2024
脱ぎし靴きちんと揃へ水遊
流燈会おはりて闇のやはらかし
檜扇や消えかかりゐる墓の文字
結ばるるらし蛍火の相寄れる
百合の香のゆつくり沁みてゆく墓石
涯しなしはぐれ蛍のとぶ闇は
鬼百合咲く墓所に鴉声の満つるとき
花槐散る音もなく色もなく
鬼灯市灯り売声なほ高く
こまやかに四万六千日の雨