直前☆出題予想シリーズ行政法編①(行政法総論) | 合格への道のり("3つの道"編)

合格への道のり("3つの道"編)

これまで宅地建物取引士試験、行政書士試験、司法書士試験、海事代理士試験及びマンション管理士試験に一発合格しました。2022年からは受験生、実務家(士業)及び講師の3つの道を歩みますので、どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m。

皆さん、こんにちは。

リーダーズ総合研究所・講師の板野です。

 

暑かった夏も過ぎ、あっという間に寒くなってきました。

そろそろ受験票が届いた頃だろうと思いますが、本試験を目前に控えた大事な時期に体調を崩すと致命的な勉強の遅れに繋がってしまいますので、今後は体調管理に御留意下さいね。

 

わが家でも、いつも家事を担ってくれている妻に「肉球型電子カイロ」を購入しました。これからの季節には必需品となりそうなので、気に入ってくれると良いのですが・・・。

 

さて、「出題予想シリーズ」もいよいよ佳境を迎えて、今回から行政法です。行政法は全2回を予定していますが、第1回目は行政法総論。この分野は判例中心の出題ですが、一部では条文からの出題もありますので、少し苦戦されている受験生もいらっしゃるかもしれません。

 

行政法は行政書士試験の出題の中心であって、比較的高い正答率を求められますので、本記事を手掛かりとしてしっかり学習して下さいね。

 

合格者と不合格者の違い

・・それは知識量ではなく知識の精度(質)。試験中、最も頼りになるのは、あやふやな1000の知識ではなく100の確実な知識なので、直前期にはたとえ量は少なくても良質な知識だけを脳内にしっかり充填して、試験会場へ向かいましょう!

 

行政法第1弾行政法総論編


  行政法「行政法総論」に係る出題の特徴

(傾向)

●行政法総論は判例からの出題が約70%

※表中、「0(ゼロ)」について、出題自体はあったが、判例からの出題がなかったことを意味する

※行政指導については行政手続法の出題と併せて整理するとし、本履歴表から外している

 

  優先順位別行政法総論の出題傾向・分析

 (優先順位1)「行政行為」に係る出題傾向・分析

(出題傾向・分析)

行政行為では「取消しと撤回」が頻出論点

 ⇒ 平成29年度以来、大問での出題がない状況

 

判例からの出題は少ない(過去10年間の判例出題率は25%

 ⇒ 「取消しと撤回」の違いを整理(講学上)

 

 

 (優先順位2)「行政裁量」に係る出題傾向・分析

(出題判例ベスト3)

●出題数1位 最判平8.3.8【3回】

         (剣道実技事件判決)

  ●出題数2位 最判昭52.12.20【2回】

            (神戸税関事件判決)

  ● 同 2位 最判昭53.10.4【2回】

            (マクリーン事件判決)

 

※平成28年度及び平成25年度に2回出題されているが、後者は行政基準(行政規則)に関する論点からの出題

 

(出題傾向・分析)

「行政裁量」は判例からの出題率は100%であって、令和元年度以降は、「平成」の判例が出題される傾向にある

 

●過去10年間で大問としての出題は3回(平成25年度、平成28年度及び令和3年度)あったが、出題数ベスト3判例以外は繰り返し出題されていない

 

 (優先順位3)「行政上の義務履行確保」に係る出題傾向・分析

(出題傾向・分析)

●平成30年度に大問として出題されて以降、出題のない行政代執行法からの出題が想定される

  ・平成29年度 執行罰

  ・平成30年度 行政代執行法

 

●令和3年度行政書士試験問題42(多肢選択式)において、感染症改正を素材として、行政罰(行政刑罰や秩序罰)について出題された

 

●近年、空家問題に起因する代執行が社会問題となっており、試験委員の関心も高いと思われる

※「空家等対策の推進に関する特別措置法」に基づく代執行(14条)で、市町村長は行政代執行法に従って自ら義務者のなすべき行為をすること等ができることとなっている

 

