「シャングリラ/MUCC」レビュー | brilliant-memoriesのブログ

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ドエルさんでもあり、V系好きのギャ男でもあり、60〜00年代の音楽好きでもある私がお送りするこのブログ。アルバムレビューや自作曲の発表、日常、ブログなどいろんなことをします!

「先日3限が空いていたので大学の密室で寝ていたのですが、後ろの壁から轟くような鈍い音がして目が覚めて、隣の教室で何が起きているのかと覗いてみたらなんと教授が生徒にデスメタルを聴かせていました!!」

 

今日は6月9日MUCCの日ですね!!おめでとうございます!今回はMUCCの11stアルバム「シャングリラ」のレビューする回でございます。「哀愁のアンティーク」に於ける初期ムックの再来を終えて、来る2011年の下旬には2度目のメジャーデビュー、そしてバンド結成15周年を迎える2012年というタイミングで放たれた今作には、更なるMUCCの新しいチャレンジが観られると聞きます。果たしてどのような世界が広がっているのでしょうか。

 

アルバム「シャングリラ」のポイント

 

・シングル「アルカディア」にて事務所をSONYに移籍、2度目のメジャーデビューを果たし、結成15周年を迎える年ということもあって、「MUCC」を知らない人にこんなバンドなんだよと知ってもらうよなアルバムにしたかったとミヤは語っております。また、選曲会などでは、SONYの方々にも参加してもらい外からの意見を取り入れながら制作されたようです。(「激ロックインタビュー」より)

 

・前作「カルマ」では行きすぎしまい賛否両論の原因ともなっていたデジタル要素。今作にもデジタル要素は登場しますが、出るところは出て、出ないところは彩りに徹するというメリハリがあるポジションを果たしています。つまりはちゃんとそれぞれの楽曲に似合った要素として機能しているわけですね。一方で、アルバム全体ではジャンルを超えてやりたいことをやっている印象で、更には中期ムック特有の冒険やエレクトロを新しく音楽性に加えたため、振り幅がとにかく広くなっている印象。かつての「極彩」のメガ進化といってもいいでしょう。次にどんなジャンルの曲が飛び出すのかワクワクしながら聴いてみるのをオススメします。

 

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(青→シングル曲 黒→アルバム曲)

 

1.「Mr.Lair」(作詞:ミヤ 作曲:ミヤ)

 

久々にインストでは無い1曲目。メタルコアとデジタルさが共存した楽曲とダンスビートな楽曲、全く違う2曲が1曲に融合された独特なナンバーがスタートを飾ります。1曲目はズッシリと来るメタルの中をデスボっぽい謳声で飛ばすAメロ、そこにニューウェーブのようなコーラスが混ぜたり、サビでは聴きやすいメロで駆け抜けたりと実験的要素が目立ちますが、ライブではかなり盛り上がりそうなナンバーですね。2曲目は4つ打ちダンスサウンドとバンドサウンドの融合が印象的なナンバーですがバンドサウンド中心に構築されている印象です。全体を通してミヤらしい展開に展開を重ねる楽曲の展開パターンに合わせ、今作の特徴が至る所に飛び出し、更にはミヤまで歌っちゃいます。

 

歌詞はかなり攻撃的なワードが目立ちますが、悪に堕ちても堕ちきれない人間に「もう元には戻れないんだから、この道を極めて立派な悪になれ」いう内容ですかね。

 

2.「G.G.」(作詞:達瑯 作曲:ミヤ)

 

ヘヴィなバンドサウンドで踊り狂う極悪ディスコサウンド。サビの掛け声は絶対ファンとバンドとのコールアンドレスポンスゾーンですよね、参加したら気持ちが良いと思います。彩りを添えるデジタルサウンドも色々な意味で大暴走しており、ヘヴィメタルゾーンになる部分では様々なS.E音を撒き散らしているのが印象的です。歌詞は躰を重ね合う男女の姿ですかね、深みは無いものの、盛り上がることににスポットを当てた楽曲の世界観にはピッタリなリリックです。

 

3.「アルカディア featuring DAISHI DANCE」(作詞:ミヤ 作曲:ミヤ)

 

26thシングル。このシングルから事務所をSONYに移籍したので、実質2度目のメジャーデビューとなります。今回は編曲に「DAISHI DANCE」も参加して、更なるEDMサウンドとの融合を追求。かつての「フォーリングダウン」では編曲によってリズム隊が打ち込みになるという一線を越えたパターンがまた来てしまうのではという部分が懸念点でしたが、今回はちゃんとリズム隊も生音であり、バンドサウンドの生音とEDMのデジタルさが融合した都会の夜を映し出すようなカッコいい楽曲となりました。

 

タイトルの「アルカディア」は牧人の田園として伝承される理想曲の名前ですが歌詞とはあまり関係なさそうで、麗しき女性にどんどん依存して堕ちていく主人公が映っています。

 

 

4.「ニルヴァーナーShangri-la Editー」(作詞:ミヤ 作曲:ミヤ)

 

