オヤジは脱水で救急搬送する前の週末もオレの部屋に顔を出していました。


オヤジの借家とウチの距離は地図上では1・2キロ。オヤジのシニアカーやオレの電動車椅子でも移動には20分はかからない感じかな?


男同士の親子関係。あまりベタベタするのも気色悪いとおたがい思っているのは言わずもがな。相手のところへ顔を出すのにも何か理由がなきゃね。


オヤジがウチへ毎週の土曜の午前中に顔を出す名目は、オレが(正確には、生活介助のヘルパーさんが)週内のゴミ収集に出し切れなかった可燃物や不燃物ゴミがもしあれば持ち帰り、自宅近所で改めて翌週出すためというもの。


オレ、腐敗が生じる生ゴミは基本的に作らない生活をしているから、実質的な負担は少なかったと思うし、大半の場合、オヤジは手ぶらで帰ることが多かったんだけどね。


来るたびソファに座って少し取り留めもないことをダベって帰っていくルーティン。毎度10分もいなかったけどさ。


そして、オヤジが救急搬送されたのが先月18日だから、ふと気づけば、もうひと月近く土曜朝のオレんちに顔を出してこないのな。


当たり前だよ。本人の骨がウチの四畳半に納骨を待ちながら鎮座してるんだもの。逆に来たらオレが腰を抜かすよ。


別に来てもいいけどね。お盆だし、またくだらない話をしよう。毎週見てたヤツが来ないと、ひどい違和感ありまくり。


あとな。オヤジの借家からはオレの生母の手がかりは何も出なかったぞ。少しは痕跡か何かしらの情報ぐらい遺しといてくれよ。できれば興信所に高い金は払いたくねえんだよ。一目会いたいとかではなく、生死ぐらいは自分の生きているうちに確認しときたいやん?


オレが帰郷してしばらくしてウチヘ来た時みたいに「お前の母親もえれえ美人さんじゃったぞ」なんて、今さらのノロケは言わなくてもいいからさ。


「面食い」が遺伝なのは、オレもよくわかっているよ。ウチの家系は代々、相手の球種は問わずストライクゾーンもわりと広めだもんな。


あのね。オレ、今、高2の夏にひとり暮らし始めて、初めて迎えるクリスマスから年末年始に向けての、あの心細さマックスなボッチ感覚をまた追体験しているような感じだよ。


人は、コレを寂しいって言うのかな?


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