「ROENTGEN/HYDE」レビュー | brilliant-memoriesのブログ

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ドエルさんでもあり、V系好きのギャ男でもあり、60〜00年代の音楽好きでもある私がお送りするこのブログ。アルバムレビューや自作曲の発表、日常、ブログなどいろんなことをします!

「先日、自分が参加しているバンドのライブで、初めて自分が制作した楽曲を披露したのですが、みんなでアレンジすることによって、自分の楽曲がこんなにも素敵に生まれ変わるんだ...と思わず感動した」そんな夜から少し経った本日ですが、今回HYDEさんが2002年にリリースした1stアルバム「ROENTGEN」をレビューしてみようと思います。ラルクのhydeが作る楽曲とHYDEが作る楽曲を比べると、全然世界感が違うんですよね。今回はその辺りにも注目して聴いてみました。そんなわけでレビューしていきましょう。

 

アルバム「ROENTGEN」のポイント

 

・弦楽器や管楽器といったオーケストラサウンドが多用された楽曲が多く、<静>がテーマということから曲調もバラードやテンポが遅い楽曲が多い印象です。また、バンドサウンドからかけ離れてしまっているためか、「HYDE」のアルバムの中ではこのアルバムのみバンドスコアが発売されておりません。バンドスコアを読みながら曲を聴く自分なのでスコアに沿ったレビューが出来ないのが少し残念です。2001年に発表されたラルクの楽曲「Anemone」はhydeさん作曲ですが、今改めて聴いてみると、世界観がこのアルバムの伏線になっている感じがしました。

 

・ラルクの時のhydeさんはミックスボイスを使った高音が特徴ですが、ソロのHYDEさんは低音で歌を聴かせてくれるのがポイントですね。歌詞に映る世界感は、この時期(比喩に比喩を重ねるスタイル)のHYDEさんなのでどこか難解。全英詞といったラルクではやらなかった詞が大半を占めており、かなり新鮮な感じがします。自分の英語の成績の悪さも相まって、英詞の楽曲の考察は苦手ですが、自分なりにやってみようかなと思います。

 

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シングル曲→青 アルバム曲→黒)

 

1.「UNEXPECTED」(作詞:HYDE 作曲:HYDE)

 

本作の1曲目を飾る楽曲。アコースティックギターの音色とバンドサウンドを入れつつも様々な装飾音が重なり盛り上がる構成になっております。同じコードの繰り返しなのでどこかインストゥルメンタル感も感じますが、まさに今作のカラーがぎっしりと注ぎ込まれたオープニングナンバーとなっております。

 

2.「WHITE SONG」(作詞:HYDE 作曲:HYDE)

 

イントロからも分かるように、ストリングスの音色が中心に様々な装飾音が交わってゆく構成となっています。交わる装飾音はまさに雪のような煌びやかさがあって素敵です。中盤からはドラムロールも現れクライマックスになると言う展開も素敵です。歌詞はタイトル通り「冬の銀世界」がテーマになっているのですが、寒がる大人たちとは裏腹に、ずっと待ち望んだ冬が来て喜ぶ少年が描かれています。この「純粋さ」が素敵です。

 

3.「EVERGREEN」(作詞:HYDE 作曲:HYDE)

 

2001年に発表された1stシングル。準備に時間を掛けて、満を持して登場したHYDEさんのソロデビューシングル。自身でアコースティックギターを弾きながら、周りではストリングスやピアノ、金管楽器、木管楽器といった様々な音色たちが花を添え、午後の日差しのようなやさしく温かい楽曲になっております。MVや当時のMステ出演時には超ズームでHYDEさんの美しいお顔が映されるという映像になっております。歌詞は死期がくる主人公が妻へ送る愛が描かれており、「死」が近づき、ベットで寝たきり状態になった主人公が妻へ愛を伝えたい...という想いから生まれた楽曲だと解釈しております。自分がこの曲に出会ったのは高校生の頃なのですが、初めてこの曲を聴いた時、号泣したことを今でも覚えています。初めて「音楽」で号泣した思い出深い楽曲となっています。

 

4.「OASIS」(作詞:HYDE 作曲:HYDE)

 

この曲も、「静か」なのは変わりないのですが、使われている音色にスパニッシュさが押し出されたアレンジが印象的です。中盤になるとシンセサイザーが主張を強めてくるのがまた面白いですね。これまでの3曲とは違うデジタルなアレンジが特徴です。歌詞を読んでみて、「砂漠で自殺を試みる主人公」なのか「砂漠に取り残された主人公がいよいよ限界を迎える」といった2通りの考察が浮かんだのですが、どのみちオチが「死」なのは...可哀相な宿命ですね。

 

5.「A SORP OF COLOUR」(作詞:HYDE 作曲:HYDE)

 

黙々と進行するドラムとやたらと主張が強いベース(ウッドベース?)のリズム隊を中心にストリングスとピアノが彩る楽曲。中盤にはトランペットのソロも飛び出し、日だまりに包まれているような神秘さを感じる楽曲です。しかしながら、歌詞には曲の雰囲気とは真逆の方向へ、報われないバッドエンドが描かれていました。丁度、喧騒の中に直面した国を舞台背景に主人公と彼女の「身分の壁」が塞いでしまった、現実的に叶わない恋が歌われていると推測できます。