27thシングル。アニメ「妖狐×僕SS」の初代OPでもあり、世間ではMUCCの楽曲の中でも1番知名度がある楽曲かもしれません。エレクトロとロックサウンドが融合した今作らしい世界観が特徴ですが、流れるようなメロディラインが突出していて、かなり耳に残ります。またアルバムバージョンとなっていてド頭のデジタルゾーンが少々長くなっております。

 

東日本大震災の後に制作されたとのことで、ミヤの被災地の復興への祈りと平和を願った歌詞が印象的です。

 

そういえばこの前高校時代の友達とカラオケ行ったときにアニメ好きな友達がこの曲歌い始めてビックリしたなぁ。。。

 

 

 

5.「ハニー」(作詞:ミヤ 作曲:ミヤ)

 

ハニーってタイトルが来るとラルクを想像してしまいますが、こっちのハニーは「恋人に愛を歌う」のでは無く「冷めた愛を吐き捨てる」ほうのシチュエーションでした。荒々しいハードロックナンバーですが、セリフでしゃべり飛ばす部分も多く懐かしの「リスキードライブ」を思い出させます。掛け声の部分に参加することによって、ライブで盛り上がりそうですよね。歌詞はひたすら暴力的なワードが続きますが、「SNS」を始めとしたミヤの歌詞には出てこなさそうなワードもチラホラあって、どこか新鮮です。

 

6.「終着の鐘」(作詞:達瑯・ミヤ 作曲:達瑯・ミヤ・YUKKE)

 

ここへ来て安心感さえも感じさせるMUCCらしい歌謡ロックナンバーが登場。作曲もこれまで数々の歌謡ナンバーを作曲してきた3人の共作ということで、楽曲に漂うネオ・フォークさと哀愁も3倍増しな印象がします。メロディラインがかなりわらべうたのような「和」という感じで、音がヘヴィ寄りというどことなく「6」を思い出させる楽曲ですね。

 

歌詞は、逹瑯とミヤの共作ですが、歌詞の書き方が完全に違うのでどこを担当したかがすぐに分かります。死期が近くなったことを自覚している老婆を描いたシチュエーションです。

 

7.「ピュアブラック」(作詞:達瑯 作曲:YUKKE)

 

今回はまず歌詞から。女性目線のリリックですが、これまでの「九日」「1R」「25時の憂鬱」などで描かれた女性とはひと味もふた味も違い、今回はマジで新しいです。その内容は、既に恋人がいる好きな男子を奪い取るために奮闘する「小悪魔女子」。最低なシナリオを得て無事、(ほぼ無理矢理)寝取ることに成功した彼女の誇らしげな愛情表現が狂おしい。「天使のウィンク」「ダーリン」といった振り切ったワードも登場し、達瑯の新しい可愛い引き出し口にビックリしました。

 

楽曲面は、YUKKEのジャズナンバーに洒落たピアノと妖艶なヴァイオリンを交えてミステリアスな雰囲気を演出、そこにこの歌詞が乗ることにより生まれる「ザ・小悪魔ワールド」、現代でいうと地雷系ですかね。歌詞の女の子の人物像が想像できて、さらにはセリフまで出てきちゃうのも可愛くて、でも少し腹黒さも見える...そんな世界観です。色はピュアブラック以外にも紫とかマゼンタとかも似合いそうですね。

 

これまでのMUCCの中に無かった新しさ、大好物のど真ん中を打ち抜かれた私はあっという間にこの曲の虜です♪

 

8.「狂乱狂唱~21st Century Baby~」(作詞:達瑯 作曲:達瑯)

 

異国さ、メタル・ヒップホップ・ダンスビートをごっちゃ混ぜにしたかなり実験的な逹瑯の楽曲。それぞれの要素の美味しいところか入り乱れた激しく狂ったナンバーとなりました。サビとか三音しか使ってないのに、あそこまで盛り上がれる雰囲気に仕上げてるのが印象的で、1つの単音が引き出す魅力に気付かされますね。そういえば、サビの掛け声に確実に女性の声が聞こえるのですが、どちら様でしょうか?

 

かつて逹瑯が作曲した似たような楽曲である「D.O.G」では、3分の中に要素をぶち込みすぎて最終的に回収できずに中途半端に終わってしまいましたが、今回は3分半の中に取り入れた要素の魅力を最大限に引き出しているので、この点に於いてもリベンジ成功と言えるでしょう。

 

歌詞は、仏教用語をはじめとした難解なワードを使いつつ、21世紀に入り、さらに安売りされた恋愛へ一石投じる内容となっております。非常に残念なことにさらにひどくなった2024年現在にも通じそうな内容ですね。なんだよマッチングって。

 

9.「Merry You」(作詞:達瑯 作曲:達瑯)

 

引き続き逹瑯の曲ですが、今度はフレンチビートを軸としたポップロックナンバー。しかもMUCC初のウェディングソングと来ました。前曲とはほぼ真逆の音楽性、生じるギャップが大きいですね。バンドサウンド以外にも、オルガンやタンバリン、手拍子などが参加して楽曲を華やかに盛り上げます。歌詞もブーケ目線という斬新なシチュエーションです。