 

 (優先順位4)「行政法の基本原理」に係る出題傾向・分析

(出題判例ベスト3)

●出題数1位 最判昭50.2.25※1【3回】

 

  ●出題数2位 最判昭59.12.13※2【2回】

  ● 同 2位 最判平19.2.6【2回】

            (在ブラジル被爆者健康管理手当請求事件)

 

※1 国の安全配慮義務が問題となった判例 

※2 公営住宅の利用関係が問題となった判例

 

(出題傾向・分析)

「行政法の基本原理」は概ね判例からの出題(平成25年度に地方公務員法から1肢【地方公務員の労働三権】のみ出題)

(平成25年度問題10)

2 一般職の地方公務員については、その勤務関係が公法的規律に服する公法上の関 係であるので、私法的規律である労働三法(労働基準法、労働組合法、労働関係調 整法)はすべて適用されない。(地方公務員法58条1項・3項【労働組合法、労働関係調整法及び最低賃金法は適用されないが、労働基準法の一部は適用される】)

 

●過去10年間で大問としての出題は4回(平成25年度、平成30年度、令和3年度及び令和4年度)あったが、出題数ベスト3判例以外は繰り返し出題されていない

 

 

  本試験の問題にチャレンジ!

 
平成29年度行政書士試験問題

問題8 砂利採取法26条1号から4号までによる「認可の取消し」に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1 1号による「認可の取消し」および2号による「認可の取消し」は、いずれも行政法学上の取消しである。(撤回)

2 1号による「認可の取消し」および3号による「認可の取消し」は、いずれも行政法学上の取消しである。(撤回)

3 2号による「認可の取消し」および3号による「認可の取消し」は、いずれも行政法学上の撤回である。

4 2号による「認可の取消し」および4号による「認可の取消し」は、いずれも行政法学上の撤回である。(2号は撤回、4号は認可の取消し)

5 3号による「認可の取消し」および4号による「認可の取消し」は、いずれも行政法学上の撤回である。(3号は撤回、4号は認可の取消し)

 

(参照条文)

砂利採取法

(採取計画の認可)

第16条 砂利採取業者は、砂利の採取を行おうとするときは、当該採取に係る砂利採取場ごとに採取計画を定め、(当該砂利採取場の所在地を管轄する都道府県知事等)の認可を受けなければならない。

 

(遵守義務)

第21条 第16条の認可を受けた砂利採取業者は、当該認可に係る採取計画・・・に従つて砂利の採取を行なわなければならない。

 

(緊急措置命令等)

第23条第1項 都道府県知事又は河川管理者は、砂利の採取に伴う災害の防止のため緊急の必要があると認めるときは、採取計画についてその認可を受けた砂利採取業者に対し、砂利の採取に伴う災害の防止のための必要な措置をとるべきこと又は砂利の採取を停止すべきことを命ずることができる。(第2項以下略)

 

(認可の取消し等)

第26条 都道府県知事又は河川管理者は、第16条の認可を受けた砂利採取業者が次の各号の一に該当するときは、その認可を取り消し、又は6月以内の期間を定めてその認可に係る砂利採取場における砂利の採取の停止を命ずることができる。

 1 第21条の規定に違反したとき。(撤回)

 2 ・・・第23条第 1 項の規定による命令に違反したとき。(撤回)

 3 第31条第1項の条件に違反したとき。(撤回)

 4 不正の手段により第16条の認可を受けたとき。(取消し)

 

(認可の条件)

第31条第1項 第16 条の認可・・・には、条件を附することができる。(第2項以下略)

 

(解法のポイント)

●砂利採取法26条各号が講学上の取消しに当たるか撤回に当たるかの判断を先にしてから各肢を検討するべき問題(実務的な良問だと思います)

⇒ 正解肢を「3」と選択できる

●取消しと撤回の比較表を使って、その違いを記憶しておく必要があります。

正解:3

(取消しと撤回の比較)

