この春に、昨秋の帰郷の際に関係者のご尽力で特例入所したサービス付き高齢者住宅を出ることにした、主な理由の1つでもあるのが自炊環境の有無。
そもそも、家庭の事情で16歳から一人暮らしに近い状況となり、好むと好まざるとにかかわらず必然的に家事は自分でこなすようになった。40年前の地方都市には数少なく貴重なコインランドリーで洗濯し、料理も今のようにネットなどない中、1階に一人で暮らす祖母以外の家族が去り、家の2階のオレの居室に残されたわずかな毎日の献立料理本とか主婦の友などを参考にしつつ独学で覚えた。
アウトドア、インドアに限らず料理がさほど苦にならない同性の男性にはわかってもらえると思うが、オレにとって料理は、授業でやった化学や物理の実験、プラモデル作り、日曜大工などの工作と大差ない。ホビーの延長です。
もちろん、オレも最初から技術の必要なメニューができるわけもなく、超ありがちだがパスタから始めましたよ。誰だって最初はテレ朝系の家事ヤロウ程度のレベルからスタートするんだってば。
しかし、当時から情報過多な頭でっかちだったので、イタリア家庭料理の基本はまずカルボナーラと、そこからトライするのが、何とも俗物だね…。使う材料が少ないってのが大きな理由でもあるし。
その過程で、これまた男子にありがちな探究心に火がつき、パスタの太さや茹で方に留まらず、バリラやデチェコなどのメーカー、ベーコンとパンチェッタ(当時の福山じゃ、天満屋の地下にも売ってねえよ…)の違い、オリーブオイルのグレード、ソースの乳化反応の理屈とかも覚えたよ。卵は白身を捨てるのが面倒でもったいないので未だ全卵投入派だけどね。
そんな訳で、包丁使いは未だ稚拙なれど、料理自体に苦はないのよ。
しかし、施設では日常的に自炊できる設備とは言えず、入所者が食堂で提供される食事を摂るのが通常。しかも、1日で最も安価な朝食だけ頼んだとしても、配膳料込みで1食800円です。
そうすると、1か月最低でも2万円オーバーかと計算するのが貧乏人の悲しい性ですわな。
もちろん、食材の買い出しや準備から、調理の手間も片付けもなく、決まった時間に出てくる栄養管理された温かく衛生的な食事はとても嬉しく美味しい、ホントにありがたいものでしたけどね。
それでも、ある程度は自炊の経験値がある身としては「今の不自由な自分の身体でも、せめて米を自分で炊き、惣菜やサラダをスーパーで買うスタイルの方がコストパフォーマンス高く充実しない?」って結論にたどり着くわけですよ。
そんなこともあり、春から自炊してます。
倒れる前と大きく違うのは、片手生活者なので、具材を左手で押さえることができないため、包丁とまな板を使う工程のあるメニューは避けがち。それでもネギやニラなどの野菜、鶏むね肉なども大胆にキッチンバサミで切ったりして対応しています。
昨晩はコープデリの無調整豆乳にニガリを入れて、耐熱マグカップとレンジ調理による豆腐作りにチャレンジしました。施設でも一回作っているので、実は二度目。
前回の反省も踏まえ、キチンと固めるために軽量カップできっちり200cc計ってカップに注ぎ、ニガリをティースプーン1杯入れてよくかき混ぜ、レンジ500ワットでまずは1分50秒。粗熱がとれたら冷蔵庫に一晩。
それで今朝、実食。
結論、不味くはないが美味しくはない。
テレビの取材でお豆腐屋さんが語るように、やはりニガリ打ちが難しい。しっかり混ぜたつもりが思いの外ムラがあり、均一に固まってない。所詮、素人。プロの業者にはかなわない。コレなら安いパック豆腐を素直に食べるべき。
と言いつつも、会得したものもあり、次は出来たてに温かいとろみ餡でも作ってかけ、餡かけおぼろ豆腐にでもするかと愚考いたしております。
