誰しも記憶の中に、おそらく十代の頃に自分の感性が子どもから大人になるきっかけとなったと意識する小説や映画、音楽などの何かしらのエポックメイキングな創作物を持っていると思う。
そんな、感性においての「大人の階段を登る」ステップをオレが初めて意識したのが、末尾リンクのこの映画。
アマプラの配信に見つけて、思わず観直してしまいました。
退役軍人が傭兵部隊を編成し、囚われのアフリカ某国の元大統領を救出に向かう話。
ハッキリ言って、ジャンル的には戦争アクション物なのに登場人物は年寄りばかり。公募して集まるのも若手で40歳オーバー。70年代のその年齢層って、どの国の人でも今見ると現代の60歳ぐらいの印象。
どこの国も寿命が伸びると同時に、総じて見た目が若返ってるのね…。
ボンドになりたてのロジャー・ムーアが若手で色気担当だもの。
監督は、先日書いた「ハリウッドの悪魔」作中で最初の被害者となるジョン・ヒューストン監督の一番弟子と言われた人物だし、少し女性の描き方がかつての西部劇の匂いがしたりもするけど、基本はずっと男しか出てこないムサ苦しい絵面が続く。
そこに出てくる誰もが自分が過去にやり残したことや、かつて自分が信じていたものを取り返したり確認するためにあえて危険な場所へと出向いていく。
そして、その思いも結局は政治のリアルに裏切られていく、その過程がひたすら苦い。
ラストシーンの本当の意味合いが、半世紀近く前の当時の日本の田舎のバカ中学生だったオレにどこまで理解できたかは何の保証も証明もできない。
しかし、一つ思うのはオレはこういう作品は十代の男の子には見せておくべきだと思うんだよね。オレは、歴史と地理と国際政治の教材として戦争映画は必要だと思うんですよね。
それを見て戦争賛美とか好戦的になるかどうかは、また別の哲学的な問題だとも思うから。
たとえば「ダンケルク」「空軍大戦略」「史上最大の作戦」「パットン大戦車軍団」「遠すぎた橋」の順番で見れば、第二次の欧州戦線の推移はだいたい把握できる。途中どっかで「Uボート」挟んでもいいけどさ。
オレたちだって、NATOとワルシャワ機構の対立はボンド映画で覚えたしな。
いやあ、それにしてもリチャード・ハリスはベレー帽の英国軍人やらせたら最高。正確にはアイルランド人だけど。
そして、クロスボウ使いのハーディ・クリューガがね、黒人嫌いの南ア人を演っててさ…。
この歳になって観ても、やはり泣けた…。
あと、アフリカも世界も、今もあの頃とそんなに変わってないよ…と悲しくもなった。
今夜だけは少しウイスキーを薄めず飲もう。
あの頃の男たちに献杯だ。
https://eiga.com/movie/51087/