 

 
平成28年度行政書士試験問題

問題9 行政裁量に関する最高裁判所の判例について、次の記述のうち、誤っているものはどれか。なお、制度は、判決当時のものである。

1 外国人が在留期間中に日本で行った政治活動のなかに、わが国の出入国管理政策に対する非難行動あるいはわが国の基本的な外交政策を非難し日米間の友好関係に影響を及ぼすおそれがないとはいえないものが含まれていたとしても、それらは憲法の保障が及ぶ政治活動であり、このような活動の内容を慎重に吟味することなく、在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるものとはいえないと判断した法務大臣の判断は、考慮すべき事項を考慮しておらず、その結果、社会観念上著しく妥当を欠く処分をしたものであり、裁量権の範囲を越える違法なものとなる。(最判昭53.10.4)

2 学生が信仰上の理由によりした剣道実技の履修拒否について、正当な理由のない履修拒否と区別することなく、代替措置が不可能というわけでもないのに、代替措置について何ら検討することもなく原級留置処分をし、さらに、退学処分をした公立高等専門学校の校長の措置は、考慮すべき事項を考慮しておらず、又は考慮された事実に対する評価が明白に合理性を欠き、その結果、社会観念上著しく妥当を欠く処分をしたものであり、原級留置処分と退学処分は裁量権の範囲を越える違法なものとなる。(最判平8.3.8)

3 個人タクシー事業の免許に当たり、多数の申請人のうちから少数特定の者を具体的個別的事実関係に基づき選択してその免許申請の許否を決しようとするときには、道路運送法の規定の趣旨に沿う具体的審査基準を設定してこれを公正かつ合理的に適用すべきであり、この基準の内容が高度の認定を要するものである等の場合は、基準の適用上必要とされる事項について聴聞その他適切な方法により申請人に対しその主張と証拠提出の機会を与えるべきであって、これに反する審査手続により免許申請を却下したときは、公正な手続によって免許申請の許否につき判定を受けるべき申請人の法的利益を侵害したものとして、当該却下処分は違法となる。(最判昭46.10.28)

4 原子炉施設の安全性に関する処分行政庁の判断の適否が争われる原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理・判断は、原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の専門技術的な調査審議及び判断を基にしてされた処分行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきであって、現在の科学技術水準に照らし、調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点があり、あるいは当該原子炉施設がその具体的審査基準に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤・欠落があり、行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、処分行政庁の判断に不合理な点があるものとして、その判断に基づく原子炉設置許可処分は違法となると解すべきである。(最判平4.10.29)

5 裁判所が懲戒権者の裁量権の行使としてされた公務員に対する懲戒処分の適否を審査するに当たっては、懲戒権者と同一の立場に立って懲戒処分をすべきであったかどうか又はいかなる処分を選択すべきであったかについて判断し、その結果と処分とを比較してその軽重を論ずべきものではなく、それが社会観念上著しく妥当を欠き裁量権を濫用したと認められる場合に限り、違法と判断すべきものである。(最判昭52.12.20)

 

(解法のポイント)

●肢1の正誤判断で解答できる問題

⇒ 肢1は冒頭でマクリーン事件判決と気づくので中断を飛ばして結論部分「裁量権の範囲を越える違法なものとなる」を確認すると間違っている(すなわち、本問では正解肢)と判断。なお、理由づけ「考慮すべき事項を考慮しておらず、その結果、社会観念上著しく妥当を欠く処分をしたものであり、」においても、本判例はこのような判断をしておらず、間違っている

●行政裁量に係る問題は判例からの出題で各肢の記述が長くなる傾向にあるが、まずは結論部分を検討した後、理由づけ部分についての正誤判断をするのが良い(肢2〜5も同様)

正解:1

 

 平成30年度行政書士試験問題

問題8 行政代執行法(以下「同法」という。)に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

ア 代執行に要した費用については、義務者に対して納付命令を発出したのち、これが納付されないときは、国税滞納処分の例によりこれを徴収することができる。(行政代執行法6条1項)

