季語は「寒」。
「同じ」はこの句では解釈の幅のある措辞。
誰かと同じということなのか、過去の或る時と同じということなのか。
「入りて」「ひたりて」などではなく「しづみて」という動詞を選択した理由には、「思いに沈む」という慣用句を読者に連想させようとした意図があるようだ。
とすれば、作者は一人湯に浸かりつつ、同じ温泉宿を訪れた過去を回想しているとするのが自然。
あとは読者それぞれの体験に応じた想像に任せるということだろう。
「寒の月明り」は「寒月」の冷たく冴えたイメージとは異なる。
「寒」はむしろ湯の温かさとその中にある身体のくつろぎを強調し、「明り」は作者の回想の内容の仄かな明るさを思わせる。