BRING ON HP転載③/育成しようとすると育成できないジレンマ | かんがえる蛙

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さて、新人が入ってきました。これから育成するぞ!という上司・先輩の意気込みも空しく、のれんに腕押しの新人に、「ゆとり世代は難しい・・」などといった嘆き節も5月頃にはあちこちで聞こえてきて・・


人が人を創りあげることは非常に難しいことです。別人格であることはもちろんのこと、異なる文化で20年程、もしくはそれよりも長い年月生きてきているわけです。無理もありません。ましてや親子のように年が離れていては・・。私は新人研修するときによくこんな話をします。


「みなさんのご実家のお雑煮はどんなものですか?ほかの人にもわかるように説明してください。」


愛媛県のお雑煮はしょうゆベースのすまし汁に、丸餅や人参が入ってるものが主体です。具の違いには多少差がありますが、中にはあんこ入りの餅のところもあるようです。そんな話の中、関西出身の私が「うちは白みそベースに・・」なんて話し始めると「えー!」ということになります。


では、このお雑煮談義、「正解のお雑煮はどれ?」と聞くと、もちろんどれも正解となるわけです。異なる文化、異なる生活環境は当たり前のことだと気づくのですが、「こうあるべきだ」という意識が強すぎると、新しい文化に馴染むことは難しくなります。



同じように、新人を迎え入れる側も、「新しい文化を迎え入れた」と仮定すればわかりやすいのではないでしょうか?「君は今まであんこ入りの餅の入った雑煮が正月の味かもしれないが、今日からはこの白みそベースしか認めない!」とやってしまうと、なかなか新たな環境での新たな文化の吸収は難しい。「君のおうちのあんこ入りの雑煮もなかなかおいしいものだな。うちのこの白みそベースのお雑煮も食べてごらん。感想はどうだ?」みたいなスタンスだとどうでしょうか?前者よりは本人の意志も尊重していて受け入れやすく感じませんか?互いのよさ、特性を認め合いながら関係性を築き上げるイメージです。


「育成したる!」と意気込むと新人はどんどん離れていってしまいます。かといって迎合するのではなく、対象新人の特性を理解することから始めなくてはいけません。私が常に申し上げる「育成の前に定着あり」とはこのことです。受け入れる体制が出来ていない人には何一つ入っていかないのです。



①相手の価値観も一旦認める姿勢を持つ。たとえそれが成果に繋がらないものでも。



②育成するのではなく、この未知なる新人を通じて自分も成長させてもらうのだというスタンスに変える。



③やってみせ、いってきかせてさせてみて、褒めてやらねば人は育たずという言葉がありますが、そうすることによってほとんどの新人も「よくしてくれる人の期待に応えなければ」という感情が芽生えるもの。人を動かすのは感情です。



④打算が働くとそれはすぐに見透かされます。自分の評価のため・・などという目的を最優先させるのであれば人の成長に関われません。献身の姿勢から見つめてみましょう。評価はあとでついてくるものですし、上よりも下に評価されなければ本物とは言えません。



⑤親兄弟、自分のこどもだったらそういった対応をするかどうかを判断基準にすれば間違いないと思います。自分に関わる新人や部下・後輩は、ビジネスライクで接するのではなく、人生預かっている使命感を持つ必要があります。それが強ければ強いほど結束は固まり、個々も活き活きと躍動します。



5点挙げましたが、うまくいかないときはこのどれかが不足しているのだと思います。育成する側が、会社や部署や自分の“都合”に軸を置いてしまうと新人は離れていってしまいます。そう思っていなくても無意識にそうしていることも多いのです。

かの西郷隆盛は、部下の相談に「とにかく思い切ってやってみなさい」という姿勢だったそうです。保身をとっぱらって、責任と覚悟をもって人や状況と対峙する、時代は変われど求心力はそういうところから生まれるのだと感じます。