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国立西洋美術館。
フランク・ブラングィン(1867-1956)は、19世紀末から20世紀はじめにかけてのイギリスを代表する画家。
国立西洋美術館収蔵品の核となっている「松方コレクション」の蒐集者である松方幸次郎を通して、日本の美術界にも影響を与えた人物だ。
にもかかわらず、その名前は一般にはあまり知られていない。
「彼は成功に尾を振る社交家ではなく、その伝統に従わないやり方は美術界で孤立しており、批評家たちは当惑していたのだ」(展覧会カタログP20より引用)
人間としては世渡り下手で、画家としてはどの流派にも属さないユニークな存在だったために、画壇からは正当な評価を受けてこなかったということらしい。
この展覧会では、油絵をはじめ、リトグラフ、エッチング、家具、食器といったさまざまな形式の作品が展示され、ブラングィンの芸術活動全体を一望できるようになっている。
テーマはさまざまだが、作品点数からいうと、労働をモチーフにしたものが多い。
夏目漱石『それから』のなかには、ブラングィンの絵の描写が出てくる。
『それから』が発表されたのは1909年。
松方がブラングィンにはじめて会ったのが1916年のことだから、7年前という計算になる。
ちなみに漱石はブラングィンと同い年。
もしかすると、イギリス留学した際に、ブラングィンのことを知って、その作品がおさめられた画集を日本に持ち帰ったのかもしれない。
漱石がイギリスから帰国したのは1902年、35歳。
その年、ブラングィンはフランスから勲章を受けるなどして、すでに画家としての名声を確立していた。
『それから』で描写されているのは、船を背景に4、5人の裸体の労働者が働いている様子だが、該当する作品は今回展示されたなかにはない。
しかし、どのようなものであったかは、たとえば「蹄鉄工」や「ロンドン・ブリッジⅡ」のような作品から想像できる。

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