角、シャトー・ラフィット・ロートシルトを擁するフランス・ワイン界の巨匠、バロン・フィリップ・ド・ロートシルトの対応は前向きでした。カリフォルニア・ワイン界の大御所、ロバート・モンダヴィとジョイントを組み、カリフォルニア、ナパ・ヴァレーでボルドー風高級ワインの生産に乗り出し、早くも1979年にファースト・リリースを果たしました。
そのワインが、「作品番号1号」の意味を持つオーパス・ワンです。
バロン・フィリップ・ド・ロートシルトとロバート・モンダヴィの横顔がモチーフとして描かれ、その下に二人のサインが添えられたエチケットは、二人の自信を物語っています。
ニューヨークに度々出張していた頃にはマンハッタンでよく飲んだものですが、その後人気は上昇の一途をたどり、今ではなかなか手が届かないワインとなってしまいました。今夜、この偉大なワインを堪能したのです。
それは、六本木の行きつけの寿司屋、『琴』でのことです。六本木交差点のすぐそばという便利な立地にあるにもかかわらず、何時も静かな自分だけの時間を楽しむことができる、私にとってはそんな特別な場所です。
『琴』には吟味された魅力的なワインが常備されていますが、今夜は特別にオーパス・ワンを用意してもらいました。カベルネ・ソーヴィニヨンを中心に、メルロー、カベルネ・フラン、マルベック、プチ・ヴェルドを少量配合したボルドー風のセパージュ(ブドウの配合)で造られ、強い果実の凝縮感と滑らかなタンニンを持ち、飲むうちにどんどん香りも深みも増していく、究極のワインでした。
ワインの好きな女性は、オーパス・ワンを一度は飲んでみたいと思っています。もし貴方がレストランで、彼女のグラスにさりげなくオーパス・ワン(作品番号1番)を注いだとしたら、それは”貴女が一番大事な人”という意思表示と確実に受け取られるでしょう。”ここ一番”で使いたい、そんなワインです。
えっ、今夜は”ここ一番”だったのか知りたいのですか?オーパス・ワンは必要条件ではありますが、十分条件では無いとのみお答えしておきましょう。