 

6.「SHALLOW SLEEP」(作詞:HYDE 作曲:HYDE)

 

2002年に発売された3rdシングル。バンドサウンドにストリングスが彩るナンバーです。このアルバムの中では1番ラルクに近いかもしれないと思った楽曲ですね。タイトルが「SHALLOW SLEEP」=「レム睡眠」ということで夢の中で起きた出来事がテーマとなっております。主人公は夢の中のとある部屋で「君」に出会ったことから物語が展開されます。現実世界からいない描写がされているので、現実世界の「君」は死んでしまったということなのでしょうが、二度と会えなくなってしまっても愛し続けている主人公の強い想いが夢の中に「君」を呼び寄せたのでしょう。かなり素敵なシチュエーションだなと思いました。

 

7.「NEW DAYS DAWN」(作詞:HYDE 作曲:HYDE)

 

雰囲気が一変して、機械音のS.Eが終始流れ続け、インダストリアル感が溢れるサウンドに悲しげな音色のピアノとスリリングなストリングスが乗っかるダークな世界観が広がるナンバーです。テンポがゆったりなのがさらに不気味さ、恐怖さを引き立てています。歌詞は「光を信じれば、負の物は全て無くなる」と「真実」を追い求めている聖人みたいな主人公に対して、「そんなのは理想論、光なんてそんな綺麗な物など存在しない。」と現実をわからせる皮肉なシチュエーションとなっております。もしかしたら、このような閉鎖的になってしまった彼も過去に主人公と同じく「真実」を追い求めてきていた人...だったのかもしれませんね。

 

8.「ANGEL'S TALE」(作詞:HYDE 作曲:HYDE)

 

2001年に発売された2ndシングルはクリスマスソングでございます。アコースティックギターの音色を中心に展開されるゆったりと流れる連符が特徴ですね。バックではストリングスやオーロラを模したようなキラキラとしたS.E音が彩りを添え、そこにHYDEさんの低音で語りかけるような歌声が重なることにより、かなり幻想的な雰囲気が生まれています。歌詞はクリスマスがやってきた街並を天使が教会から眺めるというシチュエーションとなっており、HYDEさんがインタビューで答えていた「教会で流れるようなしんみりとしたクリスマスソングを作って見たかった。」と応えていましたが、一般のクリスマスソングにあるあるな華やかでラブリーな雰囲気からはかなり離れた静寂で美しい楽曲となっております。また、後のラルクのhyde作曲である派手さ全開のクリスマスソング、「Hurry Xmas」と比べてみるとかなり面白いです。

 

9.「THE CAPE OF STORM」(作詞:HYDE 作曲:HYDE)

 

2004年に公開された映画「下弦の月~ラストクオーター~」の主題歌。「NANA」でお馴染み、矢沢あい先生の漫画の映画化ですが、「GLAMORUS SKY」以前にも2人は関わりがあったのですね。「荒々しい海」を映したような、かなり壮大な楽曲となっており、ストリングスを中心にバンドサウンドやアコーディオン、デジタルサウンドも導入しております。歌詞は失恋をきっかけに生きがいを失ってしまった自身の人生を幽霊船に例えて展開しており、どんなに綺麗な財宝を見つけても意味は無いと、絶望のどん底にいる、もはや生きることにに希望を見いだせないような精神状態であることが分かります。映画にはアダム役にHYDEさん自身も出演しており、この経験がきっかけでラルクの楽曲「Killing Me」が生まれたというエピソードは有名です。

 

10.「SECRET LETTERS」(作詞:HYDE 作曲:HYDE)

 

ラストナンバーはストリングスとバンドサウンドの中にアコーディオン、マンドリンといった楽器が取り入れられたかなりオシャレなアレンジが印象的なイタリアンな3拍子ナンバー。特に英詞が多い今作のアルバム曲の中で、ほとんどが日本語で構成された楽曲でもあります。「アンネの日記」をテーマにしている通りで、アンネが連行される様子が描かれているのですが、「鳥籠から外へ旅立つ」というという展開の歌詞からは今作の「EVERGREEN」や「SHALLOW SLEEP」のアンサーとも取れる考察が出来てしまうのがまた面白いです。

 

いかがでしたか。低音やオーケストラアレンジといった新しいHYDEさんの音楽性が見れた今作、音色と歌声がかなり気持ちが良いため、睡眠の際に流しながら聴くのもオススメです。2021年には原点回帰したオーケストラツアーの展開やこのアルバムのコンプリートボックスが発売されたり、この年の新曲「NOSTALGIC」と「FINAL PIECE」がこのアルバムの続編のようなサウンドだったりと再びこの「ROENTGEN」にスポットが当てられた1年でしたね。

 

<静>で展開された今作ですが、次回以降は方向性をガラリと変えてハードロックなサウンドを中心とした作品が展開されますが、実は当初に予定では、今作の続編とした静かで幻想的な楽曲で制作する予定だったらしいです。実際に、ラルクの10thアルバム「AWAKE」に収録された「My Dear」と「Ophelia」の2曲はそのアルバムを制作する際に制作したことも明かされています。そんな次回作の「666」は次回レビュー予定です。よろしくお願いします。今回もありがとうございました!