 

この曲は、何よりもMUCCがウェディングソングを制作するというチャレンジをした衝撃さですよね。タイムスリップして初期ムックに「将来、ウェディングソングを歌うよ」って言っても絶対に信用してくれないと思いますよ笑。

 

10.「夜空のクレパス」(作詞:達瑯 作曲:ミヤ)

 

巡りに巡ってJ-POPの展開を取り入れた優しいポップロックナンバーも、ここで来るとまるで実家に帰ってきたような安心感がありますよね。浮遊感のある夜空の画をバンドサウンドのみで構築しており、星空の煌びやかさを再現したメジャーキーのサビ前と転調を交えマイナーキーへ移動し、流星を描いたような儚さのあるサビメロが印象的です。

 

サビは孤独から救ってくれた恋人が亡くなってしまい、思い出の地から彼女のことを思い出しているというシチュエーションだと考察。達瑯の小説のような描写とリリックが楽曲の儚い部分と重なりあい、切なさが倍増しております。

 

11.「You & I」(作詞:ミヤ 作曲:SATOち・ミヤ)

 

ここで、本当に安心・安定感を感じるSATOちの楽曲。ハードロックナンバーで飛ばしまくりますが、途中でレゲエ要素を挟みブレイク入れるこの展開は、かつての「前へ」を彷彿とさせます。終盤の合唱もライブではファンとMUCCのコールアンドレスポンスとして楽しめそうですね!

 

歌詞はすっかりカラーは負の濃度は無くなってしまった物の初期ムックを薄ら思い出させてくれる内容で、なにもかもに絶望した2人がそのまま堕落の道を究めていくというお話です。

 

12.「MOTHER」(作詞:ミヤ 作曲:ミヤ)

 

27thシングル。キタァ、ナルト!「ナルト疾風伝」のエンディングテーマで、私も「ポケモンベストウィッシュ」と続けてナルトをリアタイしてた人間なのでMUCCを知る前から知っていた曲でもあるのですよ、当時は不思議な曲だなとしか思えなかった時期が懐かしい…。、その「不思議さ」を造っていたのは、耳元を吹き抜ける疾風を表現したようなコーラスとバンドサウンド、そしてシンセパッドとシンセストリングスを掛け合わせて浮遊感と荘厳さを押し出したキリストな雰囲気が漂うナンバーです。歌詞は大人になったミヤから家族へ向けてのメッセージですね。

 

13.「シャングリラ」(作詞:ミヤ 作曲:ミヤ)

 

「アルカディア」「ニルヴァーナ」を制作して今作のタイトルは「シャングリラ」にしよう!ということで6分にも及ぶ今作のアルバムタイトルナンバーが本編のフィナーレを飾ります。

 

前曲「MOTHER」と関係しているとミヤが答えていたように、今作も雰囲気は荘厳。しかしながら、ストリングス隊の支えや、ワルツ調に変わる曲調といったどちらかというとクラシックな部分を強く押し出した印象ですね。ワルツ調に於けるの逹瑯が世界観に抗うように力強く歌うのが印象的で楽曲の荘厳も合わさり大迫力。ボーカリストとかでの表現力の高さを遺憾無く発揮しております。

 

シャングリラは有名なシャンバラをモデルとした理想郷。外界から隔壁された楽園ということで、絶望して(一度死んだ?)この地へ辿り着いた主人公が、この地で新たな人生を歩もうとする姿が映ります。

 

69.「OMAKE」(作詞:ミヤ 作曲:ミヤ)

 

大量の無音トラックを挟み、「69」(MUCC)となった時、このシークレットトラックは始まります。ちなみにシークレットトラックにはアルファベットが振られていて続けて読むとメッセージが浮かび上がるのも、かなり作り込まれてるなと思いました。

 

ひたすら暴れ回るメタルナンバー。暴れ曲で終わる点も「極彩」を彷彿とさせますが、「G.M.C」は、ひたすら暴れ回り曲としての原型を留めてなかったのに対して、この曲はちゃんと1曲として必要なパーツを取り入れ制作されています。さらに上手くなった逹瑯のデスボに近い表現に狂わされて最後に暴走しましょう。

 

歌詞はこのアルバムではタイトル含め非公開になっていましたが、2017年に再録された際に歌詞が公開。明かされたタイトルは「MAD YACK」で「麻薬」であり、晩年の黒夢を彷彿とさせる攻撃的なリリックとなっています。

 

 

いかがだったでしょうか!前作での問題点だったエレクトロ要素を今回はうまく曲のパーツとして使い、新たなMUCCの音楽性がお披露目された今作。先行シングルが人気アニメの主題歌に起用されたことで更にファン層を広げてたMUCCは様々なジャンルを右往左往して、その中には小悪魔女子やウェディングソングといったこれまでのMUCCには無かった路線の楽曲も飛び出してくるという、かなりの振り切りっぷりに驚かされました。

 

15周年を迎え、新たな姿を魅せたMUCC。次回は「THE END OF THE WORLD 」のレビューです。今回もありがとうございました!