病気で臥せっていたのだろう。
狭い部屋と広い世の中との大小の対比、暗い室内と外光の下の桜との明暗の対比、病と健康とのいわば陰陽の対比などが一見単純な表現の中に秘められている。
それらの対比に思いを致せば、桜の輝きと「かな」という詠嘆の深さとを感じ取ることができる。

参考までに、古今和歌集巻二0080、藤原因香の歌に「たれこめて春のゆくへも知らぬ間に待ちし桜もうつろひにけり」がある。
詞書には「心地そこなひてわつらひける時に、風にあたらしとておろしこめてのみ侍りけるあひたに、をれるさくらのちりかたになれりけるを見てよめる」。
江戸期の俳人の教養として、古今和歌集は読みこんでいただろうから、本歌取りとまで言えるかどうかはわからないが、作句時の意識にあったのは間違いないだろう。