「すこしづつ街乾きをり」は、雨後のことではなく、秋に入って湿度が低くなり、過ごしやすくなったことを言っているのだろう。ビルの上に高い秋空。澄んだ大気をさらに輝かすかのように光りつつ走る自動車の列。道行く人々の落ち着いた色の服装。明るく平穏な秋の一日。
しかし、普通は街にいるはずもない「秋の蝶」が幻視されたもののように取り合わされると、同じ街がまったく別の相貌を帯びてくる。歳をとり死に近づくほどに肉体が「乾き」干からびていくように、ゆっくりと「すこしづつ」滅亡へと向かいつつある街。今の街の明るさは、滅びの前の一瞬の煌めきにすぎない。ビルの谷間をよろよろと弱々しく飛ぶ一匹の秋蝶のイメージが、この想念を確信に近づけるようだ。あるいはこの秋の蝶には、作者自身の姿が投影されているのかもしれない。