丁寧な言葉遣いとフレンドリーさは共存できる

先日コンビニのレジで、私の母親くらいの年齢のお客様に対して、若い店員さんがタメ口で対応していました。（ちなみに私の母は７８歳です。）

そのお客様が質問したことに対して説明をしているのですが、まるで小さな子供に何かを諭すかのような口調なのです。一見、親しみやすくていいね・・・と思いがちなよくある風景なのですが、私は違和感のまま店を出ました。

このような話になると、コンビニの店員にそこまで求めるな、的なことをおっしゃる方がいますが、コンビニだからとか一流ホテルだからとか、いや、もっと言えば店員だからということでは無いのです。

私の個人レッスンに通ってくださっている、３０代の男性がいらっしゃいます。彼は数年後に現在社長であるお父様から事業継承する予定です。ご自身がまだ若いこともあって、お父様の時代からいらっしゃる古参の社員さんとのコミュニケーションに不安を抱えていらっしゃいます。

自分より、人生経験も仕事のキャリアも実力も全てが上の方が全員部下になる。難しいですよね。後継者ならではの悩みでしょう。

歳上の部下との接し方にはポイントがありますので、その辺りを学んでいただいています。それには心の在り方とやり方の両方が必要です。心の在り方とは『相手に敬意を表すること』。やり方とはその表現力、すなわち『技術』です。技術には様々ありますが、その中の一つが言葉遣いです。

コミュニケーションを取る上で間違えないでおきたいのは、目的です。何のためにコミュニケーションを取るのか。

経営者にとってコミュニケーションを取ることの目的は、会社の業績を上げ続けることです。自分を良く見せるためでも、相手に好かれるためでも、仲良しになるためでも、友達になるためでもありません。そもそも、社長と社員は友達ではありません。仲良しになって成果が上がるならそれで結構です。以前知り合いに、社員に自分のことをニックネームで呼ばせている社長がいましたが、実際はそんなことでは解決しません。

とは言え、ギスギスした雰囲気では仕事が捗るわけもありませんので、やはり良い雰囲気の方が良いですよね。

良い雰囲気とは、例えば、明るい挨拶をしている、皆が助け合っている、自由に発言できる、などなど他にもたくさんあるでしょう。そこで出てくるのが「フレンドリー」という魔物なのです。「好意的」「親しみやすい」などの意味ですが、これを履き違えてしまいがちなのです。

しかし、言葉の選び方によって、フレンドリーさを増すことができるのも確かです。親友や仲の良い友人にガチガチの敬語では堅苦しいですから、タメ口が良いでしょう。とは言え、歳上の部下にフレンドリーさを表現しようとしてタメ口になるのはいただけません。やはり、ここは敬語や丁寧語です。そこでジレンマが出てきます。親しい関係を構築したいこと、心を開いているということを伝えるための手段として「タメ口」しか知らないのです。

冒頭のコンビニの店員さんも然り。敬語や丁寧な言葉遣いをすると親しみがなくなる、と勘違いしているのです。

他者に自分の思いを伝えるには、言葉だけではありません。どんな話し方をするのか（声のトーンやスピード等々）、どんな表情や態度（笑顔、姿勢、ボディランゲージ等々）で話すのかによって伝わり方は変わります。丁寧な言葉遣いをしても話し方や表情などでフレンドリーさを表現できるのです。つまり、丁寧な言葉遣いをすることとフレンドリーは対立しない、共存できるのです。

社会経験の期間がまだ短い方は、思いを伝える術や表現方法を知らないだけ。教えればやれるようになります。

私も以前は２０以上も歳上の部下がいて、常に尊敬と親しみを持って接していましたが、タメ口を使ったことは一度もありません。

言葉遣いは心の姿勢を表します。心の置き所が悪かったり乱れたり尊大だったりすれば、選ぶ言葉も汚くなったり、相手をぞんざいに扱うような言葉になります。

話すことは、目に見えない思いを相手に伝わる形にすることです。その思いに相応しい言葉を選んで使いたいですね。

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