イ 代執行を行うに当たっては、原則として、同法所定の戒告および通知を行わなければならないが、これらの行為について、義務者が審査請求を行うことができる旨の規定は、同法には特に置かれていない。 (行政代執行法には審査請求を行うことができる旨の規定は置かれていない)

ウ 行政上の義務の履行確保に関しては、同法の定めるところによるとした上で、代執行の対象とならない義務の履行確保については、執行罰、直接強制、その他民事執行の例により相当な手段をとることができる旨の規定が置かれている。 (行政代執行法にはこのような規定は置かれていない)

エ 代執行の実施に先立って行われる戒告および通知のうち、戒告においては、当該義務が不履行であることが、次いで通知においては、相当の履行期限を定め、その期限までに履行がなされないときは代執行をなすべき旨が、それぞれ義務者に示される。(行政代執行法3条1項)

オ 代執行の実施に当たっては、その対象となる義務の履行を督促する督促状を発した日から起算して法定の期間を経過してもなお、義務者において当該義務の履行がなされないときは、行政庁は、戒告等、同法の定める代執行の手続を開始しなければならない。(行政代執行法にはこのような規定は置かれていない)

 

 1 ア・イ   2 ア・エ   3 イ・ウ   4 ウ・オ   5 エ・オ

 

(解法のポイント)

●肢ア・イの正誤判断で解答できる問題

⇒ 肢アを○と判断した時点で正解肢は「1」「2」に絞られ、肢イが○と判断できるので、正解肢を「1」と選択できる(肢イは後段の正誤判断に迷うかもしれませんが、肢エの方は単純な条文知識に関する問題なので正解肢を「3」と選択できる)

●行政代執行法は条文数も少ないので、直前期は条文の素読をした方が良いです。

正解:1

 

 平成30年度行政書士試験問題

問題9 行政上の法律関係に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

1 公営住宅の使用関係については、一般法である民法および借家法(当時)が、特別法である公営住宅法およびこれに基づく条例に優先して適用されることから、その契約関係を規律するについては、信頼関係の法理の適用があるものと解すべきである。(最判昭59.12.13)

2 食品衛生法に基づく食肉販売の営業許可は、当該営業に関する一般的禁止を個別に解除する処分であり、同許可を受けない者は、売買契約の締結も含め、当該営業を行うことが禁止された状態にあるから、その者が行った食肉の買入契約は当然に無効である。(最判昭35.3.18)

3 租税滞納処分は、国家が公権力を発動して財産所有者の意思いかんにかかわらず一方的に処分の効果を発生させる行為であるという点で、自作農創設特別措置法(当時)所定の農地買収処分に類似するものであるから、物権変動の対抗要件に関する民法の規定の適用はない。(最判昭31.4.24)

4 建築基準法において、防火地域または準防火地域内にある建築物で外壁が耐火構造のものについては、その外壁を隣地境界線に接して設けることができるとされているところ、この規定が適用される場合、建物を築造するには、境界線から一定以上の距離を保たなければならないとする民法の規定は適用されない。(最判平元.9.19)

5 公営住宅を使用する権利は、入居者本人にのみ認められた一身専属の権利であるが、住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で住宅を賃貸することにより、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与するという公営住宅法の目的にかんがみ、入居者が死亡した場合、その同居の相続人がその使用権を当然に承継することが認められる。(最判平2.10.18)

 

(解法のポイント)

●肢エの正誤判断で解答できる問題

⇒ 肢5以外はメジャーな判例なのですぐに正誤判断できると思いますが、肢1は結論部分は正しいものの、理由づけ部分「一般法である民法および借家法(当時)が、特別法である公営住宅法およびこれに基づく条例に優先して適用されることから、」が間違っているので注意を要する問題です。

●行政裁量と同様、判例からの出題がメインなので出題分析に掲げた判例を中心に復習しておきましょう!

正解:4