コレで醤油味もやしそばにとろみ付け…


昨日からの続きです。


東日本大震災の最初の揺れがいったん収まった頃、オレは勤め先に了承をもらい、大久保通りと明治通りの交差点にほど近い歯科医院の3階にある自室の状況を確認しようと、2丁目の仲通りから靖国通りへ出て明治通りを徒歩で北上し始めました。


そこでオレが目にしたものは、大きな道路の中央分離帯にある植え込みに集団で入り込んでおたがいの肩を抱き合いながら怯えて泣いている多くの外国人女性の姿でした。


パッと見の印象としては、大半が震度5以上の地震をこれまで経過したことのない比較的最近日本に働くために来たばかりの中韓の人たちに見えました。


まるでこの世の終わりでも来たかのように天を仰ぎ、大声で祈っているのか吠えるかのような声を上げて円陣を組むように固まって泣き叫ぶ姿は、よく言えば怖さと驚きに対する幼く素直な感情の発露にも思えましたが、やはり多くの日本人の反応とはまるで違う感情表現なんだなと、オレは率直に思いました。


一方、その脇ではちょうど花園万頭本社が鉄骨の足場を組んで外壁リニューアル工事中だったようで、すでに鳶職の男性が資材を抱えて鉄骨足場の高所で作業を再開してて、オレはそれはそれでスゲえなとビビっていました。


思いの外、通りに外壁が崩れてたり、ガラスが散乱しているといった様子はあまり見当たりませんでした。それでも古めのビルでは、何箇所か窓が割れて破片が歩道にも落ちていたので、さらに落ちてきそうなところにはコーンやポール、テープなどで、急ごしらえの侵入禁止エリアが区切られてはいました。


あと、水道管が破損したのか、エントランスから水が溢れていたマンションも1つ見かけました。


さて、少し逸れますが、その当時、オレは早稲田に通っている女のコと仲良くしていたので、戸山キャンパスで発災に遭遇したその彼女から聞いた話をここでひとつ紹介しておきます。


古くからある東京の大学のほとんどが都心回帰する最近は、やたらと校舎が高層化しているのですが、早稲田は広大な敷地もあるからかそれとは無縁だったことも影響したのか「大丈夫だった?」というオレの問いに3階か4階あたりにいたらしい彼女は「意外と大したことなかった」とつれない反応。


ただね。1つだけ大変なことがあったと。 


それは、揺れが始まって揺れている最中もずっと、留学生が窓から飛び降りようとするのを日本人学生が皆で必死になって止めるのが大変だったと。


どうやらインドや中東の多くの国の建物はレンガ積みで建てられたものも多く、地震の際は、自分が何階にいようと、建物自体が崩れて生き埋めになる危険性が最も高いため、まずは揺れたらドアだろうと窓だろうと、外へ飛び出ることが最優先。


2階や3階から飛び降りて、たとえ骨折したりケガしても、瓦礫に生き埋めになるよりは生き残る可能性が高いとされているらしいです。今もそうなのかは知りませんけどね。


だから、発作的に飛び降りようとする留学生を羽交い締めにしてなだめたりするのが、こちらも咄嗟には理解できず面食らうやら、とにかく大変だったという話でした。


閑話休題。


当時は新宿に住み始めて2年目のこと。コリアンタウンの外縁にあるオレの部屋は、実際に歩いて戻ってみると3階と低層だったこともあるのか、湯沸かしポットが倒れて少し床が濡れた以外はほぼ被害なし。


ただ、大久保通り沿いの各種コリアンショップは前述の中央分離帯ほどにはないにしても、まだまだ落ち着かず、全体的にザワザワしていました。


ほとんどの人が周囲と喧々諤々議論している勢いで話していたり、携帯に向かって叫ぶように話し続けていました。



そして、その夜から大久保コリアンタウンと歌舞伎町には大きな変化が。


いわゆるニューカマーと呼ばれる仕事目的で来日していた母国人の多くをスタッフとして抱えていた飲食店の大半が休業したのです。


よくオレが言う言葉があります。


「日本人」とは、そこに生まれるからなれるものではなく、この国で長く暮らすうちに「日本人になる」ものなのだとね。


それこそ、日本に骨を埋めるつもりで古くから少数精鋭な家族経営をしているお店の大半は周囲の日本のお店とあまり変わらぬタイミングで営業を再開していました。


一方、ニューカマー労働者の多くが電話で親族に危ないから帰ってこいと言われたからか、自ら怖くて帰りたいと思ったのかはわかりませんが、それこそ、さほど日もかからずあっという間に新宿からいなくなりました。


その結果、単にしばらく休業する店だけではなく、地震きっかけで閉店してしまった店も何軒かありました。オレが昔から好きな辛さの選べる歌舞伎町交差点近くの担々麺のお店とかね。あれは悲しかった。お茶も美味しい、台湾系で好きな雰囲気だったのにさ。


そんな、災害に限らず非常時に遭遇した際にもお国柄って違いが出るのね…と肌で実感もできた、あの日でした。


と、明日も続く…?


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