衝動買い…


文庫本も450頁を越えると、やはり読み終わるのに思いの外時間がかかるな。通所リハビリのスキマ時間だけで読むのにはさすがにね。


それにしても帰郷してからこっち矢作俊彦ばかり読んでいる。


この行為には、成年期の感性の自己確認的な意味合いがあるのかも? そして、おそらくオレが好む数少ない日本人作家の文体だからなのだと思う。


じゃあ、それが具体的にはどんな文体なのかと問われたら、その説明がまた難しい。ウェットすぎてもドライすぎても嫌だし、ハードすぎてもソフトすぎてもダメ。写実的すぎても韻文寄りすぎでも気に入らない。


だからなのか、オレは三島も太宰も好きではない。それでも重厚な建築的な文章よりは、流れる方が好きかな? 


それ以前に純文学の本道などには昔からまるで興味もなければ、必然的にその素養もまったくないしね。


たぶんだけど、オレのこの感性の指向性のスタンスは、映画でも音楽でも小説でも絵画でも、何なら食の嗜好においても、己の立ち位置とそのアプローチは変わらないかと思う。一般教養の王道としての文学全集などには微塵も惹かれない。知っておくべきことを知っていないと困る場面などは、できればクイズ番組に出る芸人たちにまかせておきたい。


勉強のための勉強とか、テストエリートなんかクソ喰らえ。卑近であれ低俗であれ、自分にとって面白いか、カッコいいか、美味しいモノしか身体が受けつけない。


こんな稚拙な自己分析をしても埒が明かないし仕方ないので、ここはシンプルに、オレが本作で一番気に入っているセンテンスを以下に抜粋してみよう。何ならそこから察してくれ。おそらく誰もオレ個人の文体の嗜好になんて興味はないだろうけどさ。


ただ、オレはこの行(くだり)で2杯は飲める。


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 彼女はカートンボックスの縁に踝を支い、左足を胸に抱きしめていた。その膝小僧に左頬をのせ、ピカソが描いたガートルード・スタインよりずっと孤独に微笑んで、ウィスキーのグラスを高く翳した。窓から降ってきたネオンの灯が、そのグラスと左のふくらはぎを薔薇色に煌かせた。

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相変わらず書評らしい書評は書く気がまったくといってない。


https://www.kadokawa.co.jp/product/200410000266/