それは、昆虫と高いところ。
ご多分に漏れず、オレもガキの頃は動物と同レベルで昆虫図鑑を熟読し、昆虫採集とは名ばかりの、ネコが虫を戯れに弄ぶように、セミにしろバッタにしろ捕まえては弄くり倒して結果として虐殺する行為に耽っていたから、カブトムシにしろクワガタやカミキリといった甲虫にしろ、コオロギもセミも捕まえる際には普通に素手で触れていた。もちろんデカいバッタに間違って蹴飛ばされたら痛いのは知っていたけど、ほとんどの虫にはひどく噛みつかれることもないから、特段に恐れることもなく手づかみで捕まえられていたはずでした。
それがオッサンになったオレは、静止しているコオロギやバッタの類い、それどころか夜中に路面の飲み屋の中に飛び込んできたカナブンですら、壁やテーブルに止まっていても、触れない。
頭ではこうすれば捕まえられるとわかっていても、いざやろうとすると鳥肌が立つ。
一方の高いところも、煙と何とかはすぐ高いところに昇るの例に漏れず、身軽なこともあり木登り好きだったし、キーハンターの千葉真一やら仮面ライダーで育ったクチなので、高いところに登って飛び降りるのはアクションの基本だろうと信じて疑わなかったはずのオレが、ふと気づけば尾道の千光寺や城の石垣程度で足が竦むなんて…。
加齢型の高所恐怖症ってあるのかしら?
そんな今や紛うことなき高所恐怖症のオレが、あえて、この映画を観るあたりが根本的な悪趣味の極み。
高いところの苦手な人は、おそらく下手なホラーの百倍チビりそうになりますよ。
疑似体験的な映像と演出がシャレにならない。
この作品をもう一回劇場で観ようと誰かに誘われても、さすがの映画マニアなオレも断るかもしんない。それでも無理して行くなら紙パンツ履いていこうかと思うもの。念のため。
言わば、最初にこの舞台設定を考えたモン勝ちのワンシチュエーションサバイバルといえばそれまでなんですが、その場所に到達するのは映画が始まって30分くらいで意外とサクッと着いちゃうけれど、もうそこからは怒涛の絶望の畳みかけ。途中で反則的な捻りのある展開もあるけれど、脚本自体はよく練られていると思います。
コンパクトで低予算な作りですけど、決して安っぽくはない。
男性にしかわからない部分の縮み上がる感じや根源的な生理に訴えてくるような失禁不安に近い体験をしたいならば、ぜひどうぞ。
ただし観て実際に漏らしたとしても、オレは一切関知はいたしませんので、そこんところはよろしくお願いしますね。
https://eiga.com/movie